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リアクション
お茶会準備とメンバー到着
「へえ、蛇々ちゃんはおはぎを作ってきたんですね」
「な、何!? なんか文句でもあるのっ!?」
柚は村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)が取り出した差し入れを興味深げに見つめる。
そんなゆずの様子に、蛇々は「これで何か不満があるのか?」と言うように噛みつく勢いで言葉を返した。
内心、ビクビクとしながら。
「いえ、美味しそうだと思いまして」
「あ、そっ……そう」
柚の直球の言葉に、蛇々は思わず言葉を窄める。
蛇々のパートナー、リュナ・ヴェクター(りゅな・う゛ぇくたー)はそんな蛇々の様子を見て、クスクスと楽しげに笑みを溢した。
「蛇々おねえちゃんは照れてるんだよ。だから気分悪くしないでね! 柚ちゃん」
「ちょ、何言ってるの! リュナ!」
蛇々の抗議の言葉に、リュナは唇を尖らす。
「えーだって本当のことだもん! それにあたしは蛇々おねえちゃんのことを誤解されたくないし!」
「誤解、って……」
蛇々の顔がどんどんと赤味を帯びる。
何も返せなくなった蛇々が目に見えて可哀想だったのか、柚が口を挟んだ。
「大丈夫ですよ、リュナちゃん。蛇々ちゃんが悪い子じゃないのは解りましたから」
「それなら良かった♪」
柚の言葉に、リュナがホッとしたように返す。
そして、思い出したかのように自らが持っていた紙袋を差し出した。
「そうそう、忘れちゃいけなかった。実もあたしも差し入れを作ってきたんだよ! じゃーん! ふわふわのシフォンケーキ!」
袋から取り出した箱を開けて見せるリュナ。
丁度、調理室から器材運び終えたヴァイスがそれを見て感嘆の声を上げた。
「クッキーにおはぎにシフォンケーキ。美味そうなモンばっか揃ってるなー。オレも負けてられないぜ」
気合を入れるように腕捲りをするヴァイス。
その横を、ロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)が皿を持って通る。
「なあ、この皿ってここで良いのか?」
テーブルに降ろしながらのロアの問いに答えたのは、ルカルカだった。
「そうそう。後は並べるだけだからよろしくね!」
「おう。しっかし面倒臭ぇなぁ……」
小声でボソリと愚痴を溢しつつも、ロアは黙々と作業を進めていく。
「まあ、こんなんで出席日数なんとかしてくれるってんなら、しょうがねぇけどさ。でも面倒には変わりないし。あー、グラキエスも早く来ねぇかな……」
「ロア。今到着したんだ。待たせたみたいだな。悪かった」
溜息交じりの、ロアの呟き。
まるでそれに応えるかのようなタイミングで、ロアの待ち人、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は現れる。その背後にはグラキエスのパートナーであるゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)、ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)、アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)も付き従うように立っていた。
「ようやく来たか。もう、このままサボろうかと思ってたぜ」
「また貴公はそのようなことばかり言って……」
ロアの言葉に、ゴルガイスが苦笑を浮かべる。
「相変わらずなのは、元気があるということですよ」
「まあ、主に心配を掛けるようなことにならなければ、俺はそれで良いと思う」
キープセイク、アウレウスともにロアを気遣うかのような台詞に、ロアは逆に居心地の悪さを感じて視線を逸らした。
「しょうがねぇだろ。面倒なものは面倒だ」
ロアは開き直ったかのように言い、皿を並べていく作業を再開する。
ふと、横を向いたグラキエスの視線が止まる。
そこには、たった今到着したフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)とそのパートナーであるベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)、レティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)、忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)の姿が。
グラキエスの視線は、その中のひとつに注がれていた。
ポチの助は居心地の悪さを感じて振り返る。
グラキエスと自然、見詰め合う形になり、一人と一匹はしばらく固まった。
(撫でても、大丈夫だろうか……?)
迷いながらも近付くグラキエス。
(逃げないな)
それに気づくと同時、好奇心に負けたグラキエスの手はポチの助の頭に伸びていた。
(わ、なんだなんだ? いきなり頭を撫でてきたぞ!?)
驚いてピクリと耳を尖らすポチの助。
しかしグラキエスの手は止まず。
(く、この下等生物が! ご主人様の前で僕を撫でるなんて!?)
最初は悪態をついていたポチの助の心中。
しかし次第に――
(この赤毛、撫でるのが上手いよ……。はっ! でも僕は誇り高き忍犬、屈するわけには! ……えへへ)
とろんとした顔付きになり、尻尾も喜びを表すかのように振られていた。
「あらあら、ずいぶんとまあ気持ち良さそうな顔しておりますね」
「ふむ。フレンディス以外に撫でられて、ここまで気持ち良さそうな顔をするのも珍しいな」
フレンディスとレティシアが、僅かに驚いたようにその様子を見守る。
「グラキエス、意外と動物の扱い上手いんだな」
ベルクが感心したようにグラキエスに声をかける。
「そうか? ただこの子が大人しいからだと思うが」
きょとん、とベルクに視線を移すグラキエス。
「ああ、動物の扱いさえも長けているとは! さすが俺の主だ!」
その背後で、自らの主に更なる誇りで胸を膨らませるアウレウスの暴走する声が響き渡る。
そこに、新たなひとつの騒がしさが被さった。
「ちょ、無理矢理引っ張るなと言っているだろうが!」
「だって樹ちゃんがノリ気じゃなさそうみたいだもん。こうでもしないと、ね?」
「良い歳した男が『もん』とか言うな! それに誰も嫌だとは言っていない! だから手を放す! わかったか!?」
パートナー達に半ば引き摺られるようにして現れたのは林田 樹(はやしだ・いつき)。そんな彼女の発言を聞いたパートナー、緒方 章(おがた・あきら)、ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)、林田 コタロー(はやしだ・こたろう)はようやくその手を解放する。
「じゃあ、樹様! お茶会に参加するということですね!」
「だからそう言っている」
ぶっきらぼうな口調ながらも、ジーナに応える視線は優しい樹。
「う! おちゃかい、たにょしみ! こた、あまいもにょたくしゃんたべたいお!」
コタローは嬉しそうに、そして楽しみそうに目をきらきらとさせた。
「ふふ、あちらもあちらでずいぶんと楽しそうです」
その様子を初めはポカンとした様子で見ていたフレンディスが、ついといった体で笑みを溢した。
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