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空京警察特殊9課――解禁、機晶合体!――

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空京警察特殊9課――解禁、機晶合体!――

リアクション

 それは二機のアンズーだった。
 機晶重機に気をとられていたクーペリアンの背後をとり、奇襲をかけてきたのである。
 アンズーは煙の出るクーペリアンの背中からドリルを抜くと、邪魔だと言わんばかりに蹴とばした。
 合体が解け、機晶姫の姿に戻ったエレーネたちが地面を転がる。
 そのまま踏みつぶそうとするアンズーに、背後から声がかけられた。

「ちょいと待ちな」

 不意の声にアンズーが振り向くと、片目の男がギフトを構えていた。ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)だ。
 那由他は敵の気が逸れた一瞬の隙に、二十二号を引っ張って退避する。
 ザーフィアとエレーネもごろごろと転がり、範囲外へ逃れていた。
 邪魔をしたのが生身の人間とわかり、興味を失ったアンズーが再び機晶姫を追いかけようと旋回する。
 だが、もう一機のイコンがローグに襲い掛かっていた。ゴルフスイングのような動きで左腕を振りぬく。
 手ごたえが無い、と空振りしたアンズーの足元を、トラックが縫うように走っていた。見た目以上の素早さで足元を抜けていく。アンズーが体勢を立て直し、踏みつぶそうとしたときには、すでに攻撃の届かない場所まで離れていた。
 運転していた夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は、トラックからローグを降ろすと、窓から上半身を乗り出した。

「おう、クーペリアンの用の武器をもってきたぜ! 9課にはまだ無かったんで、他のとこから借りてきた」

 そう言ってトラックの荷台の蓋を開けると、そこには巨大なスパナが収められていた。
 LかLLサイズ用のイコンに使うスパナなのだろう。武器としては十分な大きさだった。

「当たったら痛いだろうな」
「い、いや……たぶん痛いじゃすまないと思うぜ……」

 荷台を見たローグの感想に、甚五郎が突っ込む。
 そこへ、破砕音が響いた。
 二機のアンズーは悲鳴をあげて逃げ惑う人々に興味を失ったのか、それともそれが本来の目的なのか、ビル周りの施設を容赦なく破壊している。

「エレーネ、合体要員も連れてきている。もう一度合体してこいつらを倒してくれ」

 甚五郎の言葉に、荷台の隙間から二人の機晶姫、ナターリア・フルエアーズ(なたーりあ・ふるえあーず)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が顔を出した。

「那由他は二十二号を退避させるから、あとは頼むのだよ」

 二十二号を引きずる那由他に、ナターリアとブリジットは頷くと、逃げてくるエレーネたちと合流した。

「それでは再度変身……ではなく、合体をします。皆さんよろしいですか?」

 エレーネの言葉に威勢よく応える機晶姫たち。
 あれ、今何か変な単語が聞こえたような、とローグが訝しげる。しかし肝心の合体する機晶姫が気にしている様子はない。

「やっちゃいますよ……合体!」

 エレーネの合図で機晶姫たちが宙に舞う。
 ナターリアは胴、ブリジットが脚、ザーフィアは腕、そしてエレーネが頭として、ひとつになる。

「機晶合体! クーペリアン!」

 超合体を完了した機晶姫たちが巨大なエレーネとなった。
 空中で合体ポーズを決めると、音を立てて着地する。
 クーペリアンは足元のトラックからスパナを掴むと、暴れまわるイコンへと駆け出した。

『よくも罪なき人々を恐怖に陥れましたね。許せません』

 機晶姫の気持ちが一体となり、脚を担当するブリジットのスキルが発動した。疾風のごとき速さでアンズーへ接近すると、振り上げたスパナを全力で叩きつけた。
 大質量による衝撃は装甲を破壊し、動力伝達部を断ち切り、フレームの内部まで歪ませる。
 深く埋まったスパナを強引に抜くと、アンズーは崩れて動かなくなった。
 そして、もう一機のアンズーにゆっくりと向き直る。

『聞こえますか? この悲鳴、この泣き声が。こんな奴らの為に、誰かの涙は見たくありません! だから見てて下さい、私の必殺技!』

 アンズー突き出したドリルを、巨大なスパナを振り上げてはじく。
 そのまま、

『クーペリアン・ダイナミック!』

 振り上げたスパナを全力で叩きつけた。
 無残な形になったアンズーが煙を吹いて機能を停止する。
 二機のイコンを倒したクーペリアンに、再び歓声が沸き起こった。

「クーペリアン! クーペリアン!」
「なあ、あれって一機目を倒したときとどう違うの?」
「名前が付いているか付いていないか、かな?」

 甚五郎の適当な答えに、なるほど、と納得するローグ。
 クーペリアンが甚五郎の方をちらりと見た気がして、慌てて視線をそらす。

「クーペリアンね……意外とやるじゃないの」

 本部でオペレーターをしているアリーセが、報告を受けてつぶやく。
 9課の、そして機晶合体に懐疑的だった彼女の口元には、小さな笑みが浮かんでいた。