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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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●行動理念はただ一つ

 木の幹に体を預け、樹月刀真(きづき・とうま)漆髪月夜(うるしがみ・つくよ)の治療を受けていた。
 目をしっかりと瞑り、先ほどの戦いを反芻する。
 動きは確実に見切っているはずだ。
 後はためらうことなく振るい抜くだけ。
 暗闇の中から迫る仮想のミルファを刀真はただひたすら、無表情に、殺戮を行う機械のように切り伏せる。
 しかしいつの間にか刃がなぜか無くなっていた。
「ちょ、ちょっと刀真こんなときに――」
(俺の剣はまだ折れてはいない)
 もう一度、今度は刀真の剣――月夜――をしっかりと持ち、仮想のミルファと戦いを始める。
 心は鋼鉄、感情は殺し、ただ結果を以て良しとする。
 その自身の掲げる誓いからぶれぬように。敵に情けをかけるつもりは一切無い。
 ただ静かに、刀真はあらゆるところから迫りくる仮想のミルファを殺しつくす。

 急に抱きすくめられて月夜はびっくりした。
 けれども、その腕の中には優しさや気遣いといったものが無く、感じる気配はただひたすらに冷たかった。
(ああ、殺すつもりなんだ……)
 刀真が何を考えて月夜を胸に抱くのか、それが、分かったから大人しく回復を続ける。
 自分は刀真の剣であると、胸に言い聞かせ、刀真に身を預けた。


 暗闇の中に、風森巽(かぜもり・たつみ)は浮かんでいた。
 思い起こすのは、最後の一撃。
 なぜだろうと考える。命を奪うのは容易いことのはずだったのに。
 ただ、力でもって叩きのめされた。
 うすらぼんやりとした中で、耳に入ってくる情報をかすかに動く思考の中で統合して、
(ああ、助けないと、なあ……)
 怨念の魂も、取り憑かれているあの子も。
 そして、いつの日か相棒に言われた言葉が思い起こされる。
『ヒーローは絶対最後まで諦めるな!!』
 そうだ、自分はヒーローだ。誰もを助けるヒーローだと自分に言い聞かせる。
 瞬間。意識が覚醒した。
 体の節々は痛むが、体を動かすための力は完全に回復していた。
「行かないと」
 巽はヒーローとして、また戦いに向かう。