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古城変死伝説に終止符を

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古城変死伝説に終止符を

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第三章 変死伝説終焉と新たな手掛かり?


 古城の騒ぎが収束するなりオルナはササカの監視の下、助けてくれたみんなに深く頭を下げ、礼と謝罪の言葉を口にした。
「……迷惑を掛けてごめんね。それとありがとう!!」
 頭を上げたオルナは相変わらず呑気そうな顔をしていた。
「いいのよ。とても面白かったし。また持って帰っていいかしら?」
 シオンが石化ハンカチを片手にお持ち帰りの許可を貰おうと訊ねた。
「いいよ。それ、拭いた箇所が石化する物で失敗して人も石化してしまうようになったんだよ。でも24時間経ったら元に戻るから」
 オルナの返事は前回同様あっさりとしたものだった。
「へぇ、そうなの〜」
 シオンは石化ハンカチを危ない笑みを浮かべながら見ていた。誰かで試したくてたまらないというような。
「自分もこれを持って帰りたいと思っているのでありますが」
 吹雪も手に入れた耳栓のお持ち帰り許可を得るために声をかけた。
「いいよ。それ、目覚まし的な物を作ろうと思ったら落下体感耳栓になった物だよ」
 これまたあっさりと許可を出すオルナ。
「では貰うであります!」
 吹雪はそう言うなり両耳に装着して楽しんでいた。
「……はぁ」
 ため息をつくのは様子を見守るササカばかり。
 この後、ローズ達がやって来てオルナは分別講座を受講する事となった。

 リリトの説得成功後、説得者達は魔術師について話し合いをする者とリリトの旅立ちを手伝う者に別れた。その前に手記についてオルナに訊ねると古本屋で面白そうだと購入したものの一度も読まずに魔法薬を入れた容器のふたに使用したりなど散々な扱いをしたと自白した。

 リリト旅立ちお手伝い組。
「……静かですね」
 ホリイはリリトの手を繋ぎ、他の仲間達と共に城内をさまよっていた。
 お手伝い組は前住人がうろうろしていると思っていただけに拍子抜けしていた。
 そこに
「消えずに残っているのはこの人達だけよ」
「他の前住人達は憑き物がとれたように晴れ晴れとした顔をして消えたわ。上手く行ったみたいね」
 セレンフィリティとセレアナが登場。二人の側にはミシュ一家とウルバス老夫妻がいた。
「……」
 リリトは被害者であるミシュ一家を見るなりホリイの後ろに隠れてしまった。
「リリトちゃん」
 ホリイは後ろに振り返り、優しく促す。
 じっとホリイを見ていたリリトは意を決し
「……ごめんなさい。あたしのせいで……ごめんなさい」
 前に出て泣きながら謝った。
「……もういいのよ」
 答えたのはクラーナだった。自分達の死亡原因がリリトにある事もそのリリトもまた犠牲者である事も知っている。ミシュ一家は忘れていた事を全て思い出したのだ。地下道の扉を開けた際にずっと奥から聞こえてきた少女の眠りながら洩らす怨念と泣き声、自分達の亡くなる時、死に至らしめた前住人の姿を。
 一家に恨みや憎しみがあってもおかしくないのに今はなぜだか晴れ晴れとした気分なのだ。おそらく魔術師の影響を受けたリリトの思いから解放されたためだろう。
 クラーナが答えてすぐ
「……ママぁ」
 リリトは優しい笑みを浮かべるクラーナの姿に自分の母親の姿を重ね思わず泣き出してしまった。
「……もう終わったから、大丈夫」
 クラーナはリリトを抱き締めた。同い年の娘を持つためか放っておけなかった。
「……お姉ちゃん、約束、この子も一緒でいい?」
 ミエットはリリトを慰める母親を見て自分も何かしたいと思ったのかホリイに声をかけた。
「もちろんですよ。ほら、リリトちゃんも一緒に遊びましょう!」
 ホリイは元気に答え、リリトを誘う。
「うん」
 クラーナに解放されたリリトは涙を拭きながら答えた。
 その時、抱っこしていた猫がぴょんと飛び降り、エース達が連れて来た猫とキャットシーの元へ走って行った。
「シャンヌ!」
 リリトは急いで追いかけた。シャンヌが悪さをするかもしれないとか痛い目に遭うかもしれないと心配しながら。
「大丈夫ですよ」
 エオリアが笑顔でシャンヌと戯れる猫の頭を撫でながら言った。
「……ごめんね」
 リリトは改めて猫達にも謝った。猫達はピタっと遊ぶのをやめてリリトを見上げたかと思ったら分かっていると言うように一声鳴いてからまた遊んでいた。
「この子達は君の気持ちをよく分かっているから心配無いよ」
 エースはそう言ってまだ落ち込んだ顔を猫達に向けるリリトに『彼の地の花』を差し出した。花は生者死者問わずに心を癒してきたからきっとリリトの心を元気にするだろうと思って。
「うわぁ、綺麗なお花。あたし、このお花、見た事ないよ!」
 エースの思った通りリリトは不思議な花に顔を明るくして花を受け取った。端から見たら花だけが浮かんで見えるちょっとした怪奇だが。
「リリトちゃん、良かったですね」
「うん」
「ねぇ、この子達も連れて行っていい?」
 いつの間にかミエットも来てキャットシーを撫でながら訊ねた。長毛でぬいぐるみのようなキャットシーが気に入ったようだ。
「あぁ、いいとも」
 エースは断る理由など無いのであっさり許した。
「ありがとう、お兄ちゃん」
 ミエットは嬉しそうにエースに礼を言ってからリリトと猫達と一緒にホリイの所へ。
「それじゃ、みんなで探検です!」
 ホリイを先頭に探検に出発しようとした時、
「わたしも一緒に行きたいな。でも幽霊じゃないからだめかな?」
 遊ぶ事が好きなノーンが声を上げるが、実体である事に少し困った顔をした。
「わらわのクッキーを使えばよい」
 羽純が未使用の自分の幽体離脱クッキーを差し出した。この後、羽純は食堂に移動した。
「ありがとう!」
 ノーンは受け取りクッキーを食べた。
 そして、ノーンの肉体は床に倒れ、青白く透き通った中身が宙に浮いている。
「うわぁ、わたし、幽霊になった。これで遊べるよ」
 ノーンはくるりと回りながら透き通った自分の体を確かめていた。
「ノーン様、体は私が見ていますね」
「ありがとう、舞花ちゃん」
 舞花はノーンの空っぽになった肉体の見張り番を引き受け、ノーンも迷わず任せた。
「わたしも一緒に行くよ!」
 ノーンは楽しそうな声を上げて気兼ねなくホリイ達の所に急いだ。
 舞花は遊びに行く幽霊達を見送った。ちなみに前住人達が旅立った後、舞花とノーンは食堂に行った。