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~ガルディア・アフター~ 石の魔物と首なし騎士の猛攻

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~ガルディア・アフター~ 石の魔物と首なし騎士の猛攻

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終章「ストレガ」


〜遺跡最奥部〜

 シェードは激戦の末打ち倒され、契約者達は辛うじて勝利を収めた。
 しかし、それぞれが満身創痍。自力で立っている者は数えるほどもいない。
「あとは、ルカを保護。そのまま……帰還すれば、任務完了だ……ぐっ」
 ぐらつくガルディアをベルネッサが支える。
「ほら、無理しないで肩ぐらい貸されときなさい。どうして全部そうやって一人で……ん? あなたの目、赤かった?」
 至近距離でガルディアの顔を見たベルネッサは彼の瞳が赤色に変化しているのに気づいたのである。
「いや、限界まで稼働していると赤くなる。一種のアラーム、活動限界の……警告、みたいなものだ……」
 苦しそうに説明するガルディアと一緒にルカの元に歩きながらベルネッサは言う。
「へー。古代兵器って便利なのね」
「便利? その発言の意図が、不明だ」
「あっそ。じゃあ、不明のまんまにしときなさいな」

 もうすこしでルカの元に辿り着くという所で天井が破壊され、何者かが降りてくる。月光に照らされたその者は黒いローブを纏っていた。
「あらあら。うちのシェードを倒すなんて、予想以上と言うべきかしら。拍手してあげるわ」
 その者は大仰な動作で拍手をしている。称賛しているようにはとても見えなかった。
「貴様は……何者だ……」
「あら? ご挨拶ね。そんな喧嘩腰にならなくても――」
「誤魔化すな、それで……殺意を隠したつもりか……!」
 ベルネッサから腕を離し、ふらつく足で刀を構えるガルディア。
「ふふっ、流石は古代兵器様って言った所かしら。邪魔されても困るから……そこで見ていなさいな」
 ふっと手をかざすと雷撃がガルディアとベルネッサを襲った。体力の消耗と傷によって、上手く避けることができなかった二人は雷撃の直撃を受けその場に倒れ込む。
「ぐぁぁああっ」
「きゃああぁぁっ」
 その者は倒れているルカに歩み寄ると、髪を掴んで引っ張り上げ無理矢理に起こす。
「っ……! ここは、あ、あなたは……ストレガさん。助けに、来てくれたんですか?」
「ふふっおめでたい頭よねぇ。だから、こういう目に合うのよ?」
 ストレガが手を空に向ける。すると、ルカは黒い影で拘束されてしまう。
「えっ!? いや、は、離してください!」
「そう怖がらなくても平気よ。貴女には危害は加えないわ」
 部屋の中心に歩きながらストレガが何度か手を振る。
 すると、イディ、ブリック、ラージュの三名が黒い影に運ばれ、磔にされたかのように宙空に固定された。
「さあ、楽しい楽しいショーの始まりと行きましょうか!」
 ブリックの前に来たストレガは彼の腹部に腕から伸びる影で貫いた。
「うがああああ!」
「あらぁ? 痛かったかしら? 大丈夫、すぐに痛みなんて無くなるわよ」
 影が彼から抜かれた、ブリックはうな垂れる様に首をがくんと下げた。影の手には光る球状の物体が握られている。
「ブリックさん、ブリックさん!! やめて、もうやめて……ううっ……」
「これはねえ、魂の結晶。彼の命そのものなの。もうそこの死体に用はないからこうしてしまいましょうか」
 ストレガが潰すような動作をするとブリックは影に地中へと引き込まれていった。
「ああ、あああ……あああ……」
「じゃあ、次はあなたね。殺してしまうには惜しいけれど……」
 ラージュの身体を舐め回す様に眺めるストレガ。
「腐りきった好事家達にでも売ればいい金になるかしら? まあ、身体だけあればいいわね」
 ずぶりと影をラージュの腹部に刺し込む。
「ああ、いやぁあ……あああああああああああああああああああああああ!」
「あらあら、いい声で泣くのね? じゃあ、たっぷり時間をかけてあげようかしら」
 内部をいじくり回すかのように影の腕が脈動する。その度にラージュの身体はびくんっと跳ね上がり、悲鳴を上げる。
「うぁぁあ! いぎいいい……あああ、ああああ! ああああああああッ!」
「そろそろ飽きたわ。さよなら」
 影が引き抜かれ、彼女の身体は浮かび上がった影達がどこかへと連れ去っていった。
「隊長さん、あなたで最後よ? いい声でないてね?」
「がぁぁぁぁぁぁぁ、う、ぐあああ!」
 朦朧とする意識の中で彼の目の端にルカが映った。
(ル、ルカ様……そうか、生きてらっしゃった……)
 歯を食いしばって痛みに耐え、彼は残る意識を振り絞って手に握ったままの剣を振った。しかし、それはストレガの頬を軽く裂くにとどまった。
「あはは、頑張るわね。この状態で私に傷をつけた人は初めてよ?」
「ぐうう、ああ……ル、ルカ様……お怪我がない様でよ……かった……」
「イディさん! イディさんッ! やだ、やめて……やめてっ!」
「お別れは済んだかしらぁ? じゃあ、さよなら!」
 ストレガは頬から垂れる血を拭って舐めると一気に影をイディから引き抜いた。
 力なくまたイディもうな垂れ、地中深く引きずり込まれていった。
「イディ……さん……ううっ……ああ……」
 ルカは涙を零し、嗚咽を漏らす。
 それを見ていたガルディア。動きたくとも身体がいう事を聞かない。こんなに自分は弱かったのだろうか。
(俺は……何も……できないのか……俺は……っ!!)
 その時、ガルディアに得体のしれない声が届く。彼はその声に耳を澄ましていく。

 ストレガは部屋の中心に魔法陣の様な物を描き出すとそこに三人から奪った魂を投入する。
 魔方陣に手をかざし、もう一度ルカの近くまで歩み寄った。
「お待たせ、ルカお嬢様。ちゃんと見ててくれたかしら? あなたのせいで、みんな死んじゃったのよー?」
「ああ、え……私の……」
「そう、あなたのせい……全部、全部、あなたが悪いの……」
「ああああ……あああ…あああああああ……」
「いい絶望の感情が取れたわね。これだけの絶望なら大丈夫かしら」
 魔方陣に両の手をかざすと彼女は何かを唱え始める。
「我が願うは闇の儀式。呼ばれいでよ、漆黒の王……我が名はストレガ。汝との契約を望む物なり」
 黒い瘴気が魔方陣から溢れだし、その場がまるで地獄に変わったかのような寒気に襲われた。
 瘴気は形を成すと、ストレガの中へと吸い込まれていった。全ての瘴気がストレガの中に入ったと同時に魔方陣は消え、部屋の寒気も消える。
「あはは……やったわ、再契約、完了……これで、私は魔女に戻れる! あははははははははッ!」
 ぞっとするような高笑いをして、彼女はその恐ろしい視線を立ち上がれない契約者達に向けた。
「手始めに、あなた達を消してしまって。力の戻り具合を確かめようかしらね……」
 歩く彼女に発砲した者が一人。その弾丸は彼女に届く前に闇に飲まれ、消失してしまったが。
「魔女ごっこは、他でやってくれないかしら? 見てて嫌気がさすんだけど」
 壁に背を預け、苦しそうに息をするベルネッサはストレガに恐怖するわけでもなく睨み付ける。

 ガルディアの頭に声が響く。
「守りたいのなら、力を取れ。力があれば、守り通せる。願え、願え、願え。何者をも屈服させる、確かな力を。絶望の果てにある、その力を取れ」
 彼は力を振り絞って手を伸ばす。手に何かが当る。それを彼は掴んだ。
「お前は何だ? 戦う為の者だ。戦う為の物だ。さあ、引き抜け。貴様にはその、資格がある。己が狂気を自らの物とせよ。紅き戦いの戦鬼よ。その身に宿せし狂気を解き放て」
 彼は声に従う様に引き抜いた、それを。

 自信を睨み付ける、ベルネッサを眺めるストレガ。
「ずいぶん強気な子ね。嫌いじゃないわ……でもね、楽しみを、邪魔されるのは、一番嫌いなのよ!」
 ベルネッサに向けて攻撃しようとしたストレガが驚愕の表情で振り向く。ベルネッサをそれを見て驚いた。
「ガ……ルディア?」
 彼はゆらりとうな垂れる様に立っていた。掌から伸びた刀の柄の様な物を握っている。この世のものとは思えないただならぬ気配を漂わせるその刀はゆっくりと掌から引き抜かれ、紅い刀身を煌めかせた。
「なんだというの、この力……ありえない……そんなこと――」
「システム凍結解除。K.U.R.E.N.A.I稼働。敵性対象の排除を最優先……」
 ガルディアの頭髪が紅く輝く様な色へと変化し、その瞳は深紅色へと変わっていた。
 急速に距離を詰めたガルディアが一閃すると、紅い軌跡が弧を描いて宙空を彩った。ストレガの影の腕を斬り飛ばし、返す刃で衝撃波を放つ。
 衝撃波はストレガが防御の為に放った影の壁とぶつかったが、それを引き裂いて進み速度を緩めるはおろか速度を更に上げてストレガに迫った。
 ストレガに命中し彼女は叫ぶ。
「ぐあああああああ!!!! こんな、こんな! 力を取り戻したというのに! ここで……!」
「排除。敵性対象は……排除……排除……」
 影の刃をいくつ放っても、ガルディアはその全てを叩き落とす。その動きはまさに戦鬼。
 赤い衝撃波がストレガを絶え間なく襲い、彼女の逃げ場を失わせていく。
 どんなに高速で影の槍を放ってもそれがガルディアに届くことはなかった。
 無表情のまま高速で振られる紅き剣戟にその身を切り裂かれたストレガはついに動きを止めた。
「ぎゃあああ……こ、んな……ありえな……い……」
 止めを刺す気なのか、ガルディアが大きく刀を振り被った。その瞬間影の腕がガルディアの胸部に突き刺さる。
「……なんて、やられたと思った? 残念だったわねぇ……この瞬間を待っていたの。やっと捕まえたわあなたを」
 ガルディアの胸部に突き刺さった影の腕が脈動する。耳元で囁くようにストレガは言葉を発した。
「あなたの深い所にある記憶を狙わないとだったから、もう大変だったわ。でも見つけた、あなたの過去、イコン級人型古代兵器だったころの記憶……あの少女との記憶、全部、全部、凍らせてしまうわね。あなたの誓い、信念も、何もかも凍らせてあげる」
 ガルディアの動きが止まる。
「これで、あなたは私の物よ、ガルディア」
 ストレガが胸部から影を引き抜くと傍に控えるように立つガルディア。
 それを見てベルネッサが彼を呼ぶ。
「ガルディア!! どうしちゃったのよ、ガルディア! くっ!」
 再びストレガを狙おうと銃口を向けたベルネッサの真横を赤い衝撃波が通り抜ける。
 とっさに身体をずらしたおかげで直撃は免れたが、右肩を裂かれてしまう。
「ぐぁあッ! ガ、ガル……ディア……あの、ばか……」
 ふらつく身体で壁にもたれかかり、ストレガとガルディアを見る。
 ストレガはガルディアにルカを抱えさせ、共に影に運ばれて空へと去って行くところであった。
「本当は片付けてから行きたかったのだけれど、こうるさい教導団の連中がガルディアの異変を察知しちゃったみたい。常に状態をモニターしてるなんて、監視でもする趣味があったのかしら。まあ、いいわ。目的は達成したし、いいお土産ももらえたし、大満足よ。じゃあ、さよなら皆さん」
 影に運ばれたストレガ達は遠くの空へと消えていった。
 朦朧とする意識の中でベルネッサはそれを眺めていた。
「あ、の……ポンコツ……何、操られちゃってんのよ……はぁはぁ、ばかなの?」
 顔を振り、意識をはっきりさせて彼女はガルディアの消えていった空を眺め言う。
「絶対に、ぶんなぐる。そんで、美味しいもんでも奢らせてやる……そうでもしないと気が済まないわ」
 立ち上がり、彼女は宣言した。
「待ってなさいよ、ストレガ! ガルディアもルカちゃんも、奪い返して、あなたを倒すッ!」
 勢いよく拳を振り上げた彼女は右肩の痛みにもがいた。だが、彼女は思う。痛みに負けている暇はないと。
 絶対に倒すと強く決意したのだから。


担当マスターより

▼担当マスター

ウケッキ

▼マスターコメント

お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
ガルディアさんのシリーズが始まりました。
ついについにですね。いやーここまで長かった、うん。
頑張って執筆していきますので、ガルディア共々よろしくお願いいたします。
ではでは今日はこのへんで。

▼マスター個別コメント