校長室
寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!
リアクション公開中!
第四章 地下室でホラー! 「……来てはみましたが」 ローズの声かけに応じ、やって来たエッツェル。 「なかなか広い場所だね。友達も楽しめるかな」 子供達の幽霊を連れてニコも現れた。 「来てくれたんだね」 地下室の演出家ローズが二人を迎えた。声だけしか判別が出来ないほど姿は原形が無いほどグロテスクゾンビだった。 「エッツェルは動き始めはお客さんの肩に触れて背後からの恐怖を与えて、その時にフードが自然と落ちるようにね。それからは追いかける感じで途中で私も合流するから。そのまま地下室の出口まで追う。途中、他の人も合流する事になっているから」 ローズが時間が迫ってきているので手早くエッツェルに説明。 「……分かりました」 エッツェルは何とか了承してから適当な場所へと移動した。 「……こんなに棺桶がたくさんあったら隠れんぼが出来るね」 ニコはちらほらと置かれた棺桶に興味を向けどこかに行ってしまった。 「……しっかりお客さんを怖がらせてね」 ローズは、行ってしまうニコの背中に一言だけ言った。 「分かってるよ。どうなるかは分からないけどね。くふふ」 ニコは立ち止まり、ローズに答えた後、薄く笑い、『光学迷彩』で姿を消した。 「地面が石畳だから湧き出るも出来ないし棺桶の中っていうのも普通だし、お客さんに背を向けて……」 ローズは、客に背を向け墓石の前に座り込み、祈りを捧げているように見せる。遠目からゾンビとは見えないように。 「……あともう少しだ」 吸血鬼役としてダンは棺桶に潜み、客が来るのを待っていた。 「魔女のボクは一発驚かせるよ」 リキュカリアはダークブレードドラゴンと共に墓石群の入り口に待機。 「僕はここにしようかな」 博季は墓石群の出口に待機。 そして客達はやって来た。 「何で一緒なんだよ」 「それはこっちのセリフだ」 墓石群に続く道で追いついてしまった兄妹。当然喧嘩を始める。 「道は一本だからな」 「……賑やかで怖くなくていいですよ」 優と零が何とか険悪な雰囲気を和ませようとする。 「……それはそうだけど」 「推測は出来ると言っていたな」 ユルナは零の言葉に頷き、ヤエトはまだ聞いていなかった宝物についての推測を木枯と稲穂に問いただした。 「もしかしたら形の無いものではないかと思っています」 「どの部屋にも無かったからね〜。でもこの部屋にあるかもだけど」 稲穂と木枯が改めてヤエトに報告する。 「それは私も考えていました。もしかしたら思い出的な物か精神に影響を与えるものじゃないかと」 「誰もが幸せになるってあるもんね」 舞花とノーンが言葉を重ね、さらなる予想を口にする。 あまりにも抽象的な事からもしかしたらの推測。形があれば、人によって好みが出てくるためだ。 「その可能性はありますか?」 陰陽の書が二人に舞花が言った事の可能性を訊ねた。 「……あるよ」 「有り得る」 兄妹揃って同じ答えを口にする。 「宝物の居場所についてだが、あくまで可能性だが、中庭だと考えている」 「家族写真の背景が中庭で目立たないんだけどお墓らしいものが写ってて何か違和感が感じたのよ」 ここで剛太郎が宝物の居場所を伝え、望美が補足した。 「……中庭か。可能性というならここも探し回って潰す必要があるな」 と聖夜。 「ここが最後なのね」 「……やれやれだね」 「……これが最後」 リリアは最後の部屋に気合いを入れ、メシエはまだ続く事に呆れ、エースはそんな二人を見守るだけだった。 「着いたみたいだ」 九十九が辿り着いた事をみんなに伝えた。 最後のホラーが始まった。 墓石や棺桶が広がる薄暗い地下室。 「……ここに。うわぁっ」 ユルナが広がる墓石群に乗り込もうとした時、突然横から炎が吹き出してきた。 「大丈夫ですか」 「大丈夫?」 舞花とノーンが驚いて後ろによろけるユルナを支えた。 「魔女とドラゴンだよ。さぁ、丸焦げにしちゃうよ」 陽気なリキュカリアが登場。薄暗いため姿は恐ろしく見えて明るい声が妙に不安にさせる。 リキュカリアは客達が慌てて墓石群へ入り込むまで追いかけた。次の出番まで待機。 「……棺桶」 リリアは、じっと何か出て来る事を願いつつ棺桶を見ながら先を進む。 「……何か出てくれ」 エースもまた何か出てくれと願う。 そして、しばらく歩いた所で出会った棺桶から吸血鬼役のダンが客の気配を感知し、勢いよく飛び出した。 「きゃぁ」 悲鳴を上げ、リリアはメシエに抱き付いた。 「……」 メシエはすっかり呆れたのか言葉を洩らさなかった。 そして、他のみんなは足を忙しくしていた。エースは心の中で感謝していた。 行ってしまう客を見送りながらダンはふと感傷に浸っていた。 「……ふ」 手がつけられないと暴れまくり恐れられていた事をふと思い出していた。 「ノーン様、ありますか?」 舞花はあらゆる可能性を潰すため宝物を探しているノーンに訊ねた。 「無いよ。わぁっ、びっくりした〜」 ノーンは首を振ったが、ニコが連れて来た子供の霊に背後を押されて思わず転げそうになるのを何とか踏ん張っていた。 「……きゃぁ」 望美の肩を叩くエッツェル。ローズの指導の元、自然にフードが落ちるようにして異形化した顔をしっかりと相手に見せていた。 「望美!」 剛太郎が驚きでよろける望美を支え、手を引っ張って走り出す。 「……追いかけるんですよね」 エッツェルは小さく言葉を洩らし、ゆっくりと追いかけ始めた。 「早くここを離れよう」 ユルナが真っ白な顔で辺りを見回している。あちらこちらにある棺桶が子供達の霊によって開けられていた。 「……隠れんぼだね」 ニコは子供達の霊を静かに見守っていた。 「……誰かいます」 陰陽の書は墓石の前で祈りを捧げるローズを発見。 「……動かないみたいだから大丈夫だよ」 ユルナはそう言い、青い顔で出口に目を向け、歩いていた。 みんなが自分を通り過ぎた時、ローズはずるりと地面に倒れ込み、 「……うっ、うっ、うぎゃぉ」 呻き声を上げながらおぼつかない足取りでのたのたヨタヨタと歩き始めた。見るからにグロテスクで焦点の合っていない目、口から垂れる不気味な液体、腐臭がしそうな雰囲気。どれをとっても完璧なゾンビ。 「……のろそうだな」 振り向いたヤエトが思わず洩らした言葉が合図となりローズが叫び声を上げた。 「ギャヴァォーーー」 意味不明な叫び声と共にローズは猛ダッシュで追いかけ始めた。 それを見た客達は一斉にここを早く出る必要があると急ぎ始めた。 ローズを追うようにエッツェルやダンも動く。 「ボクも追いかけるよ! 行っちゃえー」 リキュカリアもブレードドラゴンを引き連れて現れる。 何とか墓石群を抜け、出口に続く一本道へと出る。 「……これは」 優が立っている博季を発見。右手を優の方に向け、剣を持つ左手はだらりと垂らしている。 血糊で真っ赤のローブと守護剣『星々の見守りし願い』を装備。顔が見えないように兜を装着している。 そして、剣を引きずりながらおぼつかない足取りで動き出した。 「……来るぞ」 優は急いで動き始める。 「うわぁ」 追いかけて来る博季に真っ青になるユルナ。博季の背後には墓石群にいた驚かせ役達がいた。 必死に出口を目指す客達が顔を前に向けた瞬間、 「……今だ」 博季は『空飛ぶ魔法↑↑』で気付かれない程度に地面から足を浮かせて客との距離を詰め、剣を引きずるリズムは変えず距離は縮んでいないことを演出。 「ひゃっ、近くにいる」 思わず振り向いたユルナは博季が近くにいる事に驚き、足を絡ませ地面に尻餅をつくと同時に脳天を真っ二つにする勢いで頭上から剣が襲って来た。ユルナは思わず目を閉じた。 「……ん」 痛みが無い事におかしいと思ったユルナはゆっくりと目を開け、自分が生きている事を確認するも目の前には血濡れのローブの人。 「……」 博季はユルナが目を閉じたと同時に剣を彼女の手前に振り下ろし、地面に突き刺していた。 「……」 ぼんやりと自分の目の前に突き刺さっている剣を見るユルナ。 その様子があまりにも可哀想になって博季は思わずユルナの頭を撫で撫でして飴を持たせてから剣を地面から引き抜き、他の客を追いかけ始めた。 「……立てますか?」 陰陽の書がユルナに声をかけた。 「……大丈夫……あれ?」 飴を服のポケットに入れてから立ち上がろうとするも左足に鈍痛が走り立てない。よろけて地面に座り込んだ時に捻ったようだ。 誰かが助けの手を差し出す前にヤエトが妹の元に来た。ここで驚かし役達は空気を読み、追いかけるスピードを落とした。 「……だらしがないな、アホ子」 いつものように喧嘩口調のヤエト。 「うるさいな。さっさと行ったら」 ユルナも兄を見上げながら言い返す。 「……」 じっと妹を見ていたヤエトはそのまま放って置くのかと思いきや屈み込み、ユルナに背中を向けた。 「……何?」 兄の予想外の行動にユルナは思わず訊ねた。 「お前は馬鹿か。見れば分かるだろう。背負ってやるって言ってるんだ」 ヤエトは心底馬鹿にしたような口調で言い放った。 「はあ? 誰が」 苛立った顔で言い返すも正直助けてくれるのはありがたいが、相手が兄というのが。 「こっちも不快だ。ただここに来ている者達にあの会社の社長は怪我人を置いていく冷血漢などと思われたくないからな」 なかなか言う事を聞かないユルナにヤエトはまた意地っ張りな言葉をかける。素直に心配しているからと言えば済む事なのに。 「……む」 じっと兄の背中を睨むだけで動かないユルナ。 ここで空気を読んで遅めに追いかけていた驚かし役達は再び空気を読んで走り始めた。 「早くしないと危ないよ〜」 木枯が急かす。他の者も回復する力を持ちながらあえてここは出しゃばらない。 「……仕方無くだから」 そう言ってユルナは兄の背中に乗った。 「……当然だ」 ヤエトも素っ気なくそう言うも妹を落とさないように細心の注意を払って走った。 このまま客達は、驚かし役に追い立てられ通路を抜け、コテージの暖炉から中庭に出た。