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ハードコアアンダーグラウンド

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ハードコアアンダーグラウンド ハードコアアンダーグラウンド

リアクション

「はぁッ!」
 風次郎が長机を思い切り昌毅に振り下ろす。だが、机が砕けるだけで昌毅は平然としていた。
「イコン仮面! 機神掌を放てぇ!」
 リング際で叫ぶ那由多に従い、昌毅が風次郎の頬を張る。そのまま続けて仕掛けようとするが、風次郎が組み付き、
「おらぁッ!」
昌毅を抱え上げるとボディスラムでリングに叩きつける。そしてそのまま距離を取る。お互い、距離を測りつつにらみ合っていた。

『ジロー・ザ・ヒリアー、イコン仮面と距離を取る!』
『組み付かれるのを警戒しているのだろう。スペランカーに投げは致命的だからな』
『見た目はあれだが、中々ガチな試合じゃねーか……んで、こっちは、と』

「華麗な俺様の美技をくらえぇいッ!」
 ロープの反動を利用し、飛んだ変熊がソフィアにクロスチョップで身体ごとぶつかっていく。
「きゃあッ!?」
 ソフィアはダウンし、中々起き上がれない。最初の勇平との勝負で、想像以上にダメージが深かったようだ。
「ふはははは! 終盤までとっておこうと思ったのだが、今披露してやろう!」
 そう言うと、変熊はソフィアの頭をまたぐ様にして立つと、
「ふんッ!」
「んなッ!?」
パンツをずり下ろした。危ないところがギリギリ見えるか見えないか、のラインまで下げているが尻は丸出しだ
「ナイトメア!」
 そして叫ぶと、ソフィアの顔面の上でスクワットを始めた。男色ナイトメアという、立派な技である。
「きゃああああ! いやあああああ!」
 ソフィアの悲鳴が響く。顔面ギリギリに生尻がつくかつかないか、まさに悪夢の状況である。
「ふははははは! 美しさに悲鳴も漏れるか!」
「……ギブアップするかの?」
「こんな事でできませんわよ!」
 少し躊躇いながら聞いたルファンに、半泣きでソフィアが答える。
「んぶッ! ……そ、ソフィア、がんばぶははははは!」
 その様子を、リング外で剛太郎が笑っていた。
「あ、後で覚えてらっしゃい! 絶対許しませんわよ!?」

『……なぁ、これ放送して大丈夫か? 後でテレビで流れるんだろ?』
『それは私達が決める事ではない。しかしあの半べそ顔、見ていて面白いではないか』
『お前本当にいい趣味してるよな……さて、そろそろ次の選手が入ってくるぞ』

 続いて入場ゲートから現れたのは、青いコスチュームを身に纏ったフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)と、某生きる伝説レスラーである獣神のマスクを被った戸次 道雪(べつき・どうせつ)であった。

『輝く青いコスチューム! SRWから『キャプテン・ニューシャンバラ(自称)』ことフィーア・四条が来てくれたぁ!』
『その隣にいるのは覆面レスラー『雷神サンダーベッキー』、どうやらフィーアのセコンドにつくようであるな』

 花道をかけるフィーアは勢いそのままに滑り込むようにリングイン。そのまま彼女が狙ったのは変熊であった。
「ん? ぐぉッ!?」
 二度三度、ジャブで殴りつけると組み付き、エクスプロイダーで後方へと放り投げる。

『おっと変熊エクスプロイダーで投げられた! 尻丸出しで後頭部を強打する!』

 そのままフィーアはソフィアを引き起こそうとするが、
「……ん?」
彼女のコンピューターは、悪夢に耐え切れず自動的にシャットダウンを起こしていた。そのまま覆いかぶさり、ルファンがカウントを取る。抵抗もなく、ゴングが鳴り響く。

『2番目の退場者はソフィア! ナイトメアには耐え切れなかった!』
『随分と勢いがいいなフィーアは。スタミナが持つだろうか?』

 フィーアがそのまま次に狙ったのは、昌毅に気を取られていた風次郎であった。背後から飛びつくように組むと、腕をクラッチさせる。
「ちぃッ……そう簡単にはいかせない!」
 ジャーマンスープレックスを狙うフィーアに、腰を落として抵抗する風次郎。フィーアは尚も投げようと試みるが、体格差とパワー差により堪えられてしまう。
 そんな風次郎の脳天に、昌毅はビームサーベルという名の蛍光灯を叩きつけた。
「んぐぉッ!?」

『おぉっと!? いつの間にかイコン仮面が凶器のビームサーベルを手にしていた!』
『どうやらセコンドが渡したらしいな』

「ふはははははは! 武器を渡す簡単なお仕事だよ!」
 リングサイドで蛍光灯を構え、那由多が高らかに笑う。
 二つに割れる蛍光灯。意外と固い衝撃に風次郎の力が抜ける。
「チャンス! おぉりやぁッ!」
 その機会を見逃さず、フィーアが風次郎を持ち上げ、叩きつけるとブリッジをキープする。

『ジロー・ザ・ヒリアー投げられた! これはピンチ!』
『いや、よく見るがいい。ロープに足がかかっている』

「ロープブレイク! 離すですぅ!」
「ちぃ! 惜しいぃッ!?」
 ルーシェリアに言われ、フィーアがブリッジを解いた瞬間、昌毅の二本目の蛍光灯が彼女の頭に叩きつけられた。
「よし! いくのだイコン仮面! クローアームだ!」
 那由多の叫びに続いて、昌毅はフィーアの顔面を掴む。
「む……ぐ……あ……!」
 力が籠り、顔面に食い込む昌毅の指に、フィーアが苦痛の呻きを漏らす。
 だが、そこで終わらず、昌毅はそのままフィーアの身体を持ち上げ、後頭部から叩きつける。
「んぐッ!?」
 辛うじて受け身を取ったフィーアは、そのまま場外へと転がってエスケープ。そんな彼女を追う姿勢を見せる昌毅に、
「おらぁッ!」
復活した風次郎が、後頭部にラリアットを叩きつける。
「むぅ……今のは効いたわい……!」
 カスケードが呟く。昌毅は少しよろめきながらも、体勢を立て直し風次郎と対峙する。
 しかし風次郎はそのまま距離を置き、警戒するように構える。
「そうでござるジロー・ザ・ヒリアー! もう既に2回死んでいる! 後1回死んだら終わりでござるよ! 距離を取るでござる!」
 その時観客席から仙國 伐折羅(せんごく・ばざら)が叫び立ち上がった。
「成程、良い事を聞いた」
「おい昌毅、わしはもうあの蛍光灯なんぞ使わぬぞ?」
 カスケードの言葉に、昌毅はニヤリと笑った。
「解ってる。次は正攻法で行く!」
 そう叫ぶと、昌毅が一気に距離を詰めミドルキックを叩きこむ。
「ぐぅッ!?」
 風次郎が体をくの字に曲げると、そのまま昌毅は彼を肩に担ぐ。
「決めるのだ! 破岩突!」
 那由多が叫ぶ。昌毅は風次郎を担いだまま、駆ける。そして前転するように飛び込み、風次郎を背中から叩きつけた。カナディアンロッキーバスター、別名カミカゼとも呼ばれる技である。

『ジロー・ザ・ヒリアーが叩きつけられた! おっと、その間にも次の選手が入場してくる! 戦うコスプレイヤー! 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)がアピールをしながらゆっくりと花道を歩いてきている!』
『リング上ではイコン仮面が絶好の好機を得ようとしておるな』

 風次郎を叩きつけた昌毅はゆっくりと立ち上がる。
「おい昌毅よ、抑え込まんのか?」
「そう慌てる事もないだろ。もう死んでるはずだし」
「ふむ……わしは嫌な予感がするんじゃがのぉ」
 カスケードが、何処か納得いかないように呟く。刹那、
「もらったぁッ!」
死んだはずの風次郎が立ち上がり、昌毅の頭を肩に担ぐ様に捕らえる。
「必殺! リビングデッドぉッ!」
 そしてそのまま飛び上がり、ダイヤモンドカッターが決まる。昌毅は顔面を強く、リングに叩きつけられた。

『おいどういうことだ!? ジロー・ザ・ヒリアーが復活したぞ!?』
『普通に考えてハッタリだったんだろうよ。復活回数は3回ではなく、それ以上だったのを騙したのであろうな。観客席の者は仕込みか』
『しかしその騙し討ちは成功みたいだ! イコン仮面ダメージが大きく立ち上がれ……って、ジロー・ザ・ヒリアーも死んでないか?』
『そりゃ、ダイヤモンドカッターは飛び上がる技だから死ぬだろう』

「……えっと、いいのかな?」
 リングに上がったさゆみが、大の字になって死んでいる風次郎を前に呟く。
「……いいと思いますぅ」
 少し悩んだルーシェリアが言うと、少し迷いつつもさゆみは風次郎を抑え込む。
「……3!」
 復活回数を超えてしまい、全く動かない風次郎に空しく3カウントが響いた。
 そして、
「よぉくもやってくれたねぇ!」
蛍光灯で額を切り、血を流すフィーアが白目を剥きながら、昌毅の腕を脇固めで圧し折る気満々で搾り上げる。
「ぐおぉぉぉぉぉ!」
 一切の手加減無しで関節を極められ、昌毅が悲鳴を漏らす。
「ギブアップ!? どうするのじゃ!?」
 ロープまでの距離は遠い。このまま引き摺ってエスケープを狙う体力もない昌毅は、暫く耐えるもマットを叩き、ギブアップの意志を示した。

『ここでジロー・ザ・ヒリアーとイコン仮面が退場した!』
『と、ここで私たちの実況解説は終わりだ。この後は別の者が担当する。いやいや、色々とドラマがあって中々楽しめたよ』
『……え? 何それ聞いてないんだけど』
『担当者が複数いたのだ。仕方ないだろう? そんなわけだ。ほら、とっとと退場だ』
『い、いやちょ……いや引っ張るなよ俺はまだや――ブツッ』

(現在試合参加選手:3名 脱落者:4名)