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ここはパラ実プリズン~大脱走!!~

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ここはパラ実プリズン~大脱走!!~

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   エピローグ

 人がいるのに音がない。
 聞こえるのは微かな息遣い、時折紙をめくる小さな音。足音すら憚られるその場所を、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は忍び足で訪れた。
 図書館の独特な雰囲気は嫌いではないが、何か話しただけで「シイッ!」と咎められるのは、勘弁してほしかった。
 リカインはソファで新聞をめくっている空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)を見つけ、袖を引いた。ここを出ようと目で合図し、二人は図書館を後にした。
 街中とはいえ、図書館の周囲は自然も多い。風に吹かれて落ちる葉に、リカインは季節を感じ取った。
「新聞、何か面白い記事でもあった?」
「緊箍に欠陥が見つかったので、改良するそうです」
 取り敢えず、個人を識別できるようにすることと、あるスキルに対して脆弱である点を直すとあるが、うまくいくかは定かではない。
「それと、南門所長は更迭されるようですよ」
「気の毒に……」
「脱走者を出したのですから、致し方ありません」
 結局、ウィリアム・ニコルソンと高崎 悠司は、今も逃亡中で指名手配を受けている。ウィリアムに関しては、食品業者が関わっていることまでは判明したが、それもダミー会社で手掛かりは途切れた。捜査は継続中である。
 纏は全ての責任は自分にあるとして、早い段階で辞意を表明していた。それが正式に決定した――それも更迭という形で――というニュースが、新聞に出ていた。残念ながら一面ではない。空京には、他に事件が多すぎる。
「そちらはどうでした?」
「まったく。少しは自分で調べたらどうなの?」
「パソコンの類はあまり好きません」
 地祇だからという理由で、狐樹廊は過去のデータベース検索を全てリカインに任せた。【博識】を持っているのだからパソコンぐらい扱えそうな気もするが、あくまで無理だと言い張るので仕方なく一人でその作業に勤しんだのだった。
 狐樹廊が知りたがったのは、「過去、空京爆破事件と同じように協力者がいると思われながらその痕跡が不自然なまでに見つからなかったケース」である。
 警察のコンピューターに侵入できれば一番確実だが、生憎、リカインにはそれほどのスキルはない。そこで、各新聞社のデータベースを検索したのだが、これが実に骨の折れる仕事であった。
 何しろ、キーワードとなる単語が分からない。「未解決事件」「黒幕」「真犯人不明」と思いつくまま単語を打ち込んだが、どれが何やらちっとも分からない。
 思い余って、ごく普通の検索サイトで同じキーワードを打ち、「噂」と付け加えてみた。
 出るわ出るわ、真剣に事件の謎を追っているサイトから、都市伝説に近いレベルのものまでずらりと並んでいる。その中から「空京爆破(未遂)事件」の文字があるサイトを拾っていった。
 やはり眉唾な物もあったが、リカインの興味を引いたのは二つの事件だった。
 一つは五年前、日本で起きた盗難事件。親の形見である宝石を、若い女性が盗んだという。動機はあったし、逆にアリバイがない。だが、どこをどう調べても宝石は出てこず、女性の仕業であると立証できなかった。
 二つ目はごく最近のものだ。空京に進出しているある企業のサラリーマンが誘拐され、身代金を奪われたという話だった。こちらの犯人は逮捕されている。単独犯とは思われないが、共犯者に関して手掛かりはない。
 サイトの持ち主がこの二つと空京爆破事件について「黒幕がいるんじゃないか」と書き込んでいるのが気になり、リカインは他の適当な事件と一緒に全部プリントアウトして狐樹廊に渡してやった。
「こんなに……」
と狐樹廊は絶句していたが、ほとんどがダミーであることは秘密である。一番上に、例の二件を置いてやったのは、リカインの親切というものだ。
 その二つを読んだ狐樹廊が言った。
「はっきりしたことは分かりませぬが……、犯罪を裏で提供する人間がいるのやもしれませんな……」
 リカインはえっと訊き返したが、狐樹廊は残る四十八件のレポートに没頭して返事はなかった。
 犯罪を裏で提供する――そんな人物がいるのだろうか?
 落ち葉を掻き集めてキャッキャと喜ぶ小さな子供を見ながら、リカインの胸にはその言葉が澱のようにいつまでも残ったのだった。


終わり

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

この度はご参加ありがとうございます。「ここはパラ実プリズン〜大脱走!!〜」をお届けします。

今回の話は基本的に「脱走」がメインなので、受刑者の皆さんの描写が必然的に多くなっています。なるべくバランスを取るため、出番が少ないと思われる人は二度三度出ていますので、探してみてください。
脱獄方法としては、「放火をする」というアクションが二つあったため、このような内容になりました。もう少し、穏やかに脱獄させるつもりだったんですが、まあ面白いからいいかと(笑)

纏は本来使い捨てのNPCでしたが、二回に渡って書いたために妙な愛着が湧きました。更迭せずにすめばよかったのですが、そうなると完全にこちら側の都合による話になってしまいますので、残念ながらこういった結果となりました。クレアさんが苛めているように見えなくもないですが、彼女は仕事をしているだけですので、どうか責めないであげてください(笑) いつか戻ってくることもあるでしょう。

主犯についてはバレバレですが、PLレベルの情報となります。PCの皆さんは今のところ気づいていませんので、どうかそのつもりでお願いします。
「盗まれた機晶爆弾」の犯人(NPC)が再登場しております。その内、彼らを使ってまたあれこれ犯罪ネタを書きたいと思っています。アイザックに関しては、当分、お休みでしょうか。本棟はそう簡単に脱獄できないでしょう。

なお、首輪の通称は夏侯淵さんのアイデアを採用、「緊箍(きんこ)」となりました。ありがとうございます。

それでは次回、またどこかのシナリオでお会いしましょう。