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夏合宿 どろろん

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夏合宿 どろろん

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    ★    ★    ★
 
「こ、怖くないのです。わたくしだって、肝試しぐらい、ちゃんとできるのですわ」
 網に入れたスイカを提げ持ったまま、イコナ・ユア・クックブックさんが、ちょっとおっかなびっくりに言いました。
「なあに、俺様がいればお化けなんて怖くもなんともないぜ。全部任しとけって。さあ、行くぜ、ねっけーつ!」
「ねっけーつ! ああ、少し元気が出ましたわあ」
 アッシュ・グロックくんと一緒に腕を高く突きあげて叫んで、イコナ・ユア・クックブックさんがちょっと元気になりました。
「来た来た。えーい」
 木の上で待ち構えていた秋月葵さんが、イコナ・ユア・クックブックさんにむかってコンニャクを投げつけました。
「むっ、そこかあ!」
 すかさず、アッシュ・グロックくんが火術でコンニャクを撃墜します。こんがりと、コンニャクがいい色に焼けました。ここは、味噌がほしいところです。
「はっはっはっ。コンニャクなどいくつでも飛んでこい。なんなら、あっつい、ふろふき大根でもいいぞ!」
 いや、それは結構危険だと思います。
「むかつく〜。だったら、こうだよね!」
 隙を見て、秋月葵さんがアッシュ・グロックくんにその身を蝕む妄執を仕掛けました。
「さあ、先に……えっ!? うわあああ!!」
 振り返ったアッシュ・グロックくんの目の前で、イコナ・ユア・クックブックさんが持っているスイカが爆発しました。あっけなく、イコナ・ユア・クックブックさんの上半身がなくなります。もちろん、本物のイコナ・ユア・クックブックさんは無傷ですが、アッシュ・グロックくんの目にはそう映ったので、あわててその場から逃げだしました。
「どうしたの、待ってー」
 急いで、イコナ・ユア・クックブックさんがその後を追いかけます。当然、悪夢継続中のアッシュ・グロックくんはたまったものではありません。そのまま、全速力で森を駆け抜けていきました。
「くそう、やられたあ!」
 走り疲れて砂浜で大の字に倒れたアッシュ・グロックくんが、悔しそうに叫びました。
 そんなアッシュ・グロックくんの目の前にスイカがゆらゆらと現れます。
「大丈夫ですか?」
「も、もちろんだぜ」
 イコナ・ユア・クックブックさんを下から見あげると、アッシュ・グロックくんが強気で答えました。
 気をとりなおして、洞窟にむかいます。
 祠に辿り着くと、鬼龍貴仁くんが出迎えてくれました。
「お疲れ様、お茶をどうぞ」
「わーい、暖まりますわ」
 素直に、イコナ・ユア・クックブックさんが、冷えた身体をお茶で温めます。その後で、持っていたスイカを祠にお供えしました。
「それじゃあ、帰るか」
 ほっとしたように、アッシュ・グロックくんが言いました。
「あの、ちょっと……」
 鬼龍貴仁くんが声をかけます。またもや、その身を蝕む妄執が発動です。
「まだ、何か……うわおわっ!?」
 振り返ったアッシュ・グロックくんの目の前でまた幻のスイカが爆発しました。