First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、桃のような香りのする不思議な水――桃幻水を飲むことで、外見性別を女性のものへと変えていた。
パートナーのローゼ・シアメール(ろーぜ・しあめーる)は、頭の先から足の先まで隠れる着ぐるみのような魔鎧に姿を転じて、ゲドーに纏われている。
そのような格好をして、ゲドーが向かったのは、黒髭海賊団の船であった。
ベスティアたちとの攻防騒ぎの間に、そっと船へと忍び込んでおいたゲドーは、騒ぎが静まると、自室に戻っていくアーダルベルトの後を追っていく。
自室へと入っていったところで、ゲドーは扉をノックした。
「……誰だ?」
程なくして扉を開けて、アーダルベルトが顔を覗かせる。
「はぁい。お邪魔しちゃっていいー?」
訊ねながらも隙間から身体を割り入れて、部屋に入ってしまえば早々に扉を閉めさせる。
「俺様のこと忘れちゃったわけじゃねぇよな? アー……アー……アーデルハイトちゃん……いや、ガーターベルトちゃんだっけ?」
「どっちも違うっての。雰囲気からして、心当たりがあるが……今度は何用だ?」
呆れて、半眼になりながら、アーダルベルトは問う。
「負けっぱなしじゃツマラナイんじゃない? リベンジしようぜー?」
着ぐるみ越しで、ゲドーの表情は分からないけれど、挑発的な顔をしているのではないか、とアーダルベルトは考えて、少し笑みを零してから、口を開く。
「そうだな。負けっぱなしで終わろうとは思わないが、今は今で、この海賊団も悪くねえ。いつかは黒髭の野郎と、俺を負かせたヤツに、リベンジってか再戦を挑みたいところだが、まだそのときじゃねえ、そんな気がすんだ」
そう言い返して、「分かったなら、とっとと帰りな」とアーダルベルトは着ぐるみを外へと押しやった。
ゲドーは、エセルバートのところにも顔を出すけれど、彼もリベンジする気はないと、告げ返す。
「……まぁ、無理して今やる必要性はないから、確認できただけでも良しってことで〜」
呟いて、ゲドーは船を後にした。
*
パラミタ内海に生息する海竜の一種、フタバスズキリュウに乗って、島の周りを一回りしてきたセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)は、島から少し離れた海上に停めていたブリューナクへと帰ってくる。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
彼女を向かえてくれたのは、パートナーの八木山 バフォメット(やぎやま・ばふぉめっと)であった。
薔薇のティーセットを用いて、美味しいお茶と菓子を用意し、彼女の疲れを癒す。
傍らの甲板では東 朱鷺(あずま・とき)がペットの陰龍、陽龍に話しかけながら、音符の形の紙吹雪――裂神吹雪の操作訓練をしていて、ブリューナクの直ぐ傍の海中ではブランガーネ・ダゴン(ぶらんがーね・だごん)が従者のマーメイドたちと共に、のんびりと過ごしていた。
「黒髭海賊団の様子は、どうでしたの?」
一息ついた様子のセシルへと、バーソロミュー・ロバーツ(ばーそろみゅー・ろばーつ)が訊ねかけてくる。
「そうですわね……島を独占するような様子は見受けられませんでしたの。けれど、先ほどの戦闘は、どう捉えたものかしら」
入り江の中のことまでは見ていないため、セシルが目撃してきたのは、逃走しようとする所属不明の海賊船に対し、2機のイコンが逃走を止めようとしていたところだ。
結果、海賊船からはいくつかの小型飛空艇が逃げて行き、今にも沈没しそうな勢いの海賊船と取り残された船員たちは、後からやって来たレッサーワイバーンに乗った美緒たちに連れられて島に戻ると、黒髭の海賊船へと連行されていくようであった。
「停戦や協力を交渉するに値しそうですの?」
「そうね。交渉してみてもいいかもしれませんわ」
セシルはこくりと頷くと、ティーカップに残っていたお茶を飲み干した。
そのような話をしている間に、遠方に見える、島の傍に停泊している黒髭の海賊船に、船が1隻、近付いている。
会話や音は聞こえないが、人影がいくつか、2隻の間を行き来した後、これまた逃げるように近付いていた船が去っていった。
「何かあったのかしら?」
首を傾げながら、交渉をしに行くためにも、セシルはブリューナクを動かし始める。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last