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リアクション
「ううう、足がフラフラするよ、ユッチー。飛空船は何とか耐えられたけど、船はダメかも……」
地震が苦手なパートナーの想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)に、揺れに慣れさせようと想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は彼女と共に遊覧船に乗っていた。
「お姉ちゃん、海賊だよ!?」
そこへブラッドレイ海賊団による襲撃で、遊覧船の際に落とされる砲弾が更に船を激しく揺らす。
「ううう……はっ?」
揺れに負けてフラフラしていた瑠兎子は視界の端に、ある少女を見つけて、目を見開いた。
「あそこにいるのは雅羅ちゃん!?」
そう、彼女が見つけたのは、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)だった。
「ま〜さ〜ら〜ちゃ〜ん」
「きゃっ……大丈夫?」
船の揺れに、足元がよろけながら瑠兎子は、雅羅へと近付いていくと、あと一歩というところで躓いてしまい、雅羅の胸元へと顔をうずめた。
驚きながらも雅羅は瑠兎子の体調を気遣う。
「うはぁ。ごめんね雅羅ちゃん、身体に力が入らなくて。でも雅羅ちゃんと一緒なら元気100倍だわ!」
ぐっと脚に力を入れて踏ん張り直すと、雅羅から離れる。
「お姉ちゃん! ……と、雅羅さん。空賊の時みたいに雅羅さんと会えたのは不幸中の幸い、って言って良いのかな?」
追いかける夢悠も雅羅に気付いて、声を掛けた。
「不幸……」
「あ、不幸と言っても、雅羅さんの体質が海賊を呼んだとは思ってないよ? オレも雅羅さんも、災難に巻き込まれたんだよ」
その一言に反応した雅羅に、夢悠は慌てて言葉を返すと、雅羅は「そうね」と頷いた。
「よぉし、雅羅ちゃんのおっぱいを護る、おっぱいの騎士! 鉄仮面ランスが海賊を返り討ちにしてやるわ!」
漸く回復したのか、瑠兎子が立ち上がる。
「鉄仮セッター!」
言いつつ、顔を覆う形状をしたスパンゲンヘルムを被る。
「ワタシ達の特訓の成果を見せる時が来たわ、ユッチー」
「来ないように祈ってたよ……」
夢悠はため息をつきつつ、瑠兎子に返す。
「さあ、鉄仮面ランスの初陣よ!」
声高々に海賊たちを迎え撃ちに行く2人の様子を見送りながら、雅羅もまた、バントラインスペシャル雅羅式を構えて駆け出した。
「行くぞユッチー! ツレ鉄仮!」
海賊と向き合いながら、瑠兎子が胸を大きく張る。
何が来るのかと身構えた海賊に対し、瑠兎子はひょいっとしゃがみ込んだ。
そして、彼女の後ろに構えていた夢悠から、火炎が放たれ、海賊を包み込む。
「ナイスコンビネーション!」
「恥ずかしいなぁ……」
瑠兎子のテンションに夢悠は時折ため息を吐き出しつつも2人の連携で、乗り込んでくる海賊を足止めし、乗客たちが船内へと逃げる時間を稼いでいく。
「気分転換に乗ってみたらコレかよ」
依頼の帰り道、パートナーの四谷 七乃(しや・ななの)が遊覧船に乗りたいとせがんだために乗ってみた四谷 大助(しや・だいすけ)は、海賊の襲撃を知り、ため息を吐き出した。
「……ごめんなさいです、マスター。七乃が乗りたいなんて言ったばっかりに……」
七乃も肩を落とし、自分の所為だと己を責める。
「……雅羅がいたから、ある意味ラッキーか」
だが、デッキに出てきてみた大助は、そこに雅羅の姿を認め、そう呟いた。
「マスター!」
七乃が大助へと声を掛け、その姿を漆黒のロングコートへと転じる。
「雅羅!」
口元まで覆うほどのコートを纏い、大助はデッキで海賊と対峙していた雅羅へと声を掛けた。
「大助、あなたもこの船に?」
「ああ」
声に気付いた雅羅は、目の前の海賊へと一撃を入れて倒してから、振り返り、大助へと問い返す。
「最初に名乗ったのはブラッドレイ海賊団、それから……」
「ブラッドレイと……黒髭だと? 消えたんじゃなかったのか?」
もう1つの海賊団はと視線を移した雅羅につられるように、視線を移した大助は驚きの声を上げた。
「乗り込んできている、さっきの海賊はブラッドレイの方ね。黒髭が来るのも時間の問題だろうけれど」
徐々に近付いてくる“黒髭”の船を見ながら雅羅が話しているうちに、再び板が渡された。
「来る!?」
「ここはオレが行くよ、雅羅は後ろから援護をお願い!」
雅羅を庇うように大助が立つと、板を渡ろうとする海賊に向かって降り注ぐような雷を落とした。
雷を受け、海賊はバランスを崩して、板ごと海に落ちていく。
「マスター、雅羅さん! 左後方から敵が! 回避を!」
七乃が声を上げる。雅羅が振り返ると、別の板から渡ってきた海賊が2人に向かって長剣を振るおうとしていた。
雅羅が咄嗟に回避を試み、大助は庇うように間に入ろうとする。
それでも長剣の切っ先が雅羅に掠った。
「くそっ……雅羅っ! 無事か!」
「平気よ!」
告げて雅羅はバントラインスペシャル雅羅式を構えると、機関銃のように銃弾をばらまくような攻撃を海賊に向かって放つ。
大助も魔拳ブラックブランドから闇黒を放った。
「ぐあっ」
2人からの攻撃に、海賊が怯む。
「雅羅ちゃんが戦うなら私も一緒に戦います!」
言いながら、氷を操り、海賊の足元を凍らせたのは、杜守 柚(ともり・ゆず)だ。
「一人突っ込んで行かないように!」
彼女を追いかけて、彼女のパートナーの杜守 三月(ともり・みつき)も駆けて来て、催眠術をかけた。
足元を滑らせ、尻から転んだ海賊は、そのまま眠りにつく。
「ありがとう、紬、三月」
2人の方を振り返った雅羅が礼を告げる。
「どういたしまして! って和んでいる場合でないです、また渡ってきてますよ!」
応える紬が雅羅の向こう側に新手を見つけて、声を上げる。
「柚、『火術』で敵の背後に火を付けれる? 意識が背中に向いたところで、雅羅、手元を狙って攻撃をすると当たりやすいと思うよ」
三月が送るアドバイスを実行せんと、紬は火炎を呼び出し、それを向かって来る海賊の背中目掛けて放った。
「うわ、熱ちっ!?」
背中を燃やされ、海賊の注意が自分の背に行く。
その隙を狙った雅羅が、バントラインスペシャル雅羅式の引鉄にかけた指に力を込め、一撃を放つ。
「痛っ!」
背中ばかりに注意が向いて、手元を狙われているなど思いも寄らない海賊は、突然の痛みに、銃を落とした。
更に襲い掛かってくる海賊に、三月は雅刀で斬りかかり、服を断つ。
「男の裸に興味は無いけど……」
「え、あ、うおっ!?」
ぽつりと呟く三月に、服を斬られ、下着姿になった海賊が動揺の声を上げた。
「今ね」
紬が雷を呼び出し、その動揺する海賊に向かって放つ。海賊は避けきれず、感電してしまった。
更に、次々とのびていく海賊たちを逃げられないよう、ロープで縛り上げておく。
「海賊?! そんなまたレトロな……」
船内でバイトに勤しんでいたヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)の下に、同僚たちがそう連絡してきたのは辺りが騒がしくなり始めてのことであった。
「……ってパラミタじゃ珍しくもないんだっけ。オレのバイト先を襲われるのは困るなあ」
ぼやきつつ、船内へと逃げてくる乗客を眺めていると、それに逆らい、デッキへ向かう人影がいくつか見える。
「オレも行くか」
連絡してきた同僚へと、デッキへ向かう旨を継げて、ヴァイスは駆け出していく。
その頃、船内の食堂に居たカイナ・スマンハク(かいな・すまんはく)は、分厚く切り分けられ、適度に火を通された肉へと齧りつこうとしていた。
けれど、デッキから逃げ込んできた乗客が彼女の座る椅子にぶつかり、フォークの先からポロリと落ちる。
更に床に落ち、転がった肉を後から来た別の乗客が踏み潰して行き、食べれるものではなくなった。
「ぐぅるるるるるぅっ俺のごはん!」
見るも無残な姿になった、肉だったものを目に、カイナは吠える。
そもそもの原因は船を襲撃する海賊だ、と怒りの矛先を彼らに向けると、デッキへと向かった。
「さあ、このばかでかい塊でぶった斬られるかぶっ飛ばされるか、好きな方選べ。拒否は認めない!」
鉄の塊のように大きな剣の形をした光条兵器を手に、ヴァイスは乗り込んでくる海賊に向かって声を上げる。
「んなもん、選べるか!」
どちらにしてもぶっ飛ばされるのなら選べたものではない、と海賊は言い返し、バックステップでヴァイスの大剣の間合いから離れる。
「おっと、離れた所だからって油断してると雷が落ちるぜ」
告げたヴァイスの口元が笑む。彼は呼び出した雷をその海賊に向けて、落とした。
「くぅっ! だが、これくらいで倒れるか!」
痺れと痛みを気力で振り払うように、海賊は踏み止まり、ヴァイスの隙を突いて踏み込んでくる。
「俺のごはん、返せー!」
そこへ食堂から駆けて来たカイナが放った鏃に毒を塗った矢がその海賊の脚へと突き刺さった。
「っ!」
痛みに脚を止める。矢の突き刺さったところからジワジワと広がる毒を感じて、慌てて矢を抜こうとしたところで、ヴァイスの大剣が海賊へと振り下ろされた。
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