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空京警察特殊9課――解禁、機晶合体!――

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空京警察特殊9課――解禁、機晶合体!――

リアクション

 ティセラが空京警察との話を終えて、了解を得たと皆に伝えた。
 それを聞いた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が、刀形態となった宇都宮 義弘(うつのみや・よしひろ)を携えて上がっていく。すると、他の階よりも天井が高く、そして逃げ遅れた人の多いフロアがあった。
 空京警察の者がひとりで避難誘導をしているが、どう見ても混乱を抑えきれていない様子である。
 少し迷い、先へ進もうと足を伸ばしたその時、上から爆発音とは違う嫌な音が聞こえてきた。

「もし、暴走したエメネアが近くにいるならば、ここに居る買い物客たちをも巻き込んでしまう恐れがあるわね。そうなったら全員を守れる自信は無いし、何より、人を巻き込むことを悲しむでしょうね」
「人を助けるって、そういうことなんだね」

 それはきっと誰にとっても不幸しかもたらさない……ならば、と祥子は行動に移した。
 乱れている人の波に身体を滑り込ませる

「押さない、駆けない、喋らない! 慌てなければ全員助かるわ!」

 大きな声を上げた祥子は、義弘を頭上で振り回しながら、避難が遅れている人たちを非常口へ誘導する。
 抜き身の刀を見てぎょっとする者も居たが、それが功を奏したのか先ほどよりもスムーズに流れていく。
 やがて人気のなくなったフロア中央の天井が突然、崩れ落ちた。
 破片と一緒に落ちてきたのは、先行していたサビクと良雄。
 そして、うねうねした光を放つエメネアだった。

「ギリギリセーフってとこかしら。『ティセラ、エメネアを見つけたわ。二十五階フロアの中央よ』」

 祥子から義弘経由のテレパシーを受け取ったティセラは、エメネアの場所を皆に伝えると、停止したエスカレーターを飛ぶように駆け上がった。空京警察が入ったことで買い物客たちの避難経路は非常口に纏められ、降りてくる買い物客たちとぶつかる心配が無い。
 避難を手伝っていた者たちも、手を止めてティセラの後を追いかける。

 二十五階に着いたティセラたちが見たものは、泣いて謝りながら悲鳴をあげるエメネアと、放出される光を何とか凌いでいる鹿次郎と祥子、サビク、良雄の姿だった。

「な、なんじゃこりゃぁ!?」
「覚醒光条兵器、ですわ。幸いにして意識はあるようですが、制御が出来ていない様子です。何とか抑えないと……このままではエメネアの身体と建物が持ちませんわ」

 エメネアの姿を見たシリウスの驚きの声に、ティセラが目を細め、武器を構えながら応えた。

「な、なんか凄い現場を見ちゃった感じだね、エイカ」
「なに言ってるの、弾! これはチャンスなのよ。ティセラさんの役に立てる良い機会だわ! エメネアちゃんの囮になって、立派に縛られるのよ!」

 避難の列に混ざり、その光景を見ていた風馬 弾(ふうま・だん)エイカ・ハーヴェル(えいか・はーゔぇる)が、声を潜めて会話をしていた。

「縛られて役に立つってなんか矛盾してない? あ、さてはまた変な本を読んだんでしょ!?」
「え、そんなことないわよ?」

 弾のツッコミにエイカの視線が宙を泳ぐ。
 少年はがっくりと肩を落としてため息をつくと、顔を上げて武器を取り出した。

「お、やる気になったね。さすが男の子」
「見てしまった以上、ほおっておけないし……。それに、ティセラさんと共闘できるなら、ノエルへの良い土産話になるからね」

 うんうんと頷いたエリカは、魔道書形態になると弾のポケットへ潜り込んだ。

「あたしはここから指示するから、しっかり活躍してね!」
「う、うん、頑張るよ!」

 列から飛び出した弾は、そのままティセラの横まで走った。

「微力ながら、暴走を止めるためのお手伝いをさせていただきます」
「彼女を止めるのに協力してくださるのですね、助かりますわ。ありがとう」

■■■

 レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)クレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)は、うーんと声に出しながら考えていた。
 買い物中に起きた謎の爆発音。それの正体を見たいと思ったのだが、上階から降りてくる避難の波に押されて、上れなかったのである。
 そうこうしているうちに空京警察がやってきて、降りる以外の道しかなくなってしまった。

「レオーナ様、ここは諦めて家に戻るのが賢明だと思います」
「うう、なーんか気になるのよね。特にさっきからずっと聞こえてくる変な音。絶対に何か面白そうなことが起きているに違いないわ!」

 悔しそうに言ったレオーナは、あごに手を当てて唸りつづけていた。どうしても降りる気にならず、未練がましく先ほど使おうとして空京警察の人に怒られたエスカレーターをじっと見つめている。すると、そのエスカレータを矢のような速さで駆け上がる姿が見えた。
 横で一緒に見ていたクレアが首をかしげる。

「空京警察の方でしょうか。随分と急いでいるご様子でしたが」
「あ、あれは……間違いないわ! ティセラお姉さまよ〜〜」

 レオーナは拳を前で握り、嬉しさを抑えきれない様子だ。
 はて? と再びクレアが首をかしげる。どこかで聞いた名前だったと記憶をたどるが、答えはすぐに出てきた。

「昨夜、熟睡したレオーナ様が、枕を抱きしめて叫んでいた名前ですね」
「えっ? 私、寝言を言ってた? は、はずかしいっ。でも、これは運命、そう……運命の出会い! 覚えてないけどきっと正夢だったのよ。そうと決まれば行くしかないよね!」
「えっ?」
「待っててね、ティセラお姉さま! すぐに向かいます!」

 我慢できなくなったレオーネは、叫ぶと同時に走り出していた。
 そんな彼女の行動に慣れてきたのを自覚しながら、クレアは空飛ぶ箒に乗って追いかけていくのだった。