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リアクション
11.名前からすでにフラグ全開なんです。この子
【ノース】
――王国大使館
富永 佐那(とみなが・さな)は職員に問い詰めた。
「ですから、未だに滞っている難民政策について、近隣役所であるあなた達はどうしているのかと聞いているのです」
国境の街の大使館は役所も兼ねていた。
そもそも、この国境の街という両国の緩衝地帯という特性上、地権はノースにありながらも、グリーク国籍も多く、雑多な人種が寄せ集められているような区画になっている。おかしな話ではあるが、グリークに対して何倍も大きな領土を持つノースが、グリークよりも難民の受け入れ体制には難色を示している。まるで彼らを緩衝地帯に押し込めているかのようだ。
佐那はそこに何らかの国家的意図があるではと思う。
それはそれとして、ここにある情報を何か盗めないかと、新聞記者を装い適当な職員に言いがかりをつけていた。
「ストレートによろしいですのに。脅しにかかるなんて佐那さんはマフィアの血筋ですわね」
などと、後ろで呑気にロビー設置のお茶を啜るエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)。
とは言え、ここに何があるのだろうか?
「ここの偉い人呼んでくれませんか? そのへん詳しく聞きたいので」
職員はタジタジである。わけの分からない新聞記者にまくし立てられてどうしたら良いのかと困惑している。
そんな折、大使館に修道僧が入ってくる。アリスティアだ。
「ここの偉い人にお目通りしたいのですが、呼んでいただけませんか」
困惑する職員に追い打ち。内線端末で上に指示を仰ぐ。
「あら? あなたどこかでお会いしませんでしたか?」
佐那を見てアリスティアが尋ねる。
素性がバレるとまずいと思い、
「そうですか? 気のせいですよ」
とごまかす。同じ列車に乗っていたのは間違いなく、車内で顔を合わせているかもしれない。
「お待たせしました。お話があるのはお二人でよろしいですか?」
二人に声がかかる。十代前半くらいの少年が応対に出てきた。
子供が応対するなんてと、佐那が訝しがるが、よくよく見ると彼の気品高い格好と歳相応でない佇まいに応対を納得するしかないと思ってしまう。
「特別にお話をさせて頂きます。知っての通り、僕は第十三代ヨハネス・ディン・ノース王の第一王子、バルドル・ディン・ノースです。以後お見知り置きを」
ここの偉い人を出せとは言ったが、国の偉い人が出てきてしまった。
でもこれはこれで、とんでもない情報を得られそうである。
「アリスティア・マグダリアスです。修道僧をしております。では、早速お願いをしてもよろしいですか?」
挨拶もそこそこにアリスティアが跪き、本願を伝える。
「わたしたちの行う周辺難民への奉仕活動及び慈善活動を許していただきませんでしょうか――!」