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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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 仲良く賑やかな通りを歩く天野 木枯(あまの・こがらし)天野 稲穂(あまの・いなほ)
「あ、何か発見!」
 木枯が通りに落ちている美しい紫の石を発見した。
「わぁ、綺麗ですね……ってこれ、もしかして宝石じゃないですか!? きっと持ち主の方が探していますよ。まだ近くにいるかもしれません。捜しに行きましょう」
 稲穂は石の輝きからただのくず石とは思えず、持ち主がいるだろうと考えた。
「そうだねぇ、早く持ち主さんを安心させてあげないとね」
 木枯は稲穂にうなずいた後、石を拾い上げた。その瞬間、突然石に触れた手に電気が走り体中に巡り始めたのを感じて慌てて投げ捨てた。
「木枯さん! 大丈夫ですか!?」
 稲穂は急いで木枯の無事を確認した。
「いったた、なんとか。この石、宝石じゃないみたい。魔法の石なのかな?」
 木枯は石に触れた手をさすりながら地面に転がる石を見た。
「……かもしれませんね。でも魔法のことは全く分かりませんよ」
「だよねぇ」
 事情をまだ知らない二人は少しばかり困っていた。分からないからと言って危険な物を見ないふりをして立ち去る事など出来ず、突っ立っていた。

 通り。

「……マスター、石が如何に危険か解りませぬが早めに対処しないといけませんね」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)はぐっと気合十分にベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)に言った。
「……そうだな。しかし、少し買い物に出ただけ何で巻き込まれるんだ。慣れたとはいえ、もーちょいフレイの好奇心を刺激しねぇようなもんにしてくれっつの」
 たまたまホシカの店へ魔術道具作成用として使えそうな石を買いに行き、閉店を知って帰ろうとした所に何かあると言ったフレンディスが店のドアをノックしたため今ここにいるのだ。
「……石、か」
 もうベルクは買い物は出来ないわ妙な事にまきこまれるわフレンディスの好奇心は募っているわでため息しか出ない。
「ご主人様、今回もこの優秀なハイテク忍犬の僕にお任せ下さい! 全部見つけ出しますよ!」
 ポチの助は背筋をピンと伸ばしてフレンディスのために役に立とうと張り切っている。
「お願いします!」
 フレンディスもしっかりとそんなポチの助を頼りにしている。
 ポチの助は“ここ掘れワンワンの術”こと『トレジャーセンス』と『捜索』を使って石を探し始めた。フレンディスも『捜索』を使ってポチの助を手伝う。

「……」
 ベルクはホシカの店で得た情報を頭の中で並べ始めた。何か考えるべき事があるのではないか、見落としている事があるのではないかと。
「マスター、何か考え事ですか?」
 フレンディスは小首を傾げてベルクに訊ねた。
「……消えた石が気になってな。職人が亡くなる数日前は全て揃っていたと言うし。そうなると盗みの可能性が高いな」
 ベルクはホシカから得た情報から妙な点について考えていた。どうにもきな臭い。
「……泥棒さんですか?」
「それでもおかしいよな。盗むのなら普通全部盗むもんだろ。それだけじゃない。売り払ったりして金に換えたりコレクションにしたりするだろ。これで本当に道端に転がっていたとしたら、誰かが被害を受けてそのままという可能性もあるが、どうにも」
 ベルクは訊ねるフレンディスに自分が気になっている事を列挙した。ただ、石を回収して破壊するだけでいいとは思えないのだ。
「そうですね。それなら、マスター、石を発見した時に読み取ってみましょうか。石に込められた想いも気になりますし」
 フレンディスは名案を思いついた。自分の『サイコメトリ』があれば、ベルクの疑問も一挙に解決だと。
「……それが手っ取り早いだろうが」
 フレンディスの案は確かに魅力的だが、どうにも賛成できない。ベルクにはフレンディスが危険に遭う未来しか想像出来ないのだ。謎が分かるよりもフレンディスの身を守る方が最優先だ。
「任せて下さい」
「それは他の奴らが解決するだろうからフレイは触るな」
 平気さを主張するフレンディスに苦い顔でベルクが言った。

 そこに
「ご主人様、近いですよ!」
 『トレジャーセンス』で必死に石捜索をしていたポチの助が後ろを歩くフレンディスに報告し、電気を発生させる紫色の石の元へと駆けだした。

「ご主人様! ここに石がありますよ! 見つけましたよ!」
 石を探し当てたポチの助はフレンディスに喜んで貰う事だけを考えていたため声をかけられるまで木枯と稲穂の存在に気付かなかった。
「ポチの助さん!」
「もしかして石ってこの石のことですか?」
 木枯はポチの助の登場に喜び、稲穂は事情を訊ねた。
「むっ、その石はこのハイテク忍犬である僕が見つけたのだぞ」
 木枯と稲穂に手柄を取られないようにツンとした言い方をするが、尻尾は再会出来た事を喜んでいた。
「ポチの助、頼りになります。あ、稲穂さんと木枯さん。いつもポチの助がお世話になっています」
 ポチの助を追ってフレンディスも現れ、木枯達を発見するなり日頃お世話になっているポチの助についてぺこりと頭を下げた。
「ご主人様、こんな下等生物達に頭下げる必要ありませんよ! この僕がお世話になった事などありません」
 ポチの助はプイと木枯達から顔を背けるも相変わらず尻尾は言葉とは逆の事を表現していた。
「いえ、困った時はお互い様ですよ」
「私達もポチの助さんにお世話になってるからねぇ」
 稲穂はフレンディスに答え、木枯は尻尾を振るポチの助に笑顔になっていた。
「稲穂と木枯か。そっちも石を探していたのか」
 少し遅れてベルクが現れ、木枯達に訊ねた。
「その石について教えてくれませんか?」
「触った途端に電気が流れたんだけど」
 事情を知らない稲穂は訊ね、木枯は石に触れた手を伝って体中に電気が流れそうになった事を思い出していた。
「……電気、ですか。大丈夫でしたか?」
 フレンディスは心配そうに木枯の無事を確認した。
「すぐに投げ捨てたから大丈夫だよ〜」
 木枯は両手をひらひらさせ、笑顔で無事を表現した。
「それでこの石は何ですか?」
 稲穂はベルクに事情を訊ねた。
「……それは」
 ベルクはホシカの事、石の事、行方不明であるグィネヴィアとキーアについて話した。
「……そうですか。石に行方不明者ですか」
 稲穂は聞いた話を頭の中で整理していた。
「ん〜、どこから手をつければ良いのか……」
 大変な状況に何から手助けをすればいいのか考え込む木枯。
「……」
 フレンディスは木枯と稲穂が考えている隙に石に触ろうと行動を開始。不思議な石に興味を抱かないはずがない。
「フレイ!」
 ベルクが『行動予測』を駆使してフレンディスが石に触れる前に腕を掴み、止めた。
「マスター、大丈夫ですよ。少しだけ石に込められたものを読み取るだけです」
 フレンディスは笑顔で言った。
「さっき、二人に聞いただろう」
「ご主人様を危険な目に遭う前にエロ吸血鬼、さっさとやるのです!」
 ベルクとポチの助がフレンディスを止める。ポチの助は少しばかり上から目線だが。
「……はい」
 フレンディスは『超感覚』の耳と尻尾で反省を表現していた。それでもまだ気になるのかちらりと石に視線を送っていた。
「大丈夫ですよ。石を壊した後に読み取ってみてはどうですか」
 稲穂がしゅんとなっているフレンディスに助け船を出した。
「そうですね。そうすれば大丈夫ですね」
 稲穂の言葉を聞いた途端、フレンディスは元気を取り戻した。『超感覚』の耳と尻尾もピコピコと動き始める。
「……壊すぞ」
 ベルクはフレンディスの様子にため息をつくもやるべき事をした。『貴族的流血』で具現化した無数の杭で石を徹底敵に破壊した。
 残ったのは、石くずと砂ばかり。読み取るフレンディスに危険が及ばないように『クライオクラズム』で凍らせた。
「……では」
 フレンディスは早速『サイコメトリ』を使った。
 見えるのは石を作るのに昼夜を問わず取り憑かれたように石を作る職人の姿、工房の窓から悲しみや落ち込んだ顔をした人々を観察する職人の切ない顔。その他に職人が出て来ない場面を一つだけ見た。
「何か分かりましたか?」
 稲穂が読み終わったのを確認してから訊ねた。
「これを作った方は、本当は優しい方だったみたいです」
 そう言ってフレンディスは読み取れた内容をみんなに話した。
「……でも」
 フレンディスは最後に見えた嫌な予感しか感じない映像を思い出し、言葉を濁した。
「他にも何か見たのか」
「真夜中に誰かに盗まれているのを見ました。見えたのは箱に入れられる場面で泥棒さんの顔は見えませんでした」
 ベルクに促され、フレンディスは見えた内容を話した。
「……盗んだ人が落としたんでしょうか。木枯さんと同じように被害を受けて」
 稲穂が石がばらまかれた事について冷静に推理を始める。
「もしかしたらわざとの可能性もある」
 フレンディスが読み終わった石を跡形もなく破壊してからベルクも稲穂の推理に加わった。
「……連絡です」
 フレンディスはルカルカからの連絡を受け、石をばらまいた犯人について知った。
「……泥棒さんが分かりましたよ。正体不明の魔術師さんだそうですよ」
 連絡を終えたフレンディスがみんなに内容を伝えた。
「……そうか。盗まれた石の共通は同じ素材か。これも何かの実験だと考えているかもしれねぇな。この周辺にはいないかもな」
 ベルクはすぐにイルミンスールの森を実験場のまま放置し多くの犠牲者を出し森を病んだ姿にした魔術師の事を思い出していた。しかも放置もわざとの可能性がある。ただ姿を見た訳でも名前を知っている訳でもないので今回の事と同一人物とは明確には言えないが、状況は似ている。
「人に迷惑をかける実験はいけませんよ」
 稲穂は悪い魔術師に腹を立てていた。
「あそこから石の気配がしますよ! ご主人様、見てて下さい」
 『トレジャーセンス』で石を捜索していたポチの助は動き始めた。
 フレンディス達と木枯達はポチの助を先頭に石の被害場所に急いだ。