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リアクション
■第三幕:人と機械の均衡
二体の機晶姫との戦いからどれほど時間が経過しただろうか。
ヘンゼル・オルバーツ(へんぜる・おるばーつ)は接近戦を繰り広げているセドナや匿名、緋王らの姿を見ながら剣を構えた。彼らの攻撃を盾の機晶姫が防ぎ、攻撃の合間を狙って剣の機晶姫が攻勢に打って出る。その戦法はまるで助け合っているようにも見えた。
皆と同様に機晶姫に斬りかかりながら彼はパートナーとなった人物、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)の姿を思い浮かべる。
「あれは信用ならない」
こいつらのように支え合っているわけではないと彼は自問自答した。
ブオンッ! と剣が目の前に迫る。
軌道は読めていた、だが身体が思うように動かない。
「処置が悪い」
それは誰に対しての言葉か、彼は攻撃を防ぐべく腕を動かす。
間に合わない、剣が彼の腕を貫いた。火花が散り、機晶姫が後ろへ下がる。
「戦闘を続行する……」
「しなくていいのです」
彼の言葉を遮って誰かが言った。
振り返れば、そこには四人の女性の姿があった。
「私たち先に行ってるね」
そう告げてミリアとスノゥが通路を通り過ぎる。
二体の機晶姫はそちらに視線を送ることすらない。
「皆さんは下がるのです」
椿 更紗(つばき・さらさ)はそう言うと二体の機晶姫に向かって雷を放つ。
彼女の攻撃に合わせて及川 翠(おいかわ・みどり) が動いた。
特戦隊を前面に配置し、光の刃をいくつも連ねて解き放った。盾の機晶姫が攻撃を防ぐ。そこへ緋王らが追撃を行うが数刻前とは違い動きにキレがなかった。疲労が蓄積しているのだろう。
「ったく……」
それは誰の呟きか、目の前で交互に入れ替わり攻撃と防御を繰り返す機晶姫の動きは数刻前から変わりはない。変わったとすれば四本の剣のうち一本は砕けてなくなったところだろうか。
「……やっぱり、たたかうしかないのかなぁ?」
「とりあえず、機晶姫さんを止めるのです!」
及川の言葉に椿は答えるが、その表情は少し硬かった。
(とは言ったものの、戦う以外は無さそうなのです……)
彼女の瞳には臨戦態勢で待ち構える二体の機晶姫の姿が映っている。
「そうだね。止めないと何が原因でこうなったのかもわからないから対策も出来ないよ」
そう言いながら姿を現したのは高崎 朋美(たかさき・ともみ)だ。
彼女の傍にはウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)と高崎 トメ(たかさき・とめ)らの姿もあった。
「複数の相手は、各個撃破が基本どす。むこうさんにも、それをされんように、こっちは気合い引き締めて連携きっちりでいきましょか」
「それが簡単にできりゃあ苦労しねえんだけどな」
ウルスラーディがため息を吐く。
辺りを見回し、機晶姫と戦っていた人物たちを見やる。
ほとんどの人に疲れが見えるのが気がかりであった。
「朋美はあそこに落ちてはります武器調べてくれなはれ」
トメの示した先にはネームレスが砕いた剣の残骸があった。
「迂闊に動いては危なかろう。我らが援護しよう」
そう言い、近づいてきたのはセドナとリオナだ。
彼女たちは朋美を守るように左右に立ち並んだ。
「それじゃあ、あたしらは盾の機晶姫を相手にしようか」
「私も手伝うよ!」
緋王らと及川たちが行動を開始した。
彼女たちが動き出すのに合わせてウルスラーディが剣の機晶姫に銃を向ける。
「やれやれ、だいぶ疲れてきてるんだが……本当にとんでもないことに巻き込まれたもんだな」
「まだ頑張れますよ――疲れてますけど」
匿名と結崎がそれぞれ言った。
大谷地も負けじと彼らと行動を共にする。
彼らが剣の機晶姫と接敵するのを見て、ウルスラーディは照準を合わせた。
「俺の力が及ぶかは疑問だが……」
言い、指先を曲げる。発砲音が聞こえ、銃弾が放たれた。
「やつらを分ける手伝いくらいなら余裕だぜ」
盾の機晶姫と剣の機晶姫との距離がだいぶ開いたのを確認するとトメは口を開いた。
「ほな、あとはお任せしましたえ」
彼女の後方から幾人かの影が通路へ躍り出た。
「剣の機晶姫は私たちが――」
「た、盾の機晶姫は私たちが――」
現れたのは若い女性たちだ。
彼女たちは声をそろえて告げた。
「相手をします!」
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