First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last
リアクション
8.こいつまでいるのかよ……と、お前は言う
【グリーク】
――兵器企業
大きな工場を併設したビルがある。大理石に掘られた社名には
柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が会社を訪ねる。受付の名札にはマリー・セシルとある。学生風の二人に応対する。
「なにか御用ですか?」
「社長出してもらえない?」
そこそこ美人の顔が固まる。
「えっと……どのようなご用件で?」
「社長出してもらえない? 異世界からきたんだって言ってくれないかな?」
繰り返し言う圭輔に向けられる視線が、「こいつ何言っているの?」と痛々しい。でもそこは受付。真摯に応対するのがマナーというもの。
「少々、ロビーでお待ちください……後ほどお伺いします」
と一旦保留の回答でこの場を切り抜ける。つまりは対応に困ったというわけだ。待たされる事になったが、桂輔は素直に従う。これで社長に会えれば万々歳だ。
「で、うまくいきそうですか?」
とアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)が企業パンフレットを読みながら訊く。
「待つように言われたけどどうだろ」
「ふうん……」
パンフレットに書かれている会社概要。
軍事兵器及び電子機器開発企業ラインダート社
通称RD社
本社社長、代表取締役、セラノ・ラインダート
素粒子砲から精密機器まであなたの暮らしに新しいインスピレーションをお届け。よりよい暮らしとより良い兵器運用をお約束します。
「物騒なのか、庶民的なのかよくわかない会社ですね」
開発商品にはロボット用パルスライフルから、【AirPAD】とかいう携帯端末まで幅が広い。中でも目を引いたのは【近距離移動用空間転送装置】と言うやつだ。
「指定の距離を一瞬で移動できる装置。これの応用で元の世界に戻れるかもな」
「それもここの社長に会えればの話にですね」
「いや残念だが、社長には会えないぞ」
白衣を来た男がニヤニヤと近づいてきた。
「久々に大将から連絡があったと思ったら、異星人のお出ましではないか! お前たちもその仲間か?」
「あんたは?」
桂輔が誰何すると白衣は答えた。
「オレか? オレは天 才 マッド サイエンツゥイスト! キョウマ・ホルスス……ダぁ!」
いちいちポーズを取るところがどっかの誰かに似ているが気にしてはならない。
ポカーンとする二人に咳払いし、キョウマは真面目に話し始める。
「お前たちのことはロンバートの大将から聞いている。セラノには会えないがオレが話を聞いてやる」
「よろしくのである」
とマネキ・ング(まねき・んぐ)が割って入り、桂輔が驚く。
「なんだあんたは!?」
「失礼であるな……先に我が軍に手回ししておいたカラのだよ」
「嘘クセェ……」
パートナーのセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)も信じてない。
「まあいい、そこのマネキンもだが男もついてくるがいい。詳しい話を部所で聞いてやる」
そう言って先を行くキョウマはビル内部移動用の転移装置を潜る。4人も後に続いた。
「ふふふ……これでノースをアワビ養殖場にし、世界を征服する我が目的に一歩近づいたな」
などと不敵な呟きをするマネキにセリスは
「またアワビが絡んでいるのか……異世界に飛ばされたというのに」
「それもまた計画通り」
「絶対嘘だ……」
セリスとマネキの会話にキョウマが口を挟む。
「アワビで世界征服とはなかなかユニークだ。だが、養殖はムリだ。
ノース側の北海岸は気候としては常時温暖でありアワビの生育には向いているが、問題は海流だ。自然養殖仕様にも幼体は全部異次元の裂け目に流されてしまうだろう」
セリスが尋ねる。
「異次元の裂け目?」
「お前たちがこの世界から帰った後、この世界に出来た空間の裂け目だ。そこに入ったものはなんでも消えてしまう。たまにそこから出てくるものもあるが、オレらはそれを『キンヌガガプ』と呼んでいる」
キョウマの研究所内についた後、いくつかのことを聞かされた。
重層世界の崩壊後、【第三世界】のゲートも消え、世界もなくなるはずだった。
しかし、なぜか世界は完全には消滅することはなく、オリュンズ地方を含むグリーク国とノース王国とその周辺諸国が残った。残った陸地と海は異次元の裂け目である『キンヌガガプ』に覆われ、それ以上先には行くことができないという。
『キンヌガガプ』は世界中にあり、この都市のアンダーグラウンドにも小規模の裂け目ができているという。
さて、そのアンダーグラウンドでは……
First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last