リアクション
「漁夫の利ってところですかね」
「ともかくうまく行ったのじゃ」
ファンドとともに漁夫の利を得た刹那は路地を急ぐ。複雑な地下構造から抜け出るには多少手間がかかる。なんとしても早く都市区画に上がって、合流を済ませたいところだった。
合流する人物は紫月 唯斗。刹那たちにスティレットの回収を先回りするように依頼したのが彼だった。
依頼を受けるまでは刹那たちはスティレット/兵器を我が物とするつもりだったが、スティレットが幼女と能力強化装置の一対と聞かされ、その片方を貰い受けることで依頼を飲んだ。
故に、今の誘拐に至る。誘拐した幼女を依頼人の元へと運べば“依頼料”を貰える。だが、今の彼女たちはまだ、その“依頼料”である能力強化装置がどれかは知らされていない。
《テレパシー》を持っていないため、指示は一方的にしか来ない。支持に従ってランデブーポイントに向かうほかなかった。
彼女たちが自分たちを狙う銃口に気がつくのはその数秒後だった。
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)はアングラの支柱である鉄骨に足を引っ掛けて座っていた。手に持ったライフルのサイトを覗きこみ。
「BANG BANG BANG!」
撃つふりをする。
<ターゲットがそっちに行ったわ>
コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)からの通信に聞き返す。
「それは、あの子どもを運んでいる小さいやつでいいでありますか?」
<あなたも小さいでしょう150未満>
「ダンボールに収まる理想的体形でありますよ。ところで、依頼の報酬はス○ス銀行のF5R6I5D1A3XYにと伝えたでありますか?」
スイス銀行と言いたいのだろうが、そうではない。入金があったのはこの【第三世界】の銀行に作ったこの世界の通貨専用の口座の事だ。
依頼主は【ノース】の誰かということだけ。入金があればそれだけで受ける意味はある。吹雪にとっては小遣い稼ぎ程度には。
<ええ。チャント前金が支払われていたわ>
「では、やるであります」
ライフルをしっかりと構え直し、サイトに映るターゲットに向かって銃口を添わせた。
「アウトレインジで一方的に――一撃で仕留めることが狙撃の醍醐味であります」
素早く、通過予想点に照準を合わせて、ヘッドショットを狙う。ヘッドショットは高ポイントゲットの必須テクニック。
「そのきれいな顔をふっ飛ばしてやる……!」