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抱きついたらダメ?

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抱きついたらダメ?

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第6章
 ゴーレムだった石像が立っていた扉は、ゴーレムの攻撃によって破壊されていた。
 扉をくぐり中に入ると、中には畳8畳分しかない狭い部屋だった。
「思ったより……狭い部屋なんですね」
 火村 加夜(ひむら・かや)は部屋に入り、周りを見渡した。
 加夜は、今回の事件、秘宝と秘薬についてしっかり報告書を作り蒼空学園校長に報告するつもりだった。
 だが、どこにも秘薬らしき物が見あたらない。 
「秘宝はどこかな?」
 ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、抱きつきたくなる病を防ぐためにマスクをつけていた。
 部屋の中をくまなく見回してみる。
 部屋の中には、大理石で輝いている床、そして中央には小さな池があるだけだった。
「くしゅん!」
「うわ!?」
 全員が、秘宝を探してなかでウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)がくしゃみをし、猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)に勢いよく抱きつく。
 勇平はその弾みで勢いよく小さな池へと落ちる。
「だ、大丈夫ですか!?」
 加夜が慌てて池にかけより、手を差しのばす。
「すまないな」
「すみません……」
 勇平とウイシアはびしょ濡れのまま、池を出る。
「ん? 勇平ちゃん、その服に引っかかってるのなんだ?」
 ゲドーの指摘に勇平は自身の服を見下ろすと、底には1センチもない透明な球がそこにはあった。
「まさか、それが秘宝ですの?」
 ウイシアの指摘に、勇平は息を飲んだ。
「ど、どうすればいいんだこれ!」
「俺にくれ!」
 困惑してる勇平にゲドーは勢いよく言った。
 だが、その間に加夜が入る。
「待ってください! まだそれが秘宝とは決まったわけではありません。私がサイコメトリで調べてみるので待ってください」
 加夜は、勇平から透明な球を預かると、サイコメトリで調べる。
 その球の過去を読み取ることで加夜は、それが確かに秘宝であり、人を従わせることが出来るものだと分かる。
「……本物の秘宝です。秘宝であると同時に秘薬になるみたいです」
「秘薬が秘宝……」
 勇平達は興味深く、光に反射し綺麗に輝く球を見つめる。
「この秘宝は人を思うように従わせることができます。それと同時に、人の体調も思うように動かせるみたいなのです」
「つまり、その秘宝を抱きつきたくなる病にかかってる人に使えば直るって事ね」
 環菜は加夜から秘宝を受け取り、ルミーナに向けて球を向ける。
 ルミーナは目を何度も見開きしては自分の体の変化を確かめる。
「どう、何か変化はあったかしら?」
 環菜の言葉に首をかしげた。
「わからないです……わからないですけど、なんだか体が軽くなったような」
「俺も、ウイシアに使ってみて良いか?」
 勇平は、ウイシアに秘宝を使う。
「くしゅん」
 ウイシアは試しにくしゃみをするが抱きつかなくなっていた。
「す、すげえ、ちなみそれは、人を眠らせたりとかもできるのか!?」
「えっと……?」
 ゲドーは少し興奮気味に、勇平に尋ねる。
 勇平の手から環菜が、秘宝を取り上げ、勇平に向ける。
「あー、とりあえず廃墟の外にでてみてくれるかしら?」
 環菜がそう言うと、ゲドーは体を振り返り、廃墟の出口へと歩き始める。
「え? ちょ、うおおおおおおおおおい!??」
 ゲドーは暗闇の中へと姿を消していった。
「加夜さんといったかしら、秘宝は村の人を助け終わったら、あなたに預けるから、校長に渡しておいてくれるかしら」
「え、はい。しっかりと渡しておきます」
 加夜は、奥に消えていったゲドーを見て唖然としていた。
 この秘宝は悪質なことに使われる可能性があるとしても校長に報告し預けようと思うのだった。