校長室
寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!
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第五章 宝物、発見! 中庭は静かで芝生が広がっていた。 そして、目的のコテージがら少し離れた所にある墓石へ急いだ。 「これが例の墓か」 「文字が苔で隠れてるよ」 ユルナを背負ったままヤエトは墓石前に立った。名前が記されていると思われる場所が苔で見えなくなっていた。 「……待ってろ」 そう言って聖夜が苔を払い、名前が明らかになった。 「これお父さんの名前だよ。本当に冗談がすぎる」 「……まさに死んでもここにいられる、だな」 兄妹は、父のろくでもない残し物にため息をついていた。 「掘ってみるか」 「……墓泥棒みたいだな」 聖夜が墓石の前を掘る事を提案し、優は思った事を口にした。死者が眠っていないとはいえぱっと見は墓泥棒。 「仕方無いな」 剛太郎も加わり、土の中に眠っているだろう棺桶を掘り出し始めた。 「俺も手伝おう」 九十九も手伝い始めた。人手が多い方が作業も早く終わる。 「棺桶だねぇ」 「……反応しないよ」 出て来た普通の棺桶に声を上げる木枯と棺桶から『トレジャーセンス』が反応しないノーン。 「開けてみるか」 聖夜の合図で掘り出していた三人で同時に棺桶のふたを持ち上げた。 何か素晴らしい物が金品財宝以外の何かがあるとみんな期待しながら。 しかし、中に入っていたのは、 「……空っぽの小瓶が一つ?」 空っぽの小瓶だけだった。思わず呟きつつ舞花は小瓶を手にする。 「やっぱり」 「……だろうな」 宝物は人を驚かせるための父の壮大な作り話に違いないと兄妹はこれまた同時に声を上げた。 「栓がありますからとりあえず開けて見て下さい」 舞花はとりあえず、何か起きるかもしれないと小瓶を兄妹に差し出した。 「……足を治しますね」 不便だろうと零が『応急手当』と『命のうねり』で速やかにユルナの足を治療した。 ユルナは、兄の背中から降りた。 「ここの責任者のお前が開けろ」 「……分かってるよ」 ヤエトの言い方に少し苛立つユルナが小瓶の栓を抜く事になった。 とりあえず、何が起きるのか見守る二人。 当然、栓を抜いても中身は何も無いので何も飛び出してきやしない。 「当たり前だけど、何にも出て来ない」 ユルナは確認に小瓶を逆さまにしてみるが、何も出て来ない。 他のみんなの顔は兄妹が言うようにからかわれたと思ったのか神妙なものだった。 しかし、 「……ん、何だこれ」 ヤエトが思わず声を洩らした。 なぜだか訳もなく、心が安らかになり、満たされた気分になる。楽しい、懐かしい、面白い、何とか言葉に当てはめようとするもどれも正しくどれも間違っているような気分。そんな気分がどこからともなく湧いてくる。 「何気に気持ちが明るくなるんだけど。幸せと言うか」 「……確か父さん、魔法が好きだったな」 思わぬ出来事に兄妹は、まともな会話を交わしていた。 ユルナが今の気持ちを表す的確な言葉を口にしていた。 それぞれみんな穏やかな表情をしていた。 「……栓に文字が」 「……愛する家族へ、か。こんな所に書いてあったら目立たないだろう」 コルク栓に小さく書かれた文字を発見したユルナとあまりにも目立たない事にヤエトが呆れた。父は本当に小細工が好きだと。 この言いようのない気分は少しの間続き、落ち着きを取り戻しても多少の余韻が残っていた。 「……お客もスタッフにもたくさんお世話になったから喫茶店で打ち上げでも」 ユルナのお礼をかねた申し出にみんなは喜んだ。 「それはいいな」 九十九も楽しいかもしれないと賛成。 「知らせてきますね」 「行くね〜」 木枯と稲穂は誘導員最後の仕事として館内にいるスタッフに伝達に行った。 「参加さて貰うよ」 「ボクも参加だよ。東雲、大丈夫だったかな」 快く受けるローズと笑顔のリキュカリア。 「俺も参加するか。アメリは大丈夫だろうか」 「一休みをしましょうか」 とダンと博季。 「さぁ、みんな行こうか」 「……ゆっくりしましょうか」 子供達の霊と移動するニコとゆっくりと向かうエッツェル。 当然の事ながらホラーハウスの今日の営業はここで終了となった。 救護室では長らく気絶していた東雲が目を覚ましていた。 「目を覚ましたか、東雲。ちょうど良かった。この後、食堂に集まろうという事らしい」 「……しょ、食堂」 三郎景虎の言葉に東雲は気絶した時の事を思い出した。 「……営業は終了したそうだ。衣装も着替えて集まれという事だ」 「……終了、それなら」 三郎景虎の言葉で東雲は動き始めた。