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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

リアクション



7.まったくもって何もかもが懐かしい……

【グリーク】
――軍事飛行場


<<こちら、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)、ポイントアルファに潜入成功。これよりスニーキングミッションを開始する>>
<<こちら、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)、感度良好。引き続き潜入調査を続行せよ。以上>>
 と二人はスネークごっこ――ではなく、軍事飛行場の施設潜入をしていた。
 ローザマリアは変装して潜入後、トイレで女性整備兵を《ヒプノシス》により昏倒させ、身ぐるみを剥いだ。眠っている女性は清掃用具入れに詰めておく。
 通信は異世界とあって携帯もHC類も使えないため、エシクが《先端テクノロジー》と《機晶技術》の応用で、それらを近距離無線機に改造して連絡を取っている。
 トイレから出て、施設内を歩きまわる。
 内部のセキュリティーはそれほど高くはない。しかし、一部区画に入るには自動生体認識をクリアする必要があるらしく、迂闊にはそちらへ近づけない。だが、飛行機整備場及び整備ハンガーへの出入りにはセキュリティロックはなく、難なく入り込めた。
 隣接の休憩スペースに座り、ベンチ下に盗聴器を仕掛ける。お偉いさんの声が聞けないなら、一般兵たちのを聞くまで。
 怪しまれぬよう、整備服に入っていた小銭で一杯のジュースを買って休憩しているふりをした後、整備帽を深くかぶり、整備ハンガーに降りる。
 ハンガーには戦闘機……いや、可変型のロボットがあった。
 《ソートグラフィー》で機体を記録する。
「この形状……ってフィーニクス?」
 ローザマリアが脳裏で記憶を参照していると……

””緊急事態発生、施設内に《侵入者》あり、《侵入者》あり””

 アラートが鳴り響く。
「バレた!?」
 ローザマリアが焦る。外見張りのエシクからも
<<ローザ、何があったの!?>>
<<潜入がバレたみたい! ……まって、アラートが何か言っている>>
 アラートは続けてこう言っていたい。

””戦闘要員は至急第三滑走路に迎え、繰り返す、第三滑走路に迎え””

<<どうやら私達以外にも蛇がいたみたい>>


 さて、問題の滑走路だが。
「ふ、ふふ、フハハハ、フハハハハハハハハァ!」
 珍妙な高笑いが響いていた。
「ハハハハハハハぅぶふぇっ……ブフゥ……ゲホげほ……」
 むせた。
 というわけで、珍入者はドクター・ハデス(どくたー・はです)でした。高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)ミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)そして戦闘員を連れて正々堂々金網をぶち破って敷地内に入ってきた。
 本当は正面玄関から一人でアプローチしていたのだが、門兵に何度も追い返されてたため、強行した。「そのほうが悪らしい」というミネルヴァのてきとうな意見で。
 強行した結果、大量の銃口を向けられて今にもZAPられそうな状態なのだが、それでも笑いをやめない。
 彼は宣言する。
「フハハハ! 我は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! この世界を征服するため、貴様らと同盟を組みに来た!」

……

「なんか反応薄いですわね」
 とミネルヴァ
「どうやら……我らに臆しているのだろう。だが安心するがいい! 貴様らを悪いようにはしない! なにせDOUMEIするのだからな! そうだ、出てこい改造人間咲耶!」
「はいはいなんですか兄さん……」
 なんとなくやる気のない咲耶にお兄ちゃんが命令する。
「この国は、科学技術は相当に発展しているようだが、魔法についてはどうだ? おそらくないだろう。そこでだ! 咲耶、我らがオリュンポスの魔法技術を見せつけてやれ! 奴らが我らに屈するのは必然となる!」
「屈させてどうするんですか……もう、しょうがないですね。つかえばいいんでしょ」
 咲耶が詠唱を始める。上空の天候が変わり、雷雲が集積する。
「出よ、サンダーバード! ウェンディゴ!」
 《天のいかづち》に合わせて召喚獣二体を解放する。やる気のない割に演出にはこだわるのは流石兄妹といったところか。
 これには兵士たちも驚いたのか、更に増員、戦闘態勢。施設屋上にスナイパーも配置につく。攻撃動作を見せるということは、どう見たって敵対行動だ。
「ちょっとハデスさん大丈夫なんですの? このままだとわたくしクローンナンバーが増えそうですわよ!?」
「お、俺に言うな。そもそも少々誇大にアピールしろといったのはミネルヴァではないか!?」
 仲間割れを始める大幹部とスポンサー。同盟に至る前に、内部崩壊寸前である。
 そんな時――

「そうだな、せっかくだ。”また”同盟を組ませてもらおうか?」

 挙げられた手とともに銃口が一斉に上を向く。兵士が作った間から作業服の男が現れた。
「特異点発生の報告があったからまさかとは思ったが、やっぱり君たちだったか」
「お、お前は……いや、あなたは……」
 驚愕するハデスが彼の名を呼ぶ。
「……フィンクス・ロンバート大将」
 ロンバートは「元だ」と訂正し、仰々しくかつての同盟者を迎えた。

「ようこそ【ストレイド(道に迷ったもの)】たち。ここは君たちの言う、【第三世界】だ」


 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)がルイスの前に現れる。軍施設の斥候から戻り、報告する。
「どうだった?」
「戦闘機ほか通常火器類装備はあるものの、特別な兵器はありませんでした」
 ファンドラに続き刹那も告げる。
「どうやら空軍演習場を兼ねた、隣国の監視基地というところじゃ。それと、どうやら。わらわらのパラミタについて知っているらしく、協力関係を築けそうなのじゃ。すでに学生の数名が接触しておる」
「そうか……なら俺たちも正面から訪ねるとしよう。お前たちは引き続き調査を頼む」
 WLOも軍事飛行場へ向かう。二人は彼からか離れて次の調査場所へと向かった。