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花屋の一念発起

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花屋の一念発起

リアクション

 楽しく賑やかな大道芸な宣伝の中、

「その花はお前達の花か!! 俺の人生をめちゃくちゃにしやがって!!」

 怒りに満ちた男の声が邪魔をした。彼の手には見るも無惨にぐちゃぐちゃになった箱があった。

「少し落ち着くんじゃ、何が起きたのか話してくれんかのう。事情を知らないままでは何もできん」
 ルファンは『説得』で少しでも男を落ち着かせ、話し合いをしようとした。
「……あの花に俺の人生をかけたプレゼントを踏み潰されて壊されて急いで探したら」
 怒りを見せたと思ったらその場に崩れ落ちてしまった。プレゼントをめちゃくちゃにされたシーンを思い出してしまったようだ。何とかルファンの言葉は届き、事情を話すも表情は怒りから涙に変わっていた。

「あーーー、俺の俺の。どうしてくれるんだ。弁償してくれよ」

 再び怒りを思い出し、涙を浮かべたまま勢いよく立ち上がり、殴りかかろうとしてくる。

「レオ」
「おう」

 様子に気付いたイリアの合図でウォーレンは『風術』で男に匂いを嗅がせた。
 ルファンは朋美に貰った消臭剤で自分に降りかかる匂いを防御。
「な、何だこの匂いはぁ」
 男は力無く、もう一度その場に座り込んだ。あまりの癒しの匂いに表情が緩みそうになるも怒りでそれを止める。

「……本当に申し訳ないのう」
 ルファンはガヤックに代わり謝った。

「……恋人にあげるはずだったんだ。そして、結婚を申し込もうと学生の頃からずっと付き合っていて。あーー、もう終わりだ。一生懸命、金を貯めて買ったのに」
 花の匂いの影響が少し落ち着くも人生最後の顔は直らない。

「わしらに壊れた贈り物を元に戻すことは出来ないが、代わりの物は何とか用意できるかもしれぬ」
 ルファンは『博識』で箱の中身、宝石が取れてめちゃくちゃになった指輪らしき物がどれだけの価値を持つのかを知った。ガヤックが丸々弁償できないほどの値が張る物だと。
 だからと言って言葉で謝るだけでは、男とガヤック双方には良くないので代案を考えた。

「代わりの物だと。何があるんだよ」
「花じゃ、ちょうど花屋の宣伝をしておってのう。恋人の好きな花を贈ってはどうじゃろうか」
 涙の目でいきり立つ男に考えた代案を話した。花が嫌いな人はあまりいないはずなので。

「自分の好きな花をプレゼントされたらすごく嬉しくなってすぐに結婚だよ」
 イリアも場を何とか収拾しようとルファンの援護をする。

「……花なんか買うお金なんか無い」
 座り込んだまま男はぽつりと言った。ほとんどのお金を使った贈り物はすっかり跡形もなく、財布も貯金も涙が出る状態。

「……そのことは少々、待ってくれんかのう、店の主人に話してみるからのう」
 考えていることはあるが、自分達だけで解決する訳にはいかないので一度ガヤックに事情を話すことにした。

「散歩する花に恋人への贈り物を台無しにされた男性がいてのう。代わりの贈り物に花束の話をしたんじゃが、どうじゃろうか」

 男性について話すとガヤックはすぐにお詫びに花束を用意したいとすぐに返事が返ってきたのでルファンは携帯電話を切って再び男の方に向き直った。

「大丈夫じゃ、原因はこちらにあるから希望通りの花束をお詫びに用意したいと深く謝罪しておる。そなたが、良ければすぐにでも」

「そうか。だったら行ってみるよ」
 まだ肩を落としてはいるが、何とか怒りを鎮めた男は無残な姿のプレゼントをズボンのポケットに押し込んで立ち上がり、花屋シャビーに向かった。

 男の相手が一段落した時、

「ん? 歌」
 ウォーレンは、横道から賑やかで楽しげな歌に気付いた。
「踊り?」
 歌っている方、詩穂もウォーレンに気付いた。

「すげぇな」
「そちらも賑やかで楽しそうだね」
 会話はほんの少しで終わり、詩穂は歌を紡ぎ、ウォーレンは踊り出した。
 踊り狂う花と楽しい音楽に心躍る踊り。注目を集めない訳がない。

「店が大盛況になるかもしれんのう」
 ルファンは、共演する二人に集まる人々を眺めながら呟いた。

「自分へのご褒美、恋人への贈り物、家族への感謝にぜひ、花屋シャビーの花を!!」
 二人の共演が終わると拍手の波が押し寄せる。そこにすかさず、イリアの宣伝が加わる。人々は皆、花を買うことに興味を抱き始めていた。

「おもしろかったぞ」
「素敵な歌だったよー。頑張ってね」
「詩穂も楽しかったよ。そっちも気を付けてね」
 詩穂はウォーレンとイリアに挨拶をして自分の宣伝活動に戻った。

 その後、ルファン達は賑やかな宣伝活動を終え、捕獲出来るぎりぎりのところで活動を中止し、ウォーレンの『風術』で匂いを別方向に向けさせ、匂いの影響を受けなくなった所でにイリアの『氷術』が根と匂いを撒き散らす花の部分を凍らせて捕獲を成し遂げた。三人は、凍った花と共に無事店に戻った。