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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

リアクション

 偶然乗り合わせた飛行船が襲われた。
 逃げ惑う乗客や船内に鳴り響くアラートで、それを察知したフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)は、これ幸いと言わんばかりの笑みを浮かべ、どす黒いオーラを醸し出しながら、乗り込んでくる空賊たちを探して、船内を歩く。
 接舷部分に近い通路を通りかかったところで、丁度、ボーディングして乗り込んできた空賊と出遭った。
 笑顔を浮かべたまま近付いていくフィーアにその空賊が構える。けれど、それより早く彼女の手にした悔悟の棒と鬼の十手が襲い掛かった。
 強かに肩を打ちつけられてうずくまる空賊の後方から、別の空賊が乗り込んでくる。
「君たちも倒されに来たのかい?」
 訊ねながらフィーアは悔悟の棒を振り上げた。
 だが、先の一撃を見ていたのか、出てきた空賊は、寸でのところでそれを交わす。
 そして、長剣をフィーアへと向けてきた。
「……っ」
 手首を刃が掠めていく。
 けれどもすぐさま反対の手で鬼の十手を振るい、その空賊へと一撃返した。
 そうしているうちにうずくまっていた空賊が逃げ始め、フィーアがそれに気を取られた隙に、後から来た空賊も駆け出す。
 フィーアは逃がさないとばかりに、後を追い、彼らへと悔悟の棒と鬼の十手を振るった。
「おい、フィーア……もう少しなんというかこう、手心を……」
 それまで傍観していたパートナーの立花 眞千代(たちばな・まちよ)も、あまりにフィーアが過激に暴れ回るものだから、見かねて、少しばかり手加減するよう進言してみる。
「フッ、痛くしなければ覚えないだろ?」
 けれども返ってくる言葉は、無情なもので。
 告げるフィーアの口元は更に歪んで、妖しいほどの笑みを浮かべていた。

「空賊の襲撃……“黒髭”だろうか」
 飛行船に乗っていたグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は、ぽつと呟く。
「折角ティータイムでくつろいでいただいていたと言うのに……」
 ぼやくのは、グラキエスのパートナーの1人、エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)だ。
「ベルテハイト、エルデネスト、俺は先に砲撃を受けた船尾の方からネロアンジェロで外に出る。連絡をするから、ベルテハイトは箒で来てくれ、エルデネストは召喚する」
 同行しているもう1人のパートナー、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)と、エルデネストへとそう声を掛けた。
「グラキエス、具合が悪いから飛空船で移動する事にしたのを忘れるな」
 たとえ長距離の移動であっても野宿をしつつ小型飛空艇を使うのが常だ。
 けれども今回飛行船に乗っていたのはそういう理由がある。
「少しでも変調を感じたらすぐにさがれ。いいな?」
 それを思い出させるために忠告するベルテハイトに、グラキエスは頷いた。
 黒い翼を装着し、グラキエスは船尾へと向かう。

「皆さん、こちらに避難して下さい」
 飛行船のスタッフを手伝い、クリビア・ソウル(くりびあ・そうる)は乗客たちへと声を掛けた。
「他所を見て回って来ますね。避難し遅れた方がいらっしゃるかもしれませんし」
 スタッフへとそう告げたクリビアは、パートナーのアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)と共に、船内を歩いて回る。
「俺の乗った船を襲うってんなら、反撃させてもらわねえとなぁ」
 歩きつつ、呟くアキュートの様子を窺いながらも、逃げ遅れていた乗客たちを見かけたクリビアはその方へと向かっていく。
「おっと、強そうなのがいるじゃねぇか。遊んで貰うとしようかね」
「あっ、アキュート」
 通路の先に、乗り込んできた空賊を見つけたアキュートが向かうのを見て、クリビアは声を上げる。
「……仕方ないですね。私は賊を撃退して参ります。余程のことがない限り、皆さんはここを動かないでください」
 乗客たちにそう告げて、クリビアはアキュートを追いかけた。

 パートナー、レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)の目を盗み、空賊の実地研修だ、と称して、“黒髭”の下に来ていたガルム アルハ(がるむ・あるは)は、他の空賊たちと共に、飛行船へと乗り込んでいた。
(大丈夫かしら……?)
 彼女のポシェットの中には、彼女がレイナのところから抜き足で出ていくところを見つけ、内緒で付いて来ているリコリス・リリィ・スカーレット(りこりす・りりぃすかーれっと)が潜んでいる。
「遅れるなよ!」
「はい……うわっ」
 先を行く空賊に声を掛けられて、追いつこうとしたところで、横の通路から出てきたアキュートとぶつかった。
「何だ、てめえ?!」
 ガルムの声に気付いて振り返った空賊が、アキュートに問いかける。
「相手してもらいに来ただけさ」
 そう告げたアキュートの姿が増える。彼の傍に幻影が現れたのだ。
「おい、ぼさっとしてないでかかれ! ここは任すからな!」
 ぶつかったまま転んでしまっていたガルムに、空賊が声を掛け、彼女を置いて、駆けていく。
「は、はい! でも、そんな……」
 慌てて立ち上がって彼女は、空賊たちを不安そうな顔で見送りながらも龍骨の剣を構え、軽々と振り上げた。
「物騒なもん、持ってるな。だが、それだけ強そうなら倒しがいがあるものよ」
 告げて、アキュートは相手に恐ろしい幻覚を見せる強力な魔法を放つ。
 魔法を受け、ガルムは今、見つかりたくない人――パートナーのレイナの姿を幻覚で見て、振り上げた腕が固まってしまった。
 そこへ、魔法的な力場を使って高速ダッシュしてきたクリビアが追いつき、振り上げた大鎌から轟雷を放つ。
「うわあああっ!」「きゃあっ」
 雷が体を駆け抜けて、ガルムは声を上げた。ポシェットの中で、リコリスも小さく悲鳴をあげる。
 電撃が駆け巡り終わる頃にはすっかり疲弊して、彼女はその場に倒れた。