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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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汝、己が正義に倒れるや? ~悪意の足跡~

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幕間:夜に咲く花

「や、やっと見つけましたよ!」
 リースがラグエル・クローリク(らぐえる・くろーりく)アガレス・アンドレアルフス(あがれす・あんどれあるふす)の二人(一人と一匹?)に会えたのは茶屋の前であった。そこにはラグエルたちのほかにマーガレットとルーノたちの姿もある。
「どこに行ってたんですか。ずっと探してたんですよ。全然見つからないから私てっきり野盗に襲われたのかと……し、心配したんですからね」
「すまないことをしたなリースよ。ちょっと手違いがあってな、一度街に戻ったのだ」
「ラグエルがお財布落としちゃったの……ごめんなさい」
 二人の無事が確認できたからだろう。
 リースは安心したように深いため息を吐いた。
「何もなくてよかったよ。マーガレットも合流したなら連絡してくれてもいいのに」
「ごめんね。すっかり忘れてた」
「わ、忘れてたって……」
「このお店さ、和菓子だけかと思ったらクレープも置いてあったんだ。つい嬉しくて食べることに夢中になっちゃったよ」
 リースはマーガレットの楽しそうな笑顔に何も言う気が起きなくなったのか、縁台に腰かけるとお茶を頼んだ。ほどなくしてお茶が運ばれてくる。
「あ〜、落ち着きますね」
「ほい」
 隣、座っていたルーノが団子を一つリースに差し出した。
「これはご親切に……あ、お久しぶりですね。みなさん」
 今気づいたのだろう。
 その視線がルーノたちに向けられた。
「オツカレさまでした」
「みんなも座れ。そろそろ花火が上がるってさ」
 ルーノの言葉に各々が空いた縁台に腰を掛けた。
 お茶を頼んだり、団子を食べたりしているうちに時間は過ぎ――

 そして花火が上がった。

「たーまやー!」
「た〜まやぁ〜♪」
「綺麗ですねえ」
「きれーい♪」
 皆が皆、空に咲く花に目を奪われていた。
 ふとラグエルが言った。
「花火がねドーンってなってる時に好きな人とちゅーすると好きな人とずーっと幸せになれるんだよ」
 ねー、とリースに同意を求めるがしどろもどろで返答にならない。
 アガレスはラグエスの胸元で愉快に笑うのみである。マーガレットに至っては我関せずとクレープを口にしていた。
 そしてアニスとルナはそうなのかと真面目に聞き入っている。
「くーちゃん!」
「なに――」
 答えるクウの口はルーノの唇で塞がれた。
「あ、あー……」
 リースはその様子に頭を抱えつつ空を仰ぎ見た。
 そこには夜を背景に火の花がいくつも咲いていた。