リアクション
●昔日の想い
歌が聞こえた。
煩わしくて、閉じた心を強引に開こうとする歌が。
嫌だ、思い出したくないと、耳をふさいでもそれは伝わってくる。
りんと響く歌に、否が応でも思い出してしまう。
――蒼い空の下に、あなたはいるのでしょう
姉さんと一緒にすごした日々を。
無茶をして、怪我をして帰ってくる姉さんの手当てをするのが、ボクのいつもの日課で。
ぶちぶちと文句を言うボクに、姉さんはいつも緩んだ笑いでごめんごめんと言って。
それが当たり前だと思っていた。
――風が教えてくれる、あなたの歩いた道
暇な日は訓練と称して、何も無い遺跡を二人で駆けずり回った。
足場の悪い湖に落ちたときもあった。
楽しかった。それが続けばいいなっておもっていた。
「やめろよ……」
――忘れないで、あなたを想う全ての声を
信じて、あなたを想う全ての人を――
「魔法の才能があるんだねー。ちょっと羨ましいぞ!」うるさい。「でも私ほどじゃあないねー」やめろよ。「疲れたー、――肩揉んでよー」出てくるな。
「それじゃあ、ちょっと行って退治してくるね! 今日は一緒にご飯を作ろっか」
それがボクの聞いた姉さんの最後の言葉、最後の笑顔だった。幸せの記憶の最後。
もうやめて欲しかった。これ以上ボクを壊さないで欲しかった。
――風が歌う、あなたが歩く物語
りんと響く歌が終わりを迎えるよりも前に、動かないと。
楽しかった日々なんて無かった。
痛い。苦しい。その後の光景まで蘇ってくるから、無かったことにしたかったんだ――
――どうか今もわら「やめろおおおおおお!!」
最後まで歌を聞くことなく、絶叫を上げた。