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調薬探求会と魔法中毒者の取引後

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魔法中毒者の家の家宅捜査


 魔法中毒者の家前。

「一番乗りでありますよ! いざ、探検でありますよ!」
 誰も侵入した形跡が無い様子に葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)はご満悦。なぜならたっぷりと家宅捜査という名の探検が楽しめるからだ。
「他の皆が来るのを待ってから一緒に侵入する方がいいと思うのだけど。あの遺跡と同じで何があるか分からないし」
 常識人のコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は魔法中毒者の遺跡での事を思い出し、言葉を挟んだ。
 しかし、
「それでは意味が無いでありますよ!」
 吹雪は反対する。危険な薬や面白い物を片付けられては何の面白味もないのだから侵入する意味は無い。
「……意味って」
 疲れる予感にコルセアは早々と溜息を吐いた。
 そして、
「さぁ、行くでありますよ! きっと面白いものが見つかるであります」
「……とりあえず巻き込まれないように気を付けるしかなさそうね」
 元気に歩を進める吹雪の後ろを安全のため少し離れてコルセアが続いた。
 吹雪達が侵入してから続々と家宅捜査に挑む者達がやって来た。

「調薬をするなら薬草は欠かせないから家に残ってる植物達に聞き込みをするよ」
 植物愛溢れるエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がする捜査と言えばお決まりの植物を対象とした聞き込みである。
「お喋りに夢中になり過ぎないように気を付けて下さいよ。魔法中毒者といえば、取り壊された遺跡での事もありますから」
 エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)は魔法中毒者という事で取り壊された遺跡での事を思い出し、多少の心配を抱いていた。何せ遺跡ではエースの身が危なかったので。
「心配しなくても大丈夫さ」
 どんな子に会えるのか胸を躍らせるエースは心配なんぞどこ吹く風で侵入を始めた。
「……だといいんですが」
 いつもの心配を抱きつつエオリアも続いた。

 魔法中毒者の家前。

「魔法中毒者の家宅捜査にはこの格好をしなきゃね。薬品が素肌についたらたまらないもの」
「防護服で対策はしているとはいえ慎重に行くわよ」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は防護服を装着して立っていた。さすがにいつもの露出の高い格好は危険過ぎてしていない。
「もちろんよ。さっさと入ってぱーっと片付けるわよ」
 大雑把なセレンフィリティは早く終わらせようと勇んで家に侵入する。
 その後ろ姿を
「……本当に大丈夫かしら」
 セレアナがいつもの不安を抱えながら続いた。

 魔法中毒者の家前。

「ここが魔法中毒者の家かぁ。取り壊された遺跡には貴重なレシピが結構あったからここも期待出来るかも」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は魔術師との対決準備で訪れた遺跡でレシピなどを漁った事を思い出した。ローズにとって薬品関連は財宝なのだ。
「……ロゼ、あの時みたいにならないように気を付けてよ」
 遺跡の時の苦労を思い出した冬月 学人(ふゆつき・がくと)は軽く溜息を吐いた。
「大丈夫だって。ほら、行くよ学人」
「……本当に大丈夫かな」
 胸躍らせるローズと溜息の学人は危険物を考えてゴム手袋とマスクを着用してから侵入した。ちなみにゴム手袋とマスクは他の参加者にも配布した。

「友愛会、探究会、中毒者と調薬に因縁深い者達がよく同じ町に集まったものだな」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は思わず溜息を吐いた。
「確かにね。これまでの事を考えると偶然とは思えないよね」
 付近にいた清泉 北都(いずみ・ほくと)が同意とばかりに言葉を挟んだ。
「しかも同じ物を求めているとなると嫌な予感しかねぇよな」
 白銀 アキラ(しろがね・あきら)は探求会と中毒者が関わっている事から嫌な予感がしてならない。
「特別なレシピが危険な物かもしれないという事だよね。という事は中毒者を放っておく事は危険という事だよね」
 白銀と同じく嫌な予感を抱く小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が会話に加わった。
「そういう事だから手掛かり探しとはいえ家捜しって良くない事だけど、背に腹はかえられない」
 北都は答えながら家を見上げた。不法侵入する事に多少の抵抗はあれど、せずに危険を見逃す事は出来ない。他の三人も同じ気持ちであった。
 しかし、いつまでも突っ立っている事はせず侵入する事にした。ローズに貰ったゴム手袋とマスクを装着してから。

「さぁ、少しでも手掛かりを掴むために頑張るよ」
「あぁ、どう考えてもこの先に待つのはまずい展開だ。少しでも情報を掴んでおかないとな」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は到着早々配布されたゴム手袋とマスクを装着して家宅捜査に参加した。ダリルはこれまでの事から嫌な予感を抱きながら。

「ヨシノさん達をお助けするためにこのお屋敷の中にある手がかりを探せば良いのですね?(薬学ではあまりお役には立てませんが……でも手掛かりの捜索任務ですし今回は役に立ってみせますよ)」
 目的の場所を見上げつつ最近役に立っていない事にフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)はしょんぼりするもよくよく考えると今回は活躍のチャンスがあると思い直し、耳と尻尾をピンとさせ張り切りモードに。
「そうだな。まだこの問題も残っていたんだよな」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は溜息を吐きつつ家を見上げた。
「この問題が解決したら探求会と友愛会の皆様は再度共に学ぶ仲に戻れるのでしょうか?」「そうなればいいさね。今はただ情報が一つにまとまる事だけを考えるさねよ。両調薬会の問題はその後さね」
 フレンディスとマリナレーゼ・ライト(まりなれーぜ・らいと)は両調薬会の行く末を心配するが、
「とりあえず、目の前の事をだな。しかし気になるのはグラキエス達の事だな。やろうとしている事がどうにも厄介だ。上手く行っても失敗しても」
 ベルクは探求会と接触しようとするグラキス達を心配していた。実は、友愛会とは接触していないグラキエス達に情報を教えたのはフレンディス達なのだ。
「ベルちゃんの懸念は解るけどグラちゃん達は命賭けているさ? 友達として上手く行く流れになるよう信じてやるさね。それにシンちゃんは話が分かる人だから大丈夫さね」
 両者の気持ちを理解するマリナレーゼはとりあえずベルクを宥めるのだった。
「そうだな。俺達が止める事は無理だしな。俺達は目の前にある問題を解決しながら上手く最善策を模索していくしかねぇか。と言う事でワン公はグラキエス達とのやりとりに専念しといてくれ」
 マリナレーゼに言われ、ベルクはこれ以上気にするのをやめて後の事を忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)に託す。
「エロ吸血鬼に言われるまでもないのですよ! 優秀な忍犬たるこの僕が連絡を見落とすはずは無いのです!」
すぐさま噛み付くポチの助。しかしグラキエスの体を心配する気持ちはベルクと同じ。グラキエスからの連絡を受け取ると思われる首輪型HC犬式を気にしていた。
「もうそろそろ二人共来るはずさね」
 マリナレーゼは来るはずのメンバーを気にしていた。実は『根回し』でヨシノ達と予めやり取りをして共に家宅捜査をする約束をしたのだ。
 そして、
「遅くなり申し訳ありません。先程連絡を受けまして」
「来たよ!」
 ヨシノとウララが現れた。
「今回もご迷惑をお掛けする事になり申し訳ありません。また後手に回り本当に……」
 ヨシノは深々と頭を下げた。
「ヨシノちゃん大丈夫さ。後手なら後手なりにやり方があるさねよ? ここでシンちゃん達が見落としてる情報を得られれば、十分追いつく事は可能さね。だから今は果報は寝て待……っておきたい所だけど。あたし達なりに情報を集めておいてシンちゃん達の事はポチちゃんとグラちゃん達に任せておくさ」
 相談役マリナレーゼは笑みを浮かべヨシノを励ました。
「そうです、ヨシノさんご心配なく。この超優秀でハイテクに精通した僕が今迄蓄えてきた知識、そして情報収集力がある以上、シンリさんをギャフンと言わせ魔法中毒者を追い詰めてやりますよ!」
 ポチの助はりんと表情を引き締めた。薬学知識が疎いのは変わらずだが、今まで蓄えてきた情報から科学的側面でサポート出来るのでは無いかと一生懸命。
「ポチ、共に頑張りましょう」
 やる気のポチの助と共にフレンディスも頑張る気一杯である。
「では、行くさね」
 みんなの士気が高まった所でマリナレーゼの合図で家宅侵入となった。