イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

架空大戦最終回 最後は勇気で!

リアクション公開中!

架空大戦最終回 最後は勇気で!

リアクション



08 夢には決着を 

 そして、である。
 そんな事情でOVAを撮影するという遊びを途中でおわらせられないために現実に帰るのをリリーが拒否している一方で、リリーと密約を結んで夢のなかで好き勝手をやろうという鳴神 裁(なるかみ・さい)のパートナーにして彼女を取り込んだアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)と、それに対する反作用として活動しているエメラダ・アンバーアイ(えめらだ・あんばーあい)の戦いも、裏で進行していた。
 中でもアリスがリリーの共犯者としてヘルガイアたちに圧倒的すぎるほどの力を付与するということをしたため、カリバーンや美羽、唯斗、ジヴァやミレリアなどの僅かに残る勇者たちもこれにより苦戦を強いられていた。
「さっすがにラスボスってことだけはあるなあ、おい」
 唯斗が敵の攻撃を受け止めながら愚痴ると
「「だからこそ、これを倒せばしばらくはゆっくりできるってものよぉ」
 と言いつつミレリアがミサイルを発射する。
「あー、もう! 数多すぎ!」
 そして無数に押し寄せる昆虫型の敵を防ぎながら美羽が叫ぶと、ベアトリーチェがそれを慰めつつ戦況を必死にオペレートする。
「ほんと鬱陶しいわね! リリー! いい加減にしないと、ぶちのめした上でお説教三時間コースなんだからね!!!」
 そう叫んだことでリリーに一瞬隙が生まれ、敵の攻撃が緩む。
「警告! 急下降しなさぁい!」
 その隙に、ミレリアが警告を発し、ミレリアとジヴァは偏向式ツインレーザーライフルを同時に発射する。
 超能力の操作によって軌道を自由に変えるレーザーが、戦場を右から左に、左から右に、雨を弾くワイパーのような動きで敵を一斉になぎ払う。
「まだよ、まだ遊び足りないんだから!!」
 アリスはそう言うと、リリーと融合し、真っ赤なドラゴンの姿になる。
「あれは……」
「知っているのベアトリーチェ!?」
 そうつぶやいたベアトリーチェに愛の手をしっかりと入れる美羽。これも、リリーと、アリスのデウス・エクス・マキナの力における【お約束】を知らずのうちにさせられた結果だった。
 そしてベアトリーチェは説明する。
 伝説において最も凶暴なのは赤い鱗を持つ炎属性のドラゴンだと。
 そしてその伝説のとおり、戦艦並みの巨大さと、神話級金属並みの強度のうろこ、そしてその強度を持つ爪と牙、そして超高温の炎。それはまさに空飛ぶ機動要塞。悪夢の如き強さだった。
 それでも、それでもなお、勇者たちはボロボロになりながらも、何故か致命的な一撃は貰わない。それは、それが【お約束】だから。
 その一方でなも無き国軍のパイロットや、綾瀬の操る無数の使い魔、十六凪の操る国軍の機体は次々と撃墜されていく。それが【お約束】だから。
 だが、そのお約束の力を持ってしても、綾瀬が仕込んでいたトラップは回避できなかった。
「ふふふ……引っかかったわね。《The End of the Dream World》発動! これは、あなた達のオリジンシステムと同様の存在。あるいは、対をなす存在。今後、全ての必殺技の効果は無効になるわ。もちろん、私達も使えないのだけれど……」
「ふむ……だが、すでに発動した必殺技は継続されるみたいだね」
 十六凪は戦場の様子を見てそう判断する。
(しまった。条文にミスが有りましたわー―)
 夢の世界として認識している綾瀬はそれだからこそこの技を使ったわけだが、この技の効果でそれまで以前の必殺技の効果も無効になるならばこの技の効果も打ち消されてしまうことになる。綾瀬は、正しくはこう記述するべきだった。
《この技が発動したら、それまで以前のものも含めてすべての必殺技の効果が無効になる。ただしこの技の効果は打ち消されない》
 と。
 とはいえ、もう遅い。今までに発動していた必殺技の効果で、綾瀬は次第に追い詰められていった。
「くっ……さすがにこのミスは手痛かったのですわ……とはいえ、ここでやられるわけにも参りません。サタナエル、もう少しだけ頑張りなさい!」
 そして綾瀬はサタナエルに残ったエネルギーを艦載用大型荷電粒子砲にかき集めると、それを勇者たちに向けて発射した。
 勇者たちは、この砲撃で大ダメージを受けるが、それでも残っている【お約束】後からのせいで致命的なダメージを被ることはない。
 とは言え機体もあちこちボロボロで中にいるパイロットたちも怪我を多少なりとも負っている。それでも、ここが好機と見たのだろう。十六凪がその攻撃の矛先を完全にサタナエル=綾瀬に向けたおかげで情勢は確定した。
 綾瀬は、勇者たちの刃によって爆散し、現実世界へと帰還する。
 そして、目覚めた綾瀬は一言
「とても面白い一時でしたわ……様々な意味で、ね」
 といって微笑んだのであった。