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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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土佐 ブリッジ

 イコンデッキで待機していたアルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)はブリッジからの連絡を受けてすぐさまハッチを開いた。
 開かれたハッチから見える蒼空に一つの点が見えたかと思えば、その点はすぐに大きくなっていく。
 着艦する味方機の接近タイミングを計りながら、アルバートはすぐさま侵入路の横に退避する。
 ほどなくして土佐に最接近したハーティオンが鷹皇を抱えた状態で侵入路へと飛び込んだ。
 丁度良い位置でブレーキをかけると、ハーティオンはゆっくりと停止した。
 それを見て取り、イコンデッキの奥からソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)も駆けつける。
「土佐の整備担当官――アルバート・ハウゼンです」
「同じくソフィア・グロリアですわ」
 二人が名乗ると、すぐにハーティオンも名乗りを返す。
「迅竜のハーティオンだ。よろしく頼む」
 自己紹介もそこそおに、アルバートとソフィアはハーティオンにラップトップPCをケーブルで繋ぐ。
「亮一殿――艦長の作ったイコン損傷度自己診断プログラムです。すぐに終了しますので少々お待ちください」
 アルバートが説明すると、ハーティオンも興味津津のようだ。
「診断した機体を青:問題なし、緑:小破、黄:中破、赤:大破、黒:修理不能の5段階に分けて分類できるプログラムでして、ハーティオン殿は黄色――即ち中破ですね」
 手早く、目印用に同色のマグネットタグをハーティオンに貼り付けると、アルバートとソフィアは早速修理に取り掛かった。
 修理が始まるのに合わせ、同じくイコンデッキの奥で待機していた高崎 朋美(たかさき・ともみ)ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)高崎 トメ(たかさき・とめ)の三名も駆けつける。
「高崎殿たちにはそちらの機体を頼みます」
 アルバートが鷹皇を指さすと、朋美は即座に頷いた。
「了解だよ。さっそく取り掛かろう」
 すぐに鷹皇の修理を開始した朋美を手伝いながらウルスラーディは問いかけた。
「イコンを駆ってあの連中と戦いたい気持ちも、あるんだろ?」
 すると朋美はすぐに答える。
「天学生としては、イコンを駆って的に攻撃を仕掛けたいところではあるけれども、天学生にしかできない仕事や技術があるから、そっちを今回も優先するよ」
 淀みのない手際で修理を進めながら、迷いのない口調で朋美は言う。
「敵にはこういうサポートがなさそうだから、数に限りがある以上、こちらが粘り強く大破や小破したイコンも修理整備補給して何度も何度も立ち向かっていくならば、打ち破れるはず」
 ウルスラーディが静かに耳を傾ける中、朋美は強い決意を感じさせる声で言う。
「実際のイコンに乗って戦うのは、イコン乗り『しか』出来ない人達に任せよう。数少ないイコン整備要員として働くのが、今回のボクの戦いだ。
ボクにしかできない戦い……」
 朋美と同じく淀みのない手際で修理作業を進めながら、ウルスラーディもそれに応える。
「イコンを駆る方が俺の性には合ってるが、朋美がそのように望むなら、これもまた戦いだろう。天学生の俺達でなければできないこと、それにベストを尽くそう」
「ありがとう――」
 ウルスラーディの目を真っ直ぐに見つめて礼を述べる朋美。
 するとウルスラーディはどこかくすぐったそうに言う。
「イコンの事は操縦する相棒の事だ、朋美の事と同じくらい良く知ってる。メカニックの役割は、多少不満だが引き受けてやるさ。構成員の全体が一番大きな成果を出せるように計算することも、勝つためには必要だからな」
 二人が鷹皇を修理している間、トメはハーティオンに話しかけていた。
「あらおにいさん、ええ身体してはるねぇ? しっかり気張って敵さん落としてきとくれやすなぁ……中身が出てきたら、あたしが機関銃で仕留めたりますわ」
「う、うむ! 任せてくれ!」
 そうしている間に修理は完了し、ハーティオンは立ち上がった。
「感謝する! では、また会おう!」
 整備要員たちに敬礼すると、ハーティオンはイコンデッキを進み、カタパルトから飛び立っていく。
 ひとまず修理を終えたアルバートとソフィアに、トメはすかさず温かいおにぎりとお茶を出した。
「イコンも大事ですけど、それを動かすお人らにも、休息と調整・整備は必要どすなぁ」