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花屋の一念発起

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第三章 わがまま何でもお任せあれ!!


 花屋シャビーの事務室は引っ越して来た不満を口にする花によってとても賑わっていた。店内では、増殖する花に囚われている不満を口にする花をエースとメシエに任せ、残りの者達はこちらに引っ込んでいた。

『何よ、このまずい肥料は。もっと美味しい肥料をちょうだい』
『水、水、枯れる、枯れる。早く水をちょうだい』
『水、水、水、水』
『光はどこよ。早く太陽の光をよこしなさいよ』

「何だか保育園みたいに賑やかですねぇ……なんてのんびりしている場合では無さそうですね。お店が無くなってしまったら私が来た意味も無くなってしまいますし」
 三百瀬 盈月(みよせ・みつき)はほんわかにお喋りな花達を眺めていたが、すぐに気を引き締めて水を求めて急いだ。

「……普段何も言わないのだから足りない物を要求するぐらいありがたいと思いますけど。邪魔になれば処分なんて、花の命は短いのに少しぐらいのわがまま許されても」

 水を与えて静かになった花を少しの間眺めながら呟いていた。失敗作とは言え、こんなに可愛い花を処分するなどしたくはない。少しばかり無理をしても自分に出来る限りのことをしてあげたいと盈月は思っていた。

「花の世話ぐらい一人でも出来るわ。両親にどんくさいとか器量がないだの言われまくったけどあなた達の相手なんて平気よ」

 ミッシェル・アシュクロフト(みっしぇる・あしゅくろふと)は他の協力者の邪魔をしないように少し離れた所で不満を口にする花の相手をしていた。

『光はどこよ。早く太陽の光をよこしなさいよ』

「……ほら、光よ」
 ミッシェルは窓を開けて差し込む光をたっぷりと浴びさせ大人しくさせたが、再び高い声で肥料要求を叫び始めた。

『肥料欲しい。肥料、肥料、肥料』

「……次は肥料ね」
 肥料を与えて少しの間、静かにさせる。満足したように見えたのも束の間、新たな不満を口にし始めた。

『水、水、水、水、水、水』

「今度は水って。動けないから言いたくなるのは分かるけど……いい加減うるさいわ」
 立て続けの要求にミッシェルの我慢にも限界が近づいてきた。

『肥料、肥料、美味しい肥料が欲しい。早くちょうだい』
『こんなおんぼろな植木鉢は嫌だわ。素敵な物に替えてちょうだいよ』

「……すごい有様ですね」
 明日香から事情を聞いた舞花が修羅場にやって来た。彼女より先に不満解消に頑張っている盈月にミッシェルの苦労ぶりと花の激しさに声を上げるもすぐにやるべきことを始めた。

「それでは、ご要望をお伺いしましょう」

『肥料、肥料、美味しい肥料が欲しい。早くちょうだい』
『こんなおんぼろな植木鉢は嫌だわ。素敵な物に替えてちょうだいよ』

「美味しい肥料に植木鉢ですね」

 不満を口にする花を相手に御用伺い的に聞き、銃型HCに記録していく。

「すぐにお持ちしますね。他の花の要望も伺っておきましょうか」
 不満を口にする花に言ってから舞花は、他の協力者達にも言葉をかけに言った。この花屋に無い物が必要な様子であれば、一緒に調達する方が効率が良いので。