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―アリスインゲート2―

リアクション公開中!

―アリスインゲート2―

リアクション

「あ!」
 走行情報車の後部荷台が開かれるのを見て、アニス・パラス(あにす・ぱらす)が声を上げた。入ってきたのはアリサとシリウスたちだった。
「お疲れ様です」
 入ってきた者達にスノー・クライム(すのー・くらいむ)がねぎらいをかける。
 一方情報端末のレイヤー群を眺める佐野 和輝(さの・かずき)は情報中継役として《精神感応》で多くの契約者たちと連絡をしていた。その連絡内容は《精神感応》の相互リンクネットワークを担うαネットの能力者たるアリサには筒抜けになっている。勿論αネット上での会話であれば《精神感応》所有者の誰もが話を共有する事ができる。
「こちら和輝。新情報だ」
 もっぱら、佐野の担当は《精神感応》を持たない協力者たちに情報を回すことだ。通信車に備えられたマイクに声を当て、各人のAirPADに連絡していく。
「大変そうですね」
 とアリサが漏らすが、《精神感応》の参加者全ての声が幾重にも重なるαネットの情報を一人処理するその頭なの中のほうがもっと忙しそうだとアニスは思うのだった。
 じーっとアリサの周りを警戒するアニス。アニスの今日の仕事はアリサの護衛。護衛しているつもりだろうけど、傍から見ればアニスがアリサを注視しているだけだった。
「こわ! アニス、目つき怖!」
 注視するあまり、目つきがうさみちゃんよろしく血走っているのをシリウスが見て驚く。
 狙ったエモノは逃さない。そんな目のアニスの頭に手を当てて、スノーが注視状態を解除させる。傍らには賢狼
「アニス……暫くこのこと遊んでて。世界的迷子兼トラブルメーカーさんと」
 さりげに酷いことをいいつつ、スノーがアリサを指さす。
「うん。わかった! アリサお姉ちゃんみてみて〜」
 それに気づかない無垢なアニスはアリサを引張り賢狼とじゃれ始める。これでしばしの間はアリサがどっかに飛んで騒動を起こしに行くことはないだろう。
(計画通り……ッ!)
「うん、キミも悪い顔してるね……」
 細目になってサビクがスノーに言った。
「ところでだ」
 通信を終えた和輝がシリウスたちに尋ねる。
「事件現場は見てきたか?」
「ああ、見てきたぞ。詳しい見聞は向こうに残った奴らが調べている最中だけど、あれが戦略兵器の爪痕となると生身じゃちょっとヤバイかな」
「現場はどんな状態だったんだ?」
「端的に言えばだ、『あらゆる鉄材が水飴みてーに曲がっていた』ってところだ。でも規模はそこまでないけどな。オレの思っていた程ではなかった」
 シリウスの考えでは戦略兵器は核かそれとも『ドールズ』ではないかと思っていた。
 核は戦術核といわれるように大量破壊の権化である。ドールズはミネルヴァ軍がオリュンズ地方にて戦っていたロボットの形状をとるナノマシン群であり、驚異的な再生能力とテレポート能力を持つ。ドールズは先の戦いで消滅したとはいえ、軍がデータから同様のナノマシン軍を開発していてもおかしくはない。
 だが、どちらにしても被害現場の被害状況からはこれらが使用されたとは思えない。
「イコンくらいのロボットならそれくらいできるんじゃないかな? って程度だ。でも人が持ち運べる大きさのもので、あれをするってなると確かにヤバイかもな」
 「なるほど」と頷く和輝。
「ロボット兵器というよりも対人兵器なのかもしれないな。兵器の情報はコード以外入ってきてないし」
 和輝の話にサビクが助言する。
「総統のカーリーもそこは隠しているみたい。嘘感知に引っかかっただけだけどさ。情報が漏れることにはかなり気を使っている感じだよ」
「その辺を軍の研究機関や上層部に詳しく聞きに行く奴らいればよかったんだがな……仕方ない。それを持つラビットフットを捕まえれば戦略兵器が何かもわかる。真司が工作員と合流してラビットフットの足を捕まえるはずだ」
 ただ、ラビットフットを捕まえてミネルヴァ軍に渡すのが本当に得策かはどうも言いがたい。
 和輝のAirPADにコールがかかる。軍用備品として支給されたものではなく、一般使用のために購入していたモノのほうがだ。
 コール待受の画面を表示する。そこには「柊真司」とあった。


 その後、柊真司及びパートナーたちがラビットフットに接触後に作戦指揮から逸脱したとαネットにて情報が上がった。