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6章 写真撮影

草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)とカペルのパートナーのクミスがアトラスの傷跡頂上上空でカメラの位置の調整をしていた。
「この位置でどうじゃ?初日の出と山頂が画面内にぴったり収まるであろう」
「うーん……もうちょっと左じゃないかな」
 二人が覗いているカメラのファインダー内では、着々と太陽が顔を覗かせようとしていた。
「ちょっと、連射モードを試してみるとするかの」
 そう言って、羽純がカメラのモードを切り替えてシャッターを押した瞬間だった。
 クミスの前を人のような何かが猛スピードで走り抜けたのだ。
「な……って、あれ参加者じゃない?」
 クミスが指差した場所にほうきの上でぐったりしているエリスとゲブーが居たのだ。
「あの……そのカメラ見せてもらっていいですか?」
「いいが、何かの証拠でもあるのかの」
 羽純の怪訝な表情を見ると、エリスは「レースの優勝で……」と口をもごもごさせながら言ったのだった。
「……ほれ」
 エリスとゲブーは額を突き合わせながら、ディスプレーの中で連射で映っている自分達を見た。
最初はゲブーがエリスを追い越そうとしていたが、途中からエリスとゲブーの距離の差が無くなり、最後にエリスがほんのちょっとの差でゲブーを抜いていたのだ。
「やった! あたしが勝った!」
「くそー! 絶対に俺様が優勝だと思ったのによぉ」
喜んでいるエリスとへこんでいるゲブーを見ると、クミスが近づいてきて手を出した。
「えへへ。ありがとう」
エリスはクミスが優勝を祝っているのだと思って、つい手を握ったのだが。
「違うの。携帯で撮ったあいつらの写真見せるの」
 携帯写真? あいつら? 
「あ゛」
 エリスが四人のうちの誰も撮って居なかった事に気が付いたのはこの後だった。

「遅いのじゃぞ。初日の出が昇ってしまうのじゃ」
 わざわざ参加者達を麓まで呼びに行った羽純はぷりぷりと怒っていた。
 その隣では、クミスが参加者達の携帯写真をチェックしながらシートに記入していた。
「後はレオーナさんとクレアさんだけかな」
「お待たせしましたー! お二人を連れて来ましたー」
 後ろから聞こえたリュリネスの声に全員が振り向いたのだが。
 そこには、ヘリファルテにぶら下げられたロープにほうきとレオーナとクレアの縛られた姿があったのだが、リュリネスが急ぎすぎて高速で来たためか二人は気を失っていた。
「いやぁ、色々あったんですけどなかなか説得に応じないから強引に連れて来ましたよ」
「これ強引過ぎかと……いくら、時間が無いからってこれは無いと思うのだが」
 そうカペルがリュリネスの行為にドン引きをしていると、レオーナとクレアが目を覚ました。
「起きたようじゃな。そのロープを切ってとっとと記念撮影じゃ」
 えーっ!!
 と言う全員のドン引きの声に羽純は耳も傾けなかった。