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リアクション
「……お腹が……すきました」
ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)の腹がなる。列車でアレだけ食べたというのに、半日過ぎたらこの有様だ。うねりつながる配管が太いパスタやバームクーヘンの塊に見えて仕方ない。
「我慢しろよミスト。食べるのは情報を集めてからだって」
緋王 輝夜(ひおう・かぐや)がそう言うと、
「……そうですか」
とショボンとするミストだった。空腹で大分やる気が無い。
「情報って言ったらやっぱ掃き溜めだと思ったのに。無茶苦茶道が入り組んでいてわけがわかんねー」
なんとなしに入り込んだアンダーグラウンドの迷路に迷っていた二人。脱出する気になれば垂直方向に登って上層へと抜ければいいと思っているので焦ってはいない。お腹は空いているけど。
「とにかく情報情報。適当に誰か捕まえて拷……尋問しようじゃん?」
「……そうですか」
「やる気出せよ……お、あそこに誰かいるみたいだから聞きに行こうぜ」
「なんでこうなるんですかね……」
メルクーリオを背中にかかえて司が愚痴る。
「とりあえず全部ツカサのせいよ」
因果応報と言いたげなシオン。大体こいつのせいである。
「けどこれはどういった状況なんですか?」
アリサは全然動じていなかった。というか、事態をわかっていない。
彼らは現在浮浪者の人買いグループに捕まっていた。立ち入り禁止区域の他の浮浪者が誰も入ってこないような場所にて、買い手が来るのを待たされていた。
《精神感応》での情報だとノース側の企業が自分たちを買いに来るとの事だ。ここでは金のない浮浪者が別の浮浪者を売って金を得ているのかもしれない。
さて、人数はそれほどないにしても使えないのが二人もいて、どう立ち回るかだ。
「あーすみませーん。ちょっと道ききたいんだけどさー」
何気なしに現れた輝夜に、人買いたちが身構える。こんなトコロに人が入ってくるとは思っていなかったからだ。輝夜たちから言わせれば『立ち入り禁止=入れ』という意味でしかない。
「あれ? アリサじゃん。何やってるんだ」
「捕まっているらしいです」
「捕まっているのに余裕じゃん」
「おっと、お譲ちゃんも仲間か、ならいうこと聞いてくれないかな。こいつもどうなるかわかんないしな」
後ろでネームレスもやる気なく捕まっていた。首元にナイフが当てられてる。
「……だそうです」
「何やってんだ……まあいいか。それでこうい時にはどうすればいいんだっけ?」
どうしようかと輝夜は悩み始めた。相手からしてみれば「お前もおとなしく捕まれ」ということになるのだが。そんなこと思いつかない。
「馬鹿だねおまえ。ここは『れっつちからずく』じゃない」
緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が荒事の匂いを嗅ぎつけ現れた。
「万が一死んでなかったら、尋問して詰問して禅問して拷問です」
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は相手が死ななかった時のことも考慮していた。していることが物騒なのはどちらも同じだった。
「よし、それで行こう」
「あたしもそれでいいかー」
輝夜もなんとなく賛成。全員ぶちのめして、残ったやつにいろいろ訊くことにした。
「まて、お前らいうことを聞かないなら、こいつの首を掻っ切るぞ!」
ネームレスを人質に動きを封じようとする。だが――
「ムグムグムグ……せらむぃっく……ムグムグムグ」
ナイフの刃先がネームレスの口の中で踊っていた。
「ク、クッテル……! こいつナイフを食ってやがる……ッ!!」
「こいつはヤベェよ! エモノを、エモノをぉ!!」
と動揺する人買いたち。それぞれのエモノを出そうとしていると。
「ぅぅぅぁああああああああああ――!」
上から何かが落ちてくる。
「兄貴! 空か男が……ッ!」
女の子かと思ったかい? 残念! 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)でした!
飛行石とか持っているわけもないので、自由落下の加速度そのままに、人買いの兄貴の上に落ちる。何事も頭上には注意しないとこうなります。
「イテテテ……異世界まで来たのに落ちるのかよ。どこだここは……アンダーグラウンドか?」
イグザクトリィ。
「マジで? ラッキだぜ! っておまえは!?」
同じ学園の透乃に目が行く。
「やっほーオチラギちゃん。一緒に暴れようぜー。サンドバックはこいつらだよー」
磯野野球しようぜ的な乗りで遊びに誘うのだった。
「おう、なんか知らないがいいぜー」
恭也が落ちてきたせいで、人買いの配置がばらばらになり、アリサからも離れてしまった。こうなってはもう彼はボコられるしかない。
「危ないからアリサさんは離れてくださーい」
陽子がアリサを奥に誘導する。
「そんじゃ、みんなぶっ飛ばして」
と輝夜。
「ぶっ倒して」
と恭也。
「ぶっ殺して」
と透乃。
「しまおうじゃん!」「しまおうぜ!」「しまおっか!」
レッツ☆ボコスカラッシュタイム
「あんまりだぁ――――!!!」