リアクション
ニルヴァーナの年越し ここはアラディーアの繁華街にある阿羅耶神社の社務所奧です。 高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)は、そこでゴロゴロと寝っ転がっていました。あまり表立って姿をさらせない身なので、接客などは羅刹女やティアン・メイ(てぃあん・めい)に任せて、高月玄秀はほとんど引き籠もり状態です。 「新興の繁華街だから出入りは楽だったけど、やはり、年末年始の神社は、こう、何か落ち着かないな。ところで、なんでそんな服を着ているのさ、ティア」 何やらいろいろな物が詰まった段ボール箱を運んできたティアン・メイを見て、寝転がったまま高月玄秀が訊ねました。なにしろ、実家が神社の高月玄秀ですから、なんとなく落ち着かないのも無理はありません。 いつもとは違って、ティアン・メイは珍しく巫女服を着ていました。ここはまがりなりにも神社ですし、ちょっとした変装のつもりのようです。とりあえず、なかなかに似合っています。 「一回着てみたかったの! こういう場合じゃないと着れないでしょ」 そう言い訳しながら、ティアン・メイがドンと段ボール箱を高月玄秀の前におきました。 「なんだ、これは……」 高月玄秀が段ボール箱の中を見てみると、おみくじやお札、破魔矢やお守りなどの、新春神社グッズが大量に出て来ました。 「一応お正月なんだから、お参りに来てくれた人たちが、買う物なかったらかわいそうじゃない」 皆まで言われなくても、要求されていることを察した高月玄秀がゆっくりと立ちあがりました。 「仕方ない」 そう言いつつも、高月玄秀がお正月グッズに正式のお祓いをし始めます。さすがは、元神社の息子です。 「で、神社の方はどうなんだ? 盛況か?」 高月玄秀が、訊ねました。 「参拝客で賑わってますよ。なにしろ、ニルヴァーナでは、まだ神社という物は珍しいようですし。まあ、たまに、欲張ってたくさんのお願い事をした人が、羅刹女にお仕置きされてはいましたが……」 「ちゃんと一言主だと説明してなかったのか。やれやれ」 ティアン・メイの言葉に、高月玄秀が呆れたような顔をしました。ここは一つの願いだけを叶える神社なのです。当然、複数の願いをする欲張りさんには天罰が下るのでした。 「ほら、できたぞ。後は任せるから、好きに頑張ってこい」 「はい」 お祓いの終わったお正月グッズをティアン・メイに渡すと、高月玄秀は畳の上で再びごろんと横になりました。 ★ ★ ★ 「もう帰るんですか?」 再廻の大地にあるヴィムクティ回廊のゲート前で、アクアマリンが訊ねました。 「観光はいろいろしたじゃない。面白かったけれど、私はもう飽きたわ」 早く帰りましょうよと、エメラルドが言います。 「カトゥンの回帰は終わったから、私たちは今しばらくは傍観者だからね。なんだか、パラミタの方でもいろいろとあったみたいだから、あちこちを観光するのもいいだろう? こちらでは、もうそこそこ遊んだからね」 なんだか、諭すようにルビーが言いました。 「潰したグランツ教の拠点は三つほどでしたかな。まあ、たいした規模ではありませんでしたが」 指折り数えて、アラバスターが物足りないとでも言いたげな顔をしました。 「まったく、のんびりしに来たというのに、よけいな手間をかけたものだ」 オプシディアンは、ちょっと不満そうです。 「まあまあ。世界を滅ぼすかどうかは私たちの手にゆだねられているはずなのに、ちょっかいを出そうという奴らは目障りじゃないか。単純に、ヴィマーナを調べていたら、むこうからちょっかいを出してきただけだしね」 邪魔者を潰しただけだと、あたりまえのようにジェイドが言いました。 どのみち、本体とは別行動の末端の部隊のようですから、大勢にはまったく影響がないでしょう。 「世界の行く末は、私たちの試練を乗りきった者たちが頑張っているからね。私たちは、そのお手並みを拝見するとしようじゃないか。さあ、戻るよ、パラミタへ」 そう言うと、ルビーはゲートへとむかいました。 そのころ、もう一組の観光者が、パラミタ行きのシャトルの待合室で、のんびりと椅子に座って搭乗開始を待っていました。 「ツバメちゃんとクライベイビーの仲は進展したですかねぇ?」 フィーア・レーヴェンツァーンが、リューグナー・ベトルーガーに訊ねました。 「さあ、せっかくお膳立てしてあげたのですから、進展なしではこちらが困りますわ」 いけしゃあしゃあと、リューグナー・ベトルーガーが答えました。 新風燕馬の貯金を根こそぎ持ち逃げした二人は、どうせ遊びに行くならできるだけ遠くにと、ニルヴァーナへ観光に来て贅沢三昧の年末を過ごしたのでした。一応、光条世界の情報収集という大義名分は掲げていますので、パラミタに帰っても胸を張れるはずです。たぶん……。 それよりも、せっかく二人きりにしたやった新風燕馬とサツキ・シャルフリヒターの仲が進展してなかったら噴飯物です。とは言っても、あの二人ですから、何もなかったとしても不思議ではありませんが……。 「それで、すぐ戻るのですかあ?」 フィーア・レーヴェンツァーンが、リューグナー・ベトルーガーに訊ねました。 「んー、まだ資金は少し余っていますから、三が日は芦原まで行って豪遊でもしますか」 「わーい! 賛成ですう♪」 リューグナー・ベトルーガーの提案に、フィーア・レーヴェンツァーンが歓声をあげました。 『次のパラミタ行きシャトルは、0時ちょうどに出発いたします。御搭乗のお客様は、お急ぎください』 タイミングよく、シャトルの搭乗開始がアナウンスされました。リューグナー・ベトルーガーがすっくと立ちあがります。 「さあ、むかいますわよ。いざ、新しき年のパラミタへ!」 担当マスターより▼担当マスター 篠崎砂美 ▼マスターコメント
遅くなりました、休日シナリオ12です。 |
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