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【冥府の糸】偽楽のネバーランド

リアクション公開中!

【冥府の糸】偽楽のネバーランド

リアクション


エピローグ

 無事、親や子供たちが解放され、生徒達は数名の大人の力を借りながら石像になった右翼の黒虎を運んでいた。
「石像に戻ったのって、本当に死んだわけじゃないんですよね?」
「はい。巽さんのせいじゃないですから安心してください」
「そうであります。そんなに心配する必要はないであります」
「……一番の致命傷を与えたやつがいうなよ」
 生徒達は雑談しながら草木が生い茂った山道を登っていく。
 暫くして目的の神殿が見えてきた。
 そして、神殿の様子を見た生徒達は次々と驚きの声をあげる。
「最初の来た時と比べると随分綺麗になりましたね」
「結構いい感じですね」
 薄暗くなった周囲を照らすためにつけられた松明。それが神殿をほのかに照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。
 すると、大人たちに抱えられていた右翼の黒虎が呟いた。
「これがあの場所か……」
 声に驚いて落としそうになった大人の間に入り、生徒達が慌てて石像を支える。
 その時、左翼の白虎が片割れを呼ぶ声がして、右翼の黒虎が光に包まれる。
 光は舞い上がり、左翼の白虎の所まで駆け抜けていく。
 そのまま左翼の白虎を包み込み、眩しい光が消えると寄り添う二頭の虎の石像があった。
「……ありがとう」
「それと、ご迷惑をおかけしました」
 微笑む左翼の白虎の石像の耳の上には一輪の花が飾られている。
 優しい風が頬を撫で、甘い葡萄の香りを運んだ。
 すると、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が小冊子を手に大人たちの元へ歩いてくる。
「これ、葡萄の栽培に関したものを纏めたものです。他にも神殿の立ち入り禁止場所などを記しています」
 近隣の大人たちは丁寧にまとめられた小冊子の中身を確認しながら、エースから説明を受ける。
 一通り話が終わると、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が頭を撫でてくる。
「えらいえらい」
「ちょっと、やめろって……」
 クマラから逃げるエースを見て周囲から談笑が漏れる。
 秋の夜風を感じながらも、神殿はどこか暖かい空気に包まれていた。
「ねぇ、葡萄が実る時期にお祭りとか開けないかな?」
 遠野 歌菜(とおの・かな)が見事に実をつける葡萄を見上げながら尋ねる。
 それに対して月崎 羽純(つきざき・はすみ)は質問を投げ返す。
「祭りというと、屋台が出てきたり、みんなが踊ったりするあれか?」
「そうだよ。しようよ、葡萄祭り!」
 歌菜は興奮気味に話す。
 毎年祭りが行われれば、きっと忘れられることもないだろう。
「でも、そのためには村の人たちの協力が必要だな」
 当日のこともあるが、継続的な神殿の手入れや山道の整備も必要になる。
 生徒達は月一で開催すべきという案も出しながら、どうやったら盛り上がるか相談していた。
 そんな彼らが話し合っている間に、二頭の虎と言葉を交わしたドゥルム。
「おい、これ」
 そこへやってきたソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)がボロボロの手帳を差し出す。
「どうしようかと思ったんだが、北都が一度見せておいた方がいいとさ」
「なんですか?」
「ミッツの残した≪冥府の門番≫に関する調査書だ」
 ドゥルムは目を見開き、手帳の中身を確認する。
 そこにはほとんど残されていなかった≪冥府の門番≫に関する記述がびっちり書きこまれていた。

(続く)

担当マスターより

▼担当マスター

虎@雪

▼マスターコメント

 この度はご参加いただきありがとうございました。
 リアクション製作を担当させていただきました、虎@雪(とらっとゆき)です。

 公開が遅くなりまして申し訳ありません。
 もう少し余裕を持って公開できるようになりたいです。

 続きものですが、次回はいよいよ最終回。
 たぶんバトルもの。早めに公開できるといいなです。

 いつものことながら素直な感想が聞ければと思います。

 機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとございました。