リアクション
部屋の露天風呂に神崎 零(かんざき・れい)と一緒に来ていた神崎 優(かんざき・ゆう)はさっさと体を洗うと、零より先に温泉の中に入ってしまった。
(もう夫婦だけど……やっぱりまだなんか恥ずかしいな)
優は気恥ずかしさからか左手でパタパタと仰いだ。
零も体を洗い終わると、持ってきたバナナクリップで髪をまとめ、静かに温泉の中へ入る。
「……優」
そう言うと、零は体をぴったりとくっつけ優の横に座った。
「えっ、あっ、えっ!?」
優は真っ赤なゆでだこのようになり、顔を背けてしまう。
「どうしたの優? 顔が真っ赤だよ?」
「だ、だって仕方ないだろ。零と2人きりで……その……嬉しいけど、恥ずかしいんだから」
それを聞くと零は少し微笑み、優の背中にぴったりと抱き着いた。
「れ、零!?」
「聞こえる? 私の胸の鼓動……」
そう言われ、零の胸が早鐘を打っているのを感じた優。
「あ……」
「私も嬉しい。こうやって優と一緒にいられるんだもん……。でも、私だってすごくドキドキしてるんだよ……」
「ごめん、零」
優は素早く後ろを振り返った。
そこには自分と同じく顔を真っ赤にした零。
「零……」
愛しさを込めて名前を囁くと、零の唇に自分の唇を重ねる。
触れるだけのキスだが、互い愛情が十分伝わった。
顔を離すと優はやはりまだ顔を赤くしているが、さっきみたいに顔をそらしたりはしない。
零はそんな優に柔らかく笑いかけた。
そして、今度は優が零の隣に座る。
「月が綺麗だな……」
優から零の手を繋ぐ。
「うん……」
零は繋いでくれた手を握り返した。
「また、来年も一緒にこうやって月を見たいな」
「ふふ、私も今そう思ってたよ」
2人は顔を見合わせると、にっこりとほほ笑んだ。
「こんなにも嬉しくて、幸せ……」
零は静かにそう言うと、優の肩に自分の頭を乗せた。
「ああ……そうだな。この幸せは絶対に守るよ」
「うん……。私も……」
肩の上に乗っている零の頭をぽんぽんと叩く優。
「ん?」
なんだろうと、顔を上げた瞬間、優は零にキスを落とした。
そんな2人だけの幸せな時間がゆっくりと流れていくのであった。