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ACT6・反撃


 白衣の男が使っていたエリアは炎に呑まれてしまった。
 契約者たちは悔しそうにしながらも、外でいまだ戦う仲間たちの事を心配して急ぎ向かおうとしていた。

「ちょっと待ってください」

 と、涼介・フォレストが声をあげる。
 彼は白衣の男が行なっていたような禁術を再び行わせないためにも、内部をもう少し調べて書類や封印が必要なものなどの処理をしたいと申し出た。
 それに賛同するように何人かの契約者たちも声をあげる。
 契約者たちは話し合い、救援に向かう者たちと内部を隈なく調べる者たちに別れることにした。

「よし、そうと決まれば立ち止まっている暇はない。行くぞ、エイボン」
「はい、兄さま」

 涼介は『エイボンの書』を連れてアジト内部のさらなる探索に向かう。
 それに続くように他の契約者たちも散らばっていく。
 救援に向かうことになった者たちはうなずき合うと、外で苦戦する仲間たちの元へと向かった。


                   ◇


「くそぅ……!」

 アジトの外。
 満身創痍の契約者たちが膝をついている。
 彼らの魔力も底をついてきた。
 もうダメか……契約者たちの胸にそんな思いが過ぎる。
 だが契約者たちは地面に拳を叩きつけて、下を向いていた顔を上げた。
 ――絶対に諦めない。
 各々の瞳にはそんな意思の宿る強い光が再び輝き出す。
 ”必ず助けに行く”
 そう言った仲間たちが現れるまで、彼らは自分たちが倒れることを良しとしなかった。 そんな契約者たちを巨大な黒い影が覆う。
 底のない闇を湛えた瞳と造られた異形の躰を持つイルミンスールの怪物――N‐1だ。
『――――!』

 と、そのN‐1が突然顔を横に向けてその動きを止めた。
 契約者たちはそんなN‐1の動きに不思議なものを感じて眉をひそめた。
 N‐1の発達した聴覚は、聞きなれた声が上げる悲鳴を捉えていた。
 獣であるN‐1が何を思ったのかはわからない。
 だが彼は哭いた。
 顔を天高く振り上げて、元から持っていた自分の声とは違う声で哭く。
 そうして哭き終えたN‐1は、再び契約者たちに向き直る。
 表にいる奴らをすべて喰らい尽くせ――白衣の男が彼に与えた最後の言葉。それを忠実に実行するために、彼はかつて弱かった頃のように牙を剥いた。
 と、そんなN‐1の横っ面に火球がぶち当たって爆ぜる。

「みんなッ!」

 誰かの叫ぶ声が響く。
 外で戦っていた契約者たちが視線を向けると、そこには待っていた仲間たちの姿があった。
 そしてここから契約者たちの反撃が始まった。