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『いよいよ第一部最後の試合となりました。ファイナル、通常ルールシングルマッチ、時間無制限一本勝負を行います! まず入場するのはブラック・ジャガー神崎 荒神(かんざき・こうじん))選手!』
『黒いジャガーマスクから覗く鋭い眼光、気迫は十分』
『それもそのはず。この試合、ブラックジャガー選手には特別な思い入れがあります……さぁ続いて入場はリングに翼の生えたジャガーが舞い降りた! ジャガーマスクラルフ モートン(らるふ・もーとん))選手! コーナーに駆け上がった!』
『コーナー上からブラックジャガーを見下ろし、一回転してジャガーマスクリングイン。軽い身のこなし、体調は万全か』
『今回のこの試合、ブラックジャガー選手が過去の興行で対戦経験のあるジャガーマスク選手に、挑戦状を送りつけた事が切っ掛けとなりました!』
『前回の対戦はルール上決着は不透明。ジャガーマスクも『この対戦を待っていた』と快諾しこのカードとなった』
『因縁の対決を前にリング中央で睨み合う二頭のジャガー……リングにジャガーは一人でいい! 果たして二人のジャガーの戦いの結末は如何に!? 今、ゴングです!』

 試合開始、荒神はまず相手の出方を見ようと距離を取ろうとした。それに対しラルフは仕掛けに行った。
 荒神をロープに振ってからのロープワーク。戻ってきた荒神をリープフロッグで飛び越し、前転しながらロープに体を預ける。
 勢いをつけてラルフは飛び、首に巻きつく様に足で挟み振り回すコルバタを放つ。転がされた荒神は即座に起き上がると、同じようにコルバタで返す。
 やはり即座に起き上がると、今度はアームホイップの応酬。互いに一度ずつ掛け合うと、同時にヘッドスプリングで跳ね起き身構えると、観客から拍手が起きた。
『素早いロープワークからのムーブ! 観客がわきます!』
 ラルフと荒神のファイトスタイルはルチャをベースとした素早い動きを生かした物と似通っていた。お互いが派手なムーブを交えつつ、自分のペースへと試合を引き込もうと試みる。
「シャぁッ!」
 荒神がトラースキックを放つ。サイド気味に放った蹴りは、ラルフの胸の辺りを貫く。
 派手に受け身を取りながらラルフがダウン。そのまま追い打ちをかけようと荒神が近寄るが、ラルフはヘッドスプリングで跳ね上がる要領で彼の頭を足で挟む。
 自身の頭を支点とし、逆立ち状態で身を捻り、戻す勢いで荒神を放る。放られた荒神はトップ、セカンドロープ間にもたれ掛る。
 待ってましたとラルフは立ち上がるとロープに走り、その勢いのままロープを潜り619。だが、荒神もそれは読んでいた。身体をずらし、サードロープへともたれかかる。
「甘いッ!」
 しかし、ラルフはその勢いのまま、セカンド、サードロープ間を掴み旋回して再度619を放った。逃げ場のない荒神の顔面にラルフの両足が叩き込まれ、吹き飛ばされた。

『先の先を読み合う勝負! 制したのはジャガーマスク選手!』
『ジャガーマスク、勢いを休めずにそのまま捕らえる。関節技を狙うつもりと思われる』
 
 ラルフが吊り天井固めで荒神を絞り上げる。軋む関節に、荒神の口から苦痛の声が漏れる。
 ある程度絞り上げると、ラルフは自ら技を解き別のジャベを仕掛けていく。狙いはギブアップではなく、相手のスタミナを削る事。流れる様に多彩なジャベを仕掛けていく。
 だが荒神も黙っているわけではない。
「シュッ!」
 ヘッドロックでラルフを捕らえるとその場で旋回、倒れ込みながら足を刈り取りそのまま関節を極めるタイガースピンを見せる。更に絞り上げつつ、変形の足四の字に複雑に足を絡めたりとダメージを蓄積させていく。荒神の狙いは足殺し。ラルフの空中殺法対策である。
 お互い関節を取り合うグラウンドの展開を見せる。交互にジャベを仕掛け、最後に極めたのは荒神。
「貰ったぁッ!」
 ラルフの腕を取ってドラゴンスクリューの様に巻き込むように倒すと、そのまま相手の足を四の字の様に固め、更に自身の足で腕もハーフネルソンに極める複雑なジャベが出来上がった。
『足を使ってハーフネルソン! ブラックジャガー選手が複雑なジャベを見せます!』
『ハーフネルソンだけじゃない。足も同時に極めるこれはゴライアスバードイータという技。そう見れる技じゃない』
 ゴライアスバードイータでラルフを締め上げていた荒神が技を解く。そのまま仰向けになるラルフの足を掴むと、手を絡めて複雑に折り畳みうつ伏せに返す。
『今度はブラックジャガー、パラダイスロックを極めた。あれは自力では解けない』
『複雑なジャベにジャガーマスク選手起き上がれない! ブラックジャガー選手、踏みつけて挑発する!』
 挑発する動きを見せた荒神は、ロープへと駆け出し動けないラルフへ低空ドロップキック。技が解けたラルフが転がりエスケープ。
 そこを逃さず、荒神がロープへ走りトペスイシーダ。
「させん!」
 だが起き上がったラルフは荒神を避ける。勢いそのままに観客席へとダイブする荒神。
 起き上がった時には既にラルフはリングへと上がっていた。立ち上がったことをラルフは確認すると、ロープへ飛びあがり、体を捻りトルニージョで荒神へぶつかっていく。
「ぐぁッ!」
 ダイレクトにぶつかり、リング上で互いに大の字になる。場外カウントが続く中、ラルフが先に起き上がりリングへ戻る。
 ダメージを残しつつ、荒神もエプロンへ上ると、ラルフがロープへと走る。だが、今度は荒神がロープへ飛びあがり、スワンダイブ式のミサイルキックで迎撃。たまらずラルフが吹き飛ばされる。
 荒神は攻撃の手を休めず、ラルフを起こすとロープへとスルー。その後を追うように走る。
 だが、今度はラルフがロープに足をかけ、反動を利用してのボディプレスで襲い掛かる。これは荒神カウント2。
 起き上がる荒神に、今度はラルフがロープの反動で勢いをつけて駆ける。だが、待ち受けていた荒神が飛び上がり、フランケンシュタイナーでフォール。これもラルフはカウント2で返した。
 そこでお互い、手を広げて仰向けに倒れ込んだ。

『素早く目まぐるしく変わる攻防! 一瞬たりとも目を離せない展開が繰り広げられています!』
『お互い消耗しだしてる。そろそろ勝負を決める頃』

 試合も終盤。互いに余力を出し切る勢いで大技の応酬を重ねる。
 荒神が高速のジャーマンを決めると、ラルフもハイアングルのジャーマンで返す。決めさせまいと、今度はタイガードライバーを決めるが、これも決め手にならず。
「せぇやぁッ!」
 ラルフが荒神の身体を高々と掲げると、パワーボムで叩きつける。クラッチは無しの投げっぱなし。
 リングの上に大の字になる荒神を見ると、リングを背にし、ラルフがコーナーを上る。
 力もあまり残っていないのだろう。コーナーを上る足取りも鈍い。
 だが上がる一歩一歩を確実に、力を込めてラルフは上がる。
「ヨ、アラス バリエンテ!!」
 そして観客に叫ぶ。
 リングを背にしたトップロープ。ラルフの身体が、宙に浮いた。
 身体を捻り、宙を舞うスターダストプレス。着地点は荒神の身体。だが、
「ぐぁ……ッ!」
ラルフの身体を貫く衝撃。着地したのは荒神――が立てた膝。
『リングに降り注ぐスターダスト! しかし剣山によって打ち砕かれた!』
『これはブラックジャガー選手好機!』
 胸を押さえるラルフを見て、荒神が立ち上がる。
 相手のフィニッシュムーブを潰した。自分はそれを上回る何かで挑まねば勝てない。
 だが高速ジャーマン、タイガードライバー、と返された。これではフィニッシュにならない。
 残るカードは――あった。たった一つの奥の手。
「決めるぞぉッ!」
 荒神が吼え、ラルフを捕らえると、パワーボムで抱え上げる。
『先程のお返しか、ブラックジャガー選手がパワーボムの体勢に入る!』
『これは決まるとジャガーマスクは不味い。返せるか?』
 この技を食らっては拙い、とラルフは落とされる前に荒神の頭にしがみつく様にして堪える。
 そんな堪えるラルフに対して荒神が取った行動は、その体勢のまま彼の首を抱えた。ラルフの身体を丸くパッケージすると、
「せぇやぁッ!」
後方に反り投げた。プロレスごっこから生まれた技、フェニックスプレックスと呼ばれる技と同系の技であった。
『ブラックジャガーが奥の手を見せた! ジャガープレックスホールド!』
『これは完璧に決まった、ジャガーマスク、返せるか?』
 そのまま荒神はブリッジで固める。パッケージされたラルフは身動きもとれず、カウントが流れる。1、2、そして3。
 試合終了のゴングが鳴り響き、荒神がブリッジを解くとそのままリングに横たわる。解放されたラルフも大の字。二人のジャガーが、リング上で横たわっていた。
『試合終了! 試合を制したのはブラックジャガー選手! 奥の手ジャガープレックスホールドで勝利をもぎ取った!』
『二人とも激戦を戦い抜いたから立ち上がれない……レフェリーの手を借りて、やっと立ち上がる』
『激戦を制した二人のジャガーがリング上で握手を交わし、お互いを称え合っています!』
『どちらが勝ってもおかしくない試合だった。最後のジャガーマスクのスターダストプレスが決まっていれば、結末はまた違っていたはず』
『試合が終わりノーサイド! ジャガーマスク選手がブラックジャガー選手の腕を上げ讃えています! 激戦続きの第一部のフィニッシュを飾ったのは二人のジャガーのファイトでした! さて、第一部はこれにて終了となりますが、イベントはまだまだ続きます!』
『この後の第二部は、普通ではできない特殊なルールによる試合』
『この後第二部の準備を行います。その間、しばし休憩となります。開始まで、少々お待ちください。以上、第一部をお届けいたしました!』