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第3章 青いお餅にご用心

「ひ、ひゃぁ……」
 青い餅が、彩光 美紀(あやみつ・みき)に纏わりつく。
 それは美紀が餅をついていた時の出来事だった。
「すべての道は、修行に通じます!」
 美紀の杵さばきは無駄なく美しく、一連の所作はまるで舞でも舞っているかのように優雅。
 彼女に言わせれば、これも剣の修行のひとつらしい。
(美紀……あなたは、確実に成長していますね)
 餅を返しながらそれを見守っているのはセラフィー・ライト(せらふぃー・らいと)
 弾む彼女の身体を見ていると、先日の温泉の一件を思い出す。
 あの時見た、彼女の身体。
 あれを、もう一度……いやいやいや。
 ぶんぶんと首を振るセラフィー。
 だから彼女は遅れた。
 気づくのに。
「きゃぁあああ!」
 美紀の悲鳴。
 青い餅が、彼女の足から太腿へと這い上がるのを、セラフィーは見た。
 ぬめぬめと、まるで両生類のように照り光りながら、青い餅は美紀に巻き付いていく。
「はっ!」
 一瞬、その光景から目が離せなかった。
 青い餅に締め付けられる美紀の身体、足、それらすべてが艶めかしく……
「あ、こ、こら! 美紀から離れなさいー!」
 瞬時に自分を取り戻すと、セラフィーは青い餅に飛び掛かっていった。

「きゃっ」
 青い餅は、フレンディスにもその魔の手を伸ばそうとしてきた。
「フレイに手を出すんじゃ、ねぇええええっ!」
 それを即座に気合で跳ね飛ばすベルク。
(なるほど……真に大切なものを助けるのなら、あれ位即座に反応しなくてはならないのですね)
 なんとか美紀を助けたセラフィーは、思わずベルクを観察モード。
 当のベルクは、青い餅を掴むとつい先程までもち米を蒸していたかまどの中に放り込む。
 じゅううっ。
 スライムだけが蒸発し、黒焦げになった。
「これで良し……っと。あとは」
 ベルクの瞳が怪しく光る。
 そこにあるのは、怒りの色。
「まぁああああた、やりやがったなぁ」
 びしりと指さ咲きは、ハデスと発明品。
「ふむ。待つのだ。問題になったスライム餅も退治され、大した被害にはならなかったではないか」
「だからって――」
 ハデスに詰め寄るベルクの耳に、微かな悲鳴が聞こえてきた。
「また被害者か!? ハデス、お前なぁ……」
「いや、俺たちの発明品はここにあるだけだ」
「ってことは……何だ!?」