リアクション
ESCに程近い公園。ホログラム噴水を眺めながら、新風 燕馬(にいかぜ・えんま)がボーとしていた。
膝にはローザ・シェーントイフェル(ろーざ・しぇーんといふぇる)が寝ている。
正確には寝ているのではなく意識がないだけと言うべきか。式神化した【デジタルビデオカメラ】意識を投射しているため、彼女の精神はここにはない。
燕馬は無防備な彼女の見張り役と言ったところだ。
とは言え、暇なので《精神感応》で『αネット』の囁きを聞いる。
迷子なう
迷子捜索中なう
AirPADの使い方教えて
金が無い金策求む
アングラマジやばい
アイエエ! ニンジャ!?
あさにゃんぺろぺろ
などのカオスに飛び交う囁きを聞いて呆けていると、誰かが声を掛けてきた。
「やあ、こんなトコロで会えるなんて思ってもいなかったよ。また外世界とゲートがつながったのかい? 以前は大分お世話になったね」
寝ぼけ眼な燕馬の顔がハッとする。話しかけてきた優男の顔を見てそれが本当に自分の知る誰なのかを再確認し、彼の名前を呟いた。
「エルメリッヒ・セアヌビス博士――!」
「そうだよ。キミは衛生兵メディックをしてた燕馬くんだっけ? 久しぶだね」
「博士……あんたがなぜここに……」
「部隊が壊滅してからこの近くで働いているんだよ。『エスケープ』って会社なんだけどね」
「ESC(エスケープ)、エレハイム・サイエンス社のことか……」
「そうそう。あ? もしかして今僕の会社を調べてたりするのかな? 危ないからやめたほうがいい。一部区画は僕もどうなっているかしらないし。Need to knowの原則は守ったほうが身のためだよ」
エルメリッヒの忠告はありがたい。
だが、もう遅い。
すでに、サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が内部潜入しているのだから