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インテリ空賊団を叩け!

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インテリ空賊団を叩け!
インテリ空賊団を叩け! インテリ空賊団を叩け!

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〜 1st phase 【1週間前・発端】〜


 「……しりゃくせん?」

……聞きなれない言葉に小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は目の前のドーナツに手を伸ばした手を止めた

場所は蒼空学園、校長室とは別に用意された一室にて
キョトンとした美羽の反応に山葉 涼司(やまは・りょうじ)は言葉を続ける

 「公的に他船からの略奪を許される賊の船だ……聞いてなかったのか?」
 「……フレンチクルーラーはクリスピーの中でも正義って事で♪」
 「…………隣の相棒に説明して貰え」

もう一度シナリオガイドをよく読んで下さい……!などと慌てて不思議な事を呟きながら
美羽の隣でコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が彼女に説明を始める中
涼司の隣で【一匹狼の女空賊】フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)が改めて会話を続ける

 「最近、タシガン空峡にて再び悪辣な空賊が増えていてね
  私達がいるにも拘らず発見が遅れたのは、多くの賊がそれを名乗っていたらしいのよ」
 「でも【私掠船】って国やら権力者からのちゃんとした証明…つまり【私掠免許】が必要なはずだよね?
  それを突きつけない限り、いくら名乗ったって認識もされないはずでしょ?」
 「ええ、だけど被害者の証言だといずれの空賊もそれを持っていたというのです、ルカルカ・ルー」

フリューネの言葉に疑問を挟むルカルカ・ルー(るかるか・るー)の言葉に答えたのは
現ツァンダ家取仕切り代行レティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)である

 「実際に空賊団に襲撃された商人がツァンダ家に陳情に来て、今回の事が発覚したのですが
  私掠船免状にはしっかりとツァンダ家の印があった……と言うのです
  ご理解頂けると思いますが、どちらもそのような免状は私達は一切発行してはおりません
  調べた結果、タシガン家の印章のある免状もあったといいます、もちろん……」
 「タシガン家も出していない、と……つまり偽造というわけだな」

ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の言葉に涼司が頷いて話を引き継いだ

 「今までの様に君達やフリューネさんと協力して、空賊を片っ端から潰す事も簡単なんだがな
  偽造の真偽がはっきりしない以上、ツァンダとタシガン両家の信用の問題もある
  出来れば免状そのものを確認したい、それを見極めるのは当の本家の人間が一番だろう?
  そこでレティーシアさん直々に協力を仰いだと言うわけさ」
 「……成る程、ようやく君が僕達を招集した理由がわかったよ、山葉涼司」

ここまでに話の流れを聞いて
今まで黙って聞いていた黒崎 天音(くろさき・あまね)が手にしたティーカップを置き口を開く

 「免状を確かめるためには接触が必要という事だろう?
  まずはその空賊団を誘き寄せ、レティーシア直々に免状が偽造品であることを確認した後
  即効で壊滅させる……そういう事だな」
 「私たちはフリューネさんと一緒にレティーシアさんを守りつつ、空賊を逮捕すればいいわけですね?」
 「そういうわけだ。理解が早くて嬉しいよ、加夜」

火村 加夜(ひむら・かや)の言葉に涼司が安堵するように頷く
話の流れが見えたところで、黒崎 天音の隣にいたサオリ・ナガオ(さおり・ながお)が立ち上がった

 「掲示板で召集された理由はわかりました。わたくしも協力いたしますわ
  レティーシアさん、ひとつ質問なのですが、両家が私掠船免状などを一切発行していない……という事実
  その話は船乗りにどれ位知られている事なのでしょうか?」
 「新聞や警戒情報の範囲では一通り空挟一帯の交易船には伝えてあります」
 「……その上で、被害も誤認も相次いでいる、ということなのですね?」

レティーシアの解答にサオリは立ち上がったまま顎に手を添えて考え込む
その様を見て不思議そうにコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が彼女に声をかけた

 「不思議がる事もないんじゃないですか?
  頭の認識と実感は違うし……第一、襲撃の混乱時に、突き付けられた書類の真偽なんて考えられないですよ」
 「アレだね!オレオレ詐欺と一緒!気をつけろといわれても引っかかっちゃうって奴……そうだよね?コハク」

ええ、まぁ……と美羽の便乗に曖昧に答えるコハクと対照的に、サオリは考えながら慎重に言葉を返す

 「それでも……混乱していたとはいえ、その【一般知識レベルの情報】は知っている筈なのでしょう?
  そんな彼ら船乗り達が『本物の免状かもしれない』と思ったとすれば、その免状は余程精巧なものなんじゃないでしょうか?
  ……レティーシアさん、ここ最近の間に【ツァンダ家で大量の文書を紛失した】
  もしくは【文書係や管理の使用人が姿を消したりした】みたいな事はありませんでしたか?」
 「いえ、報告はありませんが、十分な確認はまだですわ」
 「なら今一度、確認が必要だと思います。まずは見本の出所を突き止めないと」
 「……確かに彼女の言うとおりです、見本がなければ作れるものも作れないですからね
  しかも、こればかりは力技では手に入らない可能性があります……組織的な後ろ盾の存在も考えられる
  ならば、その探りはこの叶 白竜が担当する事にしましょう」
 「だったら、僕もそちらのサポートに廻ろうかな」

サオリのここまでの推理を聞いて叶 白竜(よう・ぱいろん)が調査役を申し出た
黒崎 天音がそれに続いて同じ役に名乗りを上げる

 「どの道、件の賊をおびき寄せるなら外堀を生める事も必要だろう?
  偽情報を事前に流す。それと同時に調査も進めればいい、そこら辺の協力者も募るとするよ
  なに、ツテは色々あってね、下拵えは十分にさせてもらおうか」
 「頼む黒崎……そして、みんなも宜しく頼む」

それぞれの協力の同意だけでなく、進んでの役割分担も聞き涼司はそこにいる全員に礼を言う
分け距てない彼の感謝の意に、加夜と美羽、そしてフリューネは顔を見合わせて笑い合う
 
 「誉れ高き【蒼空学園の山葉涼司】の頼みですもの、頑張らないわけにはいけません
  良い報告ができるよう頑張ります。ね、美羽ちゃん」
 「うん!それに、私がやる事は今までと変らないからね、フリューネと一緒に悪者退治!」
 「そうね、今度こそあの空の悪意の根は断つ……いつになく大掛かりだけど、成功させましょ。みんなでね」


かくして、多方面からの頼もしき有志が集い作戦は開始されたのだった
作戦開始、一週間前の出来事である……