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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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 ヴァーナーはすぐに戻って来た。
「日奈々ちゃん。ほら、これはどうですか?」
 ヴァーナーが持っているのはたくさんの包装紙。ただ、普通の包装紙ではなかった。
「……甘い匂い、優しい匂い、さわやかな匂いに……ヴァーナーちゃん、これは」
 日奈々はたくさんの包装紙から漂う、様々な匂いに気付いて笑んだ。
「日奈々ちゃん、どれがいいですか?」
 とヴァーナー。控え目で見守っているばかりの日奈々にも買い物を楽しんで貰おうとしたのだ。
「……どれも、素敵……私はこれがいいと、思う。優しいグィネヴィアちゃんに、ぴったりだと思うから……」
 日奈々が選んだのは花の優しい匂いをまとった包装紙だった。
「グィネヴィアおねえちゃん、よろこぶですよ〜」
 ヴァーナーは笑顔で言い、日奈々の選んだ包装紙をショッピングカートに入れた。
 それから
「日奈々ちゃんもいろいろ選ぶですよ〜」
 ヴァーナーは日奈々の手を引っ張ってラッピング用品探しに狩り出そうとした時、片手では抱え切れない量だったためか包装紙がいくつか床に落ちてしまった。
「……あ、ヴァーナーちゃん……包装紙、落ちてる……」
 気付いた日奈々は急いで包装紙を拾った。
「ありがとうですぅ。ナディムおにいちゃんも来るですよ〜」
 ヴァーナーは拾ってくれた日奈々に礼を言い、ナディムも呼んだ。
「……にぎやかだな」
 そう言いながらナディムはショッピングカートを連れて急いだ。

 ヴァーナーや日奈々が選んだ様々なラッピング用品をショッピングカートに入れた後、
「よし、もうそろそろグィネヴィアのお嬢さんの様子を見に行ってみるか」
 頃合いだろうと見たナディムは二人に言った。そもそもそれ以上入れるとショッピングカートから商品がこぼれてしまう恐れがあるから。
「うん!」
「……は、はい」
 ヴァーナーは元気に日奈々は控え目に返事をした。

 その時、材料収集班が登場。
「ど、どうですか? 素敵な物は見つかりましたか?」
 進み具合を訊ねるリース。
「……すごいまふ」
「……集まったな」
 リイムと宵一はショッピングカートたっぷりのラッピング用品に目を向けた。
「……」
 グィネヴィアは素敵で可愛い物に溢れるショッピングカートを見た後、気になる物であるのか棚の方に視線を走らせた。
「……グィネヴィアのお嬢さん、これか?」
 気付いたナディムはグィネヴィアの視線の先にある包装紙を手に取り、見易いようにグィネヴィアの視線の高さまで持って行った。
「……うわぁ、それもいいねぇ」
 ヴァーナーが一番に反応した。
「……」
 グィネヴィアはこくりとうなずき、包装紙はショッピングカートに入れられた。
「……グィネヴィアちゃん、どれがいいか、選んで」
 日奈々がショッピングカートに入っている物の選別を頼んだ。
「……」
 迷うグィネヴィア。
「……全部にするですか?」
「……」
 ヴァーナーが訊ねるとグィネヴィアはマルを描いたページを見せた。
 それによって入れた商品全てお買い上げとなった。
 買い物が終わるなり、セリーナが待つベンチへ向かった。

 騒がしい通り。

「……何かが焼ける匂いがします。かなり強いですよ」
 天野 稲穂(あまの・いなほ)が前方の建物の影から赤々としたものを発見した。
「そうだねぇ。煙も昇ってる」
 天野 木枯(あまの・こがらし)は鼻をひくつかせながら答えた。
 木枯と稲穂はたまたまヴァイシャリーに来ていた。
「火事でしょうか。それにしては何かおかしいです」
 稲穂は昇る火の手に妙なものを感じた。
「んー、誰かに聞いてみようか」
 木枯は誰かに事情を聞く事を提案。
 二人はうろうろと人を捜し始めた。

 そして、
「何か事件でしょうか?」
「火事が起きてるみたいだけど」
 ベンチでお留守番中のセリーナを発見した。
「あら、木枯ちゃんに稲穂ちゃん。今大変な事が起きてて……」
 セリーナは木枯達を笑顔で迎え、訊ねられた質問に答えた。

「……署名した紙が契約書で、んー、それにしてもおいしそうなリンゴ。食べ物を粗末にするのは許せないねぇ」
 木枯は聞いた情報をまとめてからセリーナの隣にあるバスケットを見た。中には美味しそうな林檎。元に戻ったとは言え、食べ物を粗末にする事は許せない。
「火は暗い夜に見ると宝石も霞む美しさでとても力強く神秘的なもの。当然、私達の生活にも欠かせないものです。それを何もかも奪う恐ろしい火事に変える事は許せませんよ」
 と稲穂。
「私達もグィネヴィアさんを助けるの手伝うよ。今回の事で悲しい顔をして欲しくないからねぇ。私に出来る事は限りがあるけど」
 木枯は即断した。グィネヴィアを助ける事に可愛いからとか感謝して欲しいからなどという理由などない。助けたいから助けるだけ。悲しい顔をして欲しくないからそれだけだ。
「私もグィネヴィアちゃんにはいつも笑顔でいて欲しいわ」
 セリーナも気持ちは木枯と同じだった。

 そんな時、
「……あら」
 セリーナの真ん前を横切る白い小鳥。

「小鳥です」
「そうだねぇ」
 稲穂と木枯もじっとベンチに着地する小鳥を目で追った。

 賢狼・レラが小鳥に向かって声を上げた。皆に重要な事を知らせようとするかのように。
「レラちゃん?」
 セリーナが賢狼・レラの様子を確認。
「……木枯さん、もしかして契約書かもしれませんよ」
「……そうだねぇ。標的は小鳥、狩りの時間かな?」
 稲穂と木枯は賢狼・レラの行動に意味を見出す。それにほのかな魔力の気配。
 音を立てずにそっと捕まえようとする木枯達。

 しかし、気まぐれな小鳥はぱっと飛び立った。

「あ、向こうに行きましたよ。追いましょう。ありがとうございました」
「ありがとう」
 稲穂と木枯はセリーナに礼を行ってから小鳥を追った。
「気を付けてねぇ」
 セリーナは手を振って木枯達を見送り、買い物に出掛けている皆を楽しそうに待っていた。