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リアクション
『シニファン・メイデン』のユニット名でアイドル活動をしている綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)とパートナーのアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、新曲のプロモーションビデオの撮影でイルミンスールを訪れ、仕事を終えて時間が空いたので、ザンスカールの街をぶらついていた。
以前のさゆみの方向音痴についての失敗を学習して、今回は、アデリーヌが地図を手に、さゆみをナビゲートしている。
「あら」
さゆみの声に、アデリーヌが地図から目を戻すと、さゆみの見る方向に、見覚えのある少女が歩いていた。
「あの子、前に会った……」
「ハルカ!」
声を掛けると、ハルカは顔を向けて笑みを見せた。
「お久しぶりなのです」
「本当にね。元気? 何してるの」
「買い物なのです。もうすぐバレンタインなのです」
明日、イルミンスールの家庭科室を予約しているのです、と言うハルカに、そういえば、と二人は顔を見合わせた。
「バレンタイン……そうだったわね。仕事が忙しくて忘れてたわ」
「……そういえば、何処のお店に行くつもりですの?」
ふと、嫌な予感がして、アデリーヌはハルカに訊ねる。
店の名前を聞いて、地図を見てみた。
「この辺に、そんな名前の店はないようですわよ……?」
あれ? とハルカは首を傾げる。
学校で友人に、チョコの材料を買うならここ、と勧められたのだが。
「あ、あった。ここですわ」
地図にその名を見つけて、アデリーヌは呆れた。
「通り四本もずれていますわよ。どう迷ったら此処を歩いているのですの?」
「送ってあげましょうよ。ここで再会したのも何かの縁よ」
さゆみがそう言って、ハルカに
「一緒に行きましょ」
と誘った。
とはいえ、自分が案内するのは自殺行為と自覚しているので、案内はアデリーヌに任せて、さゆみはハルカと手を繋ぎ、アデリーヌの後について歩く。
「――そっか、じゃあ、友チョコ、ってわけね。どんなチョコを作る予定なの?」
「ガトーショコラなのです」
歩きながらの世間話に、さゆみも、何かを作りたい気持ちが強くなってきた。
「チョコケーキ、以前作ったことがあるし……」
ちら、とアデリーヌを伺う。
視線を受けて、アデリーヌはくすりと笑った。
「一緒に作りましょうか?」
途中で、何故か手を繋いでいたはずのハルカを見失うというハプニングを挟んで、三人は、何とか目的の店に辿り着いた。
「このお店なのです」
「や、やっと着いた……」
看板を見て言ったハルカに、さゆみとアデリーヌはほっとする。
早速店に入り、同じ目的の客が多くいる中を、色々物色して回る。
チョコなどの材料、ラッピング用の箱やリボン、カード……
「ハルカ、そんなに大量に買うの?」
籠から溢れそうな量に、さゆみは驚く。
「十個作る予定なのです」
にっこり笑ったハルカに、アデリーヌが苦笑した。
「……荷物持ちを連れて来なさいな」
自分達と会ったから良かったけれど、一人でこの量を抱えてイルミンスールまで戻るつもりだったのだろうか。
成程、とハルカは携帯を取り出して、友人に電話をかける。
それにしてもケーキを十個。
「……私達は、一個でいいわよね」
「切り分けて、可愛く包装して贈れば充分だと思いますわ」
さゆみの言葉に、アデリーヌは微笑む。
作ったら、ハルカを含めた、イルミンスールの友人達に配って行こう。
「予定を立てるの、何だかわくわくするわね」
ふふ、とさゆみも笑った。
「明日、家庭科室の予約にキャンセルが出たそうなのです」
電話していたハルカが、友人に訊いてくれたらしい。特別に使ってもいいとのことだ。
「じゃあ、皆で一緒に作りましょう」
明日が楽しみね、とさゆみの心が躍った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――― 準備は万端
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