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学生たちの休日10

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学生たちの休日10
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    ★    ★    ★
 
「第三世代機か、相手にとって不足なしだが……」
 天御柱学院のイコン対戦場でゴスホークに乗った柊 真司(ひいらぎ・しんじ)が、モニタ一杯に映し出されているアサルトヴィクセンを見つめてつぶやきました。
「大丈夫ですよ。こちらだって、ただの第二世代じゃありませんし、搭乗時間は圧倒的にこちらの方が上ですから」
 サブパイロット席から、ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が保証します。
『うんうん』
 ちゃぷちゃぷと、流体金属化して柊真司の身体をつつんでいる魔鎧のリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)も同意しました。
 ジェファルコンをベースにしたゴスホークは、四枚のエナジーウイングを展開したスリムな漆黒の機体です。BMIを搭載した2.5世代のイコンで、モーショントレースシステムを搭載しているそうです。そのせいで、多彩な超能力をイコンレベルで発揮できますが、反面、パイロットの負担も大きいものとなっています。
「第三世代機ストークの性能を確かめるのには最適の相手だな。だが、ちょっと最適すぎるか?」
「近づかれたらまずいかもねー。ぶっ壊す気で一気にやるしかないんじゃない」
 アサルトヴィクセンのコックピットで、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)馬 岱(ば・たい)がゴスホークの動きに注意しつつ対策を練っていました。
 アサルトヴィクセンは、第三世代機ストークをベースとした機体です。有り余るエネルギーを利用して、巨大な荷電粒子砲ユニットを両肩に装備しています。その火力は、機動要塞なみです。
「さて、始めるか」
 模擬戦開始のシグナルが、両機のコックピットに鳴り響きました。
 開幕と同時に、アサルトヴィクセンが多弾頭ミサイルを一斉発射しました。バックウェポンから発射されたミサイルが、空中で分裂して対戦場のほぼ全面に降り注ぎます。信管は抜いているとはいえ、実弾だったら周囲ごと吹き飛んでいるでしょう。
「ヴェルリア、BMI85%!」
「問題なしです」
「開け!」
 グラビティ・コントロール・システムを展開して、ゴスホークが降り注ぐクラスター・ボムの雨を左右に切り開きました。そのままウインドシールドを展開して一気に突っ込んでいきます。
「来た、予測通りだ! 弾幕、続けろよ」
「やってるじゃん」
 さらに多弾頭ミサイルの雨を降らせ続けながら馬岱が言いました。帯域攻撃を避けるためには、そのすべてを吹き飛ばすか、道を切り開くしかありません。柊恭也はそれを予測して待ち構えたのでした。
「粒子加速器出力規定値、マーカービーム照射!」
 突っ込んでくるゴスホークにむかって、ターゲットマーカーレーザーを柊恭也が照射しました。本物の荷電粒子ビームでは、命中したら本当にゴスホークが蒸発してしまいます。
「避ければミサイルの雨だ。どうする」
 勝ち誇る柊恭也の前で、ゴスホークが左右に分裂します。ヴェルリア・アルカトルが展開したミラージュです。けれども、冷静に柊恭也が射線を左右に振りました。ビームが、横にならんだすべての幻影を薙ぎ払います。
 決まったかに思われたとき、シールドを構えたゴスホークの姿がすべて消え、そのやや上を水平に飛行していた本体が一気に肉薄してきました。
 即座に機晶ブレードを展開しようとしたアサルトヴィクセンでしたが、その周囲に浮かんだ無数のレーザービットが、全周モニタに映っていました。
 ヴェルリア・アルカトルの機体表面に、一斉にマーカーが照射されます。
 勝負ありました。アサルトヴィクセンであれば一撃までは耐えられたかもしれませんが、ダメージコントロールの間にファイナルイコンソードを叩き込まれて終わっているでしょう。
「いい戦いだっな」
 ゴスホークのコックピットを開いて、出てきた柊真司が言いました。すぐ後ろに、ヴェルリア・アルカトルも立っています。
「まいった、完敗だな」
 アサルトヴィクセンのコックピットハッチを開けて、柊恭也も出てきました。その姿は、試作パイロットスーツを着込んでいて、まさに異形です。
「敵!?」
 反射的に、ヴェルリア・アルカトルが叫んでしまいます。その感情に過敏に反応して、PBWが一斉に柊恭也にぶつかっていきました。
「うおっ、げぼ、がっはっ……」
 ボコボコにされた柊恭也が、後ろへと吹っ飛ばされていきます。
「あーあ、だからもっとデザイン考えろと言ったじゃん」
 自業自得だと、馬岱が溜め息をつきました。