|
|
リアクション
何人目かの知り合いの頭を銃で撃ち抜いた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、中断された思考を再開した。
確認のために声に出してみる。
「この変な廃墟の世界はたぶん夢だ。何故なら、今撃ったのは昔殺した敵だからだ。あいつが俺の夢だとしても、この廃墟は違う。となると……こんな夢を見ている誰かさんを見つけないとな。おおかた、俺達みたく初日の出を見に来たやつだろう。運のねぇことで……俺もか」
恭也は自嘲気味に笑うと魔銃オルトロスをホルダーに戻し、散策を始めようとした。
曲がり角にさしかかった時、ぎゃあぎゃあと騒ぐ声が接近してきた。
何事かと角を覗いた時、声の主は思ったより足が早かったようで、見事に恭也と衝突した。
勢いの分、恭也のほうが弾き飛ばされたが、ぶつかってきたほうも向こうに転がってうめき声をあげている。
「イテテ……何だぁ? 誰だ、おまえ」
銃を抜きそうになった恭也を止めたのは、ロレンツォの陽気な声だった。
「待つネ! 私、敵と違うネ! 少し落ち着くヨ」
「ぶつかっといて何を言う……あ、見たことあるな、おまえの顔」
「シズルさんと一緒に山登りしてたヨ。こっちは武尊。今、ブリーフに追われて大変なのヨ」
「……は?」
「う……イテテッ。ブリーフ軍団は……ありゃ、いねぇ?」
鼻をぶつけたのか、顔を押さえながら起き上った武尊は、辺りをキョロキョロと見回した。
そこには、さんざん自分を追いかけて恐怖のどん底に突き落としたブリーフ軍団はいない。
「よくわからんが、わかるのはおまえが夢から覚めたってことだな」
「夢……そうか、あれは夢だったのか。良かったー!」
心の底から安堵する武尊とは対照的に、ロレンツォはちょっと残念そうだ。
「落ち着いたか? なら、俺の考えを聞いて意見を聞かせてくれ」
恭也は先ほどの考えを二人に話した。
武尊はよくわかっていない様子だったが、ロレンツォはおおむね同意した。
「夢の主を見つけるのは賛成ネ。武尊、大丈夫ヨ。明けない夜がないように、覚めない夢もない。冷めたコーヒーは不味いだけネ」
「ははっ、確かにいつまでもここにいるのはうまくねぇな」
恭也が笑った。
と、その時、伝説上の生き物のような姿形のものが二体、三人の頭上から降ってきた。
気づいた時には三人は暴れる二体にめちゃくちゃにされていた。
「今度は何だ!?」
恭也が怒鳴ったのに応えるように、大百足が降ってきてズシンと地面に衝突した。
これも夢かと思ったが、
「すみません、怪我はありませんか!?」
という東 朱鷺(あずま・とき)の声で現実だとわかった。
朱鷺の後ろからは加能 シズル(かのう・しずる)とレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)の姿もある。
朱鷺は恭也達に怪我がないのを見ると、少し離れたところで団子のようになって暴れている三体の生き物へ声を張り上げた。
「黒麒麟、白澤、大百足! 言うことを聞きなさい!」
この三体は朱鷺が所有する試作型式神の壱式から参式である。
ここに来たとたん、何故かこの三体だけ言うことを聞かなくなってしまったのだ。
「ずっとあの調子なの。少し前は私達も攻撃されて大変だったのよ」
ため息混じりにシズルが言う。
恭也は苦笑した。
「困ったやつらだな。ま、合流できてよかったぜ」
「ええ。朱鷺が正気に戻してくれたの。彼女がいなかったら、私もレティーシアもまだあの酷い夢の中をさまよっていたはず──危ない、伏せて!」
ハッとしたシズルの声に、彼女達は素早く地に伏せた。
体のすれすれを大百足が飛んでいく。
恭也がぼやいた。
「何とかなんねぇのかあれは」
「ごめんなさい。先ほどから大人しくさせようと手を尽くしているのですが……」
「まあいいや。夢の主を探すぞ」
「キミ達も人探しを? 朱鷺も人を探していたのです。この町の長を」
「長か。なるほどな、もしいたら夢の主のことがわかるかもしれねぇな」
恭也が頷くと、朱鷺は視線を通路の向こう、町の斜面になっているほうに移した。
そこでは黒麒麟と白澤が絶妙のコンビネーションで町を破壊している。
「黒麒麟と白澤はさすがですね。対して大百足はあの巨大さが少々厄介なものになっています……」
「朱鷺、感心してる場合じゃないわ。止めることができないなら、早くここを出る方法を探しましょう」
シズルの呼びかけに朱鷺はハッすると、少し恥ずかしそうに笑った。
「そうですね。シズルの言う通りです。恭也達はどうしますか? 全員で動きますか?」
「それがいいだろ。途中でまた誰か拾うかもな」
恭也が答え、六人になった彼らはどこにいるかまだ手がかりのない人物を探すのだった。
途中、三体の試作型式神に襲われたりしながら。