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【重層世界のフェアリーテイル】ムゲンの大地へと(後編)

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【重層世界のフェアリーテイル】ムゲンの大地へと(後編)

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第6章「そして決戦へ」


「長い夢を見ているようだった。我は……『大いなるもの』の瘴気に侵されていたのだな」
 闇が消え去り、正気に戻ったファフナーが改めて調査団の方へと向き直った。その瞳には意思が感じられ、その点からも意識がはっきりしている事が分かる。
「汝らのおかげでこの世界はひとまず救われる事になった。礼を言わせてもらおう」
「ひとまず? 何か嫌な言葉が」
 多くの者が抱いたであろう反応を、ライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)が代表して返す。だが、ファフナーはライカ達の反応には気付かずに周囲を見回していた。
「我から語る事は多くあるのだが、どうやらその前にやる事があるようだな」
 ファフナーが何か呪文のようなものを詠唱する。すると、騒がしかった周囲が急に静かになった。見ると調査団に敵対し、戦っていた者達の姿が綺麗さっぱりなくなっている。
「わっ、今の何? 魔法?」
「害ある者を外の世界へと送り返した。そうでなければ語れぬからな。まずは皆をこの場に集めるのだ。それから……話を始めるとしよう」

 
「最初に我の事を話そう。我はファフナー。かつての戦いでは三人の賢者と共に『大いなるもの』の封印を行った」
「やはりファフナーが賢者そのものだったのか……」
 樹月 刀真(きづき・とうま)がつぶやく。彼は早いうちからその正体に感づいていた者の一人だった。
「そして我はその時よりずっと、この地に留まり続けてきた。封印を護る為に」
「あなたがここから動かなかった事も、それが理由ですか?」
 一ノ宮 総司(いちのみや・そうじ)の質問にファフナーが頷く。
「そうだ。この地は『大いなるもの』を封じた影響により、世界中の魔力が大きく失われてしまった。それ故我も封印のそばに居続けるという形でしか護る事が出来なかったのだ」
「確かに魔法の存在が長い間忘れ去られていたみたいですからね。ではそれで過去の方が魔力増幅のロッドを作った訳ですね」
「ロッド? あれはかつての時に失われたと思っていたが」
「これだよ。この神殿に遺されていたんだ」
 篁 透矢(たかむら・とうや)がロッドを見せる。ファフナーはそれをつまむと、取り付けられている宝石に注目した。
「これは……間違いない、シクヌチカの力が宿っている。確かにあの時来た男に与えた物だ。そうか……」
 ファフナーがどこか懐かしそうにロッドを見る。そこに中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が先ほど保留にしていた疑問をぶつけてきた。
「ファフナー、そのロッドを遺した方が神殿を訪れた時、『大いなるもの』の封印が解けかけたと聞いています。何故その時に『大いなるもの』を倒してしまわなかったのでしょう?」
「……『大いなるもの』は容易に倒せる存在では無い。あの時はただ、封印を強化するという形でしか抑える事が出来なかったのだ。我がロッドの力を受け、かつての頃の魔力を以て再度封印を行うという形でしかな」
「どうしてですか? 先ほどの私達のように、光で対処出来るのでは?」
 コトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)の言葉に何人かが頷く。だが、ファフナーは首を振った。
「あれは『大いなるもの』では無い。我に巣食った瘴気の塊……いわば残滓だ。我とて汝らのクリスタルが無ければあのような事は出来なかったであろう」
「だから最初は瘴気に光を当てても意味は無かったんですね。出来る事なら『大いなるもの』の心を救いたかったのですが……」
「心か……奴にそのようなものは存在しないであろうな」
「えっ? ですが、私達があなたを相手した時の言葉は確かに『大いなるもの』のものだったはずです」
「それが『大いなるもの』の恐ろしい所だ。あの瘴気に支配されると、我であり我でない、そんな感覚に陥るのだ。言うなれば依り代がそのまま『大いなるもの』になるというべきか」
「そこまで恐ろしい存在だなんて……」
「だが今回の事で成果はあった。クリスタルによって瘴気に影響を与える事が出来るのなら、『大いなるもの』を打ち破る事が出来るかもしれぬ。戦いは近い。その時までに我が再びクリスタルを作り上げておこう」
 『戦いは近い』。ファフナーのその発言を多くの者は聞き逃さなかった。火村 加夜(ひむら・かや)もその一人だ。
「やはり、『大いなるもの』は復活してしまうのでしょうか?」
「辛うじて押し止めてはいるが、綻びが生じている以上、不完全であるとはいえ『大いなるもの』は顕現するだろう。だが、我は……」
 その時、広場を大きな震動が襲った。ファフナーが言葉を切り、一同を見渡す。
「時間が無いようだ。一度、あるべき世界へ戻りたまえ……シクヌチカよ、汝の力、貸してもらうぞ」
 ファフナーがロッドに自身の魔力を籠める。すると先端の宝石が緑色に強く輝き、遥か遠くを照らすほどの光を放って収束した。
「我の力、クリスタルの力……そしてシクヌチカの力を一つにして解放した。これでこの地でも外の世界同様、魔法が使えるだろう。では、しばしの別れだ、異郷より来たりし者達よ」
 ファフナーが呪文を詠唱し、敵対者達を飛ばした時と同じように調査団の者達を外の世界へと送り返す。ただ一人残ったファフナーは揺れ続ける大地に立ち、これまでの想いを籠めて封印を睨みつけた。

「あれから幾年が経っただろうか……『大いなるもの』よ、過去のようにはいかぬぞ。ハイ・ブラゼルを……我の故郷を、これ以上穢させはせぬ」

担当マスターより

▼担当マスター

風間 皇介

▼マスターコメント

 こんにちは。【重層世界のフェアリーテイル】第一世界担当の風間 皇介です。


 まずは参加された方々に深くお詫び申し上げます。今回大幅な遅延となってしまい、前編同様ご迷惑をお掛けしました。
 同様に他世界の参加者、関連MSの方々、運営チームの方々にもお詫び申し上げます。

※リアクション公開を優先する為マスターコメント及び個別コメントをグランドシナリオに関係する事のみ記載させて頂きましたが、今回の更新で参加された皆様に個別コメントを改めて送らせて頂きました。
 以下、同様に追加するマスターコメントとなります。


●ファフナーの生存について

 今回ファフナーが生存するか否かの判定は(細かい点では色々ありますが)、一番大きいものとして「クリスタルがファフナーに対して使用されたか」がありました。
 前編で「柱を通して幻獣の力を地下へと送る事で瘴気を打ち消していた」というヒントを出していた事と、クリスタルの説明のうち重要なのは「攻撃力が上がる」等では無く「〜の心を手に入れる」の方が重要である事、それらに気付けるかどうかが鍵という事ですね。
 風間としては誰か聡い方が2〜3人気付けば上々かなというくらいでいたのですが、蓋を開けてみれば何と11人もの方が「ファフナーにクリスタルを使う」というアクションをかけていらっしゃいました。
 しかも、うち半分の方々はグループアクションを組まれていたので感心しました。お見事という他ありません。
 ……ただまぁ、クリスタルの比率が『勇気1 慈愛1 希望8 指定無し1』というのはどうなんだろうと思わなくもなかったり。
 やはりファフナーの攻撃力や防御力を上げてしまう行動は選びにくいという事ですかね?
 (使用クリスタルが1〜2種類だけだった場合は今回の様に完全な救出にはなりませんでした。そういう意味では勇気・慈愛を指定された方は特にお見事です)
 ちなみに敵対PCの方もクリスタルの取得をOKにした理由は、「ふっふっふ、これをファフナーにやって動きを強化して邪魔をしてくれるわ」という形で実は生存フラグ建てに貢献していたというミスリード狙いでもあったのですが、見事に失敗しました。残念。
 ともあれ、今回の判定では「ファフナーが無事に生存した」、「『大いなるもの』の完全な復活を防いだ」という最良の結果を得る事が出来ました。


●ロッド防衛

 こちらはロッドを護衛する方が非常に多かった事と、敵対された方のアクション内容から防衛成功となりました。
 広場で幻獣を相手する方が若干少な目だったので、その分ロッド側に幻獣が攻めて来てはいましたが。
 防衛アクションは大半の方が対幻獣と対PC両方のパターンを用意されていましたが、上記の理由からアクション内容と意図を考慮し、対幻獣の方と対PCの方に分けて描写させて頂きました。
 なおロッドですが、本編中にてファフナーによって力を解放され、第一世界全域で今回と同等の効果(魔法の威力が通常になる)を得られる事になりました。
 

●それ以外のリアクション内での主な結果(グランドシナリオのアクションに対して参考になりそうな物)

 ・瘴気そのものに対し、光輝系の攻撃で瘴気を対象から削り取るなどの手段は通用しない事が判明しました。


 なお今回のシナリオにおける負傷はグランドシナリオでは完治しているという扱いになります。

 次回、グランドシナリオでは最後の世界となります。皆さん、どうぞ宜しくお願い致します。