リアクション
幕間
三半規管を大きく揺さぶる振動だった。
異状を察知した契約者たちが地下シェルターを出ると、大気を振るわす轟音と振動が直に伝わってきた。
頭上を見上げると、黒いエネルギー波が幾条も迸っているのが見える。
「サイクラノーシュの攻撃が始まったのか……!」
サイクラノーシュだ。彼の放つ黒いエネルギー波は龍のように曇天を駆け抜け、枝分かれしてパラミタ各地に襲いかかっていった。
アルト・ロニアの存在を完全に無視した攻撃だった。サイクラノーシュは――パラミタ全土に戦いを仕掛けるつもりなのだ。
驚愕すべき事態はそれだけに留まらなかった。契約者たちの前に、機甲虫・隠密型が姿を現したのだ。
ステルス状態で待機していた機甲虫・隠密型が次々とステルスを解除し、契約者たちの前にその全貌を表す。
完全に囲まれていた。恐らく、殺気を消す手段を学習したのだろう。
契約者たちと機甲虫の間に緊張が迸る。各々が得物を構える中、歌菜が前に進み出た。
「戦って、復讐して……それを繰り返すの? 残る物は、憎しみと痛みだけです。
私達は、そんな悲しい悪循環を断ち切りたい。道は険しいかもしれないけど……共存して、皆で笑って生きる未来の方が絶対にいいから!」
暗く濁った雲の谷間に雷鳴が轟き、歌菜が叫ぶ。
「――その為に、『みんな』の力を借りたいのです!
アルト・ロニアも、サタディも、サイクラノーシュも……みんな、救いたいんです!
甘いと言われても、私、諦めませんから!!」
沈黙があった。
雨が降りしきる中、機甲虫たちは顔を見合わせた。しばし謎めいた会議をした後、彼らは信じ難い行動を取り始めた。
機甲虫・隠密型は一つの場所に集うと、己の構造を分解し、合体していった。合体した機甲虫は……イコン型機甲虫【ホワイトクィーン】となった。
純白の機体が跪き、サタディとヨルクの前に掌を差し出した。胸部ハッチを開き、コクピット内部を露わにする。
「これは、一体……?」
「……機甲虫には、自我があるのですね」
前回のハートナイトの一件を思い、鉄心が言った。
機甲虫には自我がある。誰かに操られているのではない。彼らには、れっきとした自我があるのだ。
サタディは機甲虫と契約者、両方に視線を巡らせると、深く頷いた。
「その言葉を信じよう。
――我らが友よ」
ホワイトクィーンの動力炉に、火が灯った。
●マスターコメント
初めましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは。半間浦太です。
次回、「最終回」です。
ガイド公開時期は4月となります。
条件無しでのイコン参加可シナリオとなりますので、心の片隅に留めて頂ければと思います。
皆様の次回シナリオのご参加を心待ちにしております。
それでは、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。