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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同日 某時刻 シャーレット宅
 
「……あたしたちが追っているものは……陽炎か逃げ水なのか……」
 いつものように盗撮と盗聴をチェックした後、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は『偽りの大敵事件』について話し合っていた。
 最初に口を開いたセレンは、そのまま続けて語り続ける。
「統一規格のイコンを開発阻止を望む理由としては、統一規格イコンが誕生すれば、それによって利益を得る者もいれば、不利益を被る者も当然いる……規格が不統一であれば、当然同じパーツでも複数の軍需企業が関与する余地があるわけだし、九校連の中にはそうした企業との間に『不適切な関係』を持った者も少なくないはずよ」
「なるほど。それで?」
「でも、単なる経済的な理由なら、一時的な損はともかく、長期で見れば反主流派にとっても統一規格の方が利益になる。企業側にしてもそれは道理だろう。それでもなお、阻止しようとしたということは、当然、それ以外の理由からだと、思う……」
「それ以外の理由?」
「うん。『その理由とは何か?』っていう辺りのことを中心に今回は掘り下げてみたの。今まで自分たちが入手できた情報と、他の人が集めた情報を並べてさらに精査したわ」
「なるほど。反主流派が学生サークルになぜ技術供与をしたのか、そのあたりについての調査を続行したわけね。で、どうだった?」
 セレアナに問いかけれらるも、セレンフィリティは難しい顔だ。
「でも、なかなか決め手になるような情報は集まらないのよ。理由をいくつか絞り込むにしても推論にしかならないし。少なくとも、今の段階では調査してみても、『九校連はそのようなイコンを開発する為に学生サークルを利用した、などという事実はない』という情報が得られるだけだしね。もしかすると……」
「もしかすると?」
「もしかすると……だけど、あたしたちは何かに騙されているのかもれしれない。あるいは、何かを錯覚しているのかも。私達の見方が本当に正しいのか、それが気になってもいるのよ」
 不安そうな顔をセレンフィリティを安心させるように、セレアナは穏やかに微笑んでみせる。
「まずは一度ゆっくり考えてみましょ。更に奥へと踏み込むのはそれからでも遅くないわ。じゃ、私の調査してきたことも聞いてくれる?」
「サークルの調査の過程で浮かび上がったメンバーと思しき人物の周辺調査……だっけ?」
「ええ。情報があまりなくてちょっと大変だったけど、とあるサークルメンバー一人の情報を掴めたわ」
 それに驚きと同時に明るい顔をみせるセレンフィリティ。
「金団長と同じく資産家の家の生まれでいつかは団長のような地位を手にすると息巻いていた学生がいたって言ったでしょ?」
「ええ。まさかその学生についてわかったことが?」
 セレンフィリティに向けて頷いてみせるセレアナ。
「名前は劉銀飛(リュウ・インフェイ)。名前が名前だけに、それと引っかけて団長と比較されることも割とあったみたいで、それも対抗意識になっていたらしいわね。といっても――」
「といっても? 何かあるの?」
「でも、銀飛は暗殺や失脚などの手は一切考えずに、『あくまで正当な方法でのし上がって、正々堂々と団長を超えてこそ意味がある』とも息巻いていたらしいから。それに、いかに家柄があるとはいえ、まだ一介の学生である彼は団長にしてみれば目障りでもなんでもない存在だもの、むしろ、気骨のある学生があるのは良いことだって、どこか微笑ましく思っていた節すらあるみたいね」
「なるほど。それで。その、インフェイは今どこにいるの?」
 セレンフィリティが問いかけると、セレアナは無表情になって答えた。
「いないわ。もう――例の学生サークルが試作したっていうイコンに乗って暴走事件を起こしたパイロット。それが彼なのよ。そして、知っての通り、暴走事件を起こした機体は大破して、パイロットも死亡しているわ」
 重々しい表情になってセレンフィリティも頷く。
「わかったわ。まずは得られたとっかかり、そのインフェイについて調べてみましょう。それと――」
 そこで一拍置いてからセレンフィリティは言う。
「真相に踏み込んでいく以上、どうしようもなくヤバくなった時のことも考えて、備えておかないとね」
 その言葉に、二人は頷き合った。