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『全員が一度アウトになり順位が激しく入れ替わりました! 現在トップはラルク選手! 既に水風呂ゾーンに入水中! それに続いてさゆみ選手も水風呂まであとわずか!』
『え、そこそこ距離ありましたよね? 早くないですか?』
『ななな選手の見えないところで普通に動いていましたから』
『凄い判定がザルですね……これで温泉に辿りつくのは誰になるのか……ん?』
『ボニーさん、どうしました?』
『いえ……あの、温泉の方見てください』
『温泉がどうかし――え?』

「ん? ちょっとタイム。どうしたのー?」
 実況側が騒がしくなった事に気付き、ななながタイムをかける。
『いえ、あの……なななさん、温泉の方見てください』
「温泉ー?」
 泪に言われ、くるりと温泉に視線を向ける。なななだけでなく、その場にいた者達全員。
「――え」
 そして、全員が目を見開いた。

「ふぃー……あ゛ー……たまんねぇー……」

 温泉で、一人おっさんのように声を出す依子が居た。
「……あの、いつからそこに?」
「ん? ついさっき」
 なななの問いに、依子が答える。
「全然動きが見えなかったんですが」
「そりゃ【隠れ身】使ってたしさ。さっきの姉ちゃん二人が乳揉まれてる間、ずっと動いてたんだけどな、俺。何にも言われなかったし、いいだろって」
『えーと、こちらでも確認すると確かに不正は無く温泉に向かってますね』
 実況席側で映像を確認する。確かに先程の乳職人の活躍の間、身を隠す様に水につかりながら依子は平然と動いていた。
 しかしなななはというと、騒ぐ乳職人側に目を奪われていた為依子に一切気付いていない。
 依子はそのまま、普通に水風呂を出て、普通になななのそばを歩いて、普通に温泉に入り、普通に湯を楽しんでいた。
 場が沈黙する。散々カオスな状況作り出しておいて、結末がこれか。

「優勝は日笠依子選手ぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 沈黙に耐え切れなくなったのか、なななが叫んだ。

「「「そんなの有りかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 一同叫ぶ。そりゃそうだ。
「判定しっかりしろよ! ザルにも程が有んだろ!?」
「そもそも判定基準が曖昧なのよ! あれだけ騒いでも中々アウトにならないってどういうことよ!?」
「普通喋ってもアウトでしょう!?」
「いいの! なななが認めてるんだからいいの!」
 一斉に参加者たちに攻め立てられるが、完全に開き直るななな。
『ま、まぁまぁ、終わったんですから良しとしましょうよ。皆さんも温泉入ってくださいね』
 ボニーが参加者たちを宥めにかかる。
「ん? これ優勝者以外入れねぇ、とかいうんじゃねぇの?」
 温泉に入っていた依子が問いかける。
『え? そんな事ありませんけど……そう言うルールでしたっけ?』
 逆にボニーに質問されてしまった。
「ほぉ、どういうことだろうねぇ?」
 依子が【鬼眼】を使用してなななを睨み付ける。
「……今日はみんな頑張った! 最後はお風呂入って全部――」
『水に流そうってか?』
「……だめ?」
 何にも考えていなかったようで、なななが涙目で首を傾げる。
 参加者一同、何か言いたげだったが『風呂に入れるならまぁいいか』という事でその場を収める事にした。
「不甲斐ないなななでみんなゴメン……よーし、それじゃ最後に締めで今日のレッ――
『やらんでいい!』
 流石にそれはアウトだった。