リアクション
さて、そうこうしているうちにみんなが暇を告げ、にぎやかだった広間も静けさを取り戻しておりました。
最後まで皆を見送っていたティアは、片付けようと机に手を伸ばします。
と言っても材料はほぼ使い切っていましたし、刃物も陽太や牙竜が協力してまとめてくれていましたから、小さな端材やゴミを片付けるだけなのですが。
「ティア」
と、背後から呼びかけられ、ティアは振り返りました。
するとそこにはミルディアや皐月が立っていました。
「みなさん……」
「ねーティア。これみんなの気持ちなの」
「え……」
そう言ってミルディアが差し出したものはお守りでした。
「今日はみんなティアに力を分けてもらったからね。俺たちからもティアに力を分けたいなって」
「ティアさんみたいにすごい効果のあるお守りじゃないかもしれませんけど……想いはたくさん込めましたから」
口々にそう言われ、ティアは両手を伸ばしました。
小さな両手にも収まるくらいのお守りからは、けれど大きな気持ちが感じられます。
「ティアさんのおかげでみんな楽しそうでしたよ」
「頑張ったな、ティア」
コハクや牙竜の言葉に、ティアの顔がくしゃっと歪みます。
けれど、次の瞬間には笑顔で
「ありがとうございます」
と小さな声が応えました。
「でも、私もみなさんにいっぱいお礼を言わなくちゃ。みなさんのおかげで成功したんです」
と続いた言葉に、コハクたちも嬉しそうに微笑みます。
「さて、名残惜しいけどそろそろ帰らないとな」
「お疲れ様、ティア」
「皆さんもお疲れ様です!」
みんなを見送ろうとしたティアは、あっ、と声をあげました。
「あのぅ、待ってください!」
コハクと牙竜の服の端をそれぞれぱっと掴んで、二人を呼びとめます。
「皆さんにもこれ……お守り」
「えっ?」
「雅羅さんにはもっともーっといいことが起きますように」
「本当!? ありがとう!」
「愛美さんにはいい出会いと長く続く関係を祈るお守りを」
「ありがとー! ずっと持っておくね!」
「それから、私からお二人に」
「俺たちに?」
「ずっとお手伝いしてもらってお守り作ってなかったから……少しでも助けになればいいなって」
「ティアさん……」
「牙竜さんも受け取ってください。……あのぅ、お邪魔じゃなければですが」
「どうしてそこで遠慮するんだよ。嬉しいよ」
「コハクさんも!」
「はい、喜んでいただきます」
「よかった、今日は本当にありがとうございました!」
ぺこっと勢いよく深々と頭を下げたティアに、コハクが慌てて手を振ります。
「いいんですよ、僕も楽しかったですし。お手伝いが出来て嬉しかったです」
「俺も、ティアの楽しそうな顔を見れてよかったよ」
最後にぽん、とティアの頭を撫でて、牙竜たちは今度こそ暇を告げました。
みんなの姿が消えるまで見送っていたティアは、ふーっと長い息をつきました。
ティアにとってこんなに楽しかった一日はどれくらいぶりでしょう。
もしかしたらこんなにたくさんの人と話をしたのは初めてかもしれません。
ティアはもらったお守りに目を落としました。
両手で胸に抱くようにして、空を見上げると瞳を閉じます。
そうして、出会ったすべての人たちを思いながら、この先のみんなが幸せになるようにと小さな願いをかけるのでした。
読了、ご参加ありがとうございます。
さまざまな願い事やお守りが飛び交う(?)お守り作りイベントでした。
素敵なアクション、面白い願い事があって楽しく書かせていただきました。
願いを叶えるため以外にも、記念品や贈り物としてのアクションが多く、一生懸命な皆さんにほっこりしました。
アイテムとして配布出来ないのが惜しいくらいですが、やはり願いは自分で叶えてなんぼ、ということでひとつ。
また、ティアのことも可愛がっていただいたようで嬉しく思います。
もしも機会がありましたらまた構ってあげてください。
今回も楽しい執筆でした。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。