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「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! よくぞ集まってくれた、悪の先兵たちよ! ククク、ここに『第1回オリュンポス杯』の開催を宣言する! このイコントーナメントに勝ち抜き、みごと優勝したイコンには、我らオリュンポスの次期主力量産イコンのベースモデルとして採用されるという栄誉を与えよう!」
 遊園地からさほど遠くないシャンバラ大荒野の一画に集まったたくさんのイコンやらパワードスーツやら機動要塞やら生物やらを前にしてドクター・ハデス(どくたー・はです)が高らかに宣言しました。どうやら、ここでイコンによる一大バトルロイヤルを開くつもりのようです。

「何やら楽しそうな祭り事をやるって聞いてきたが、面白そうじゃないか!」
 インテグラルナイトをベースとしたに乗ってきた朝霧 垂(あさぎり・しづり)が言いました。二足歩行状態の女性型の素体に龍の面、黒麒麟の鬣と尾、鳳凰の翼と尾羽が生えているというデザインの機体です。

「おーおー、またいろいろ揃ったなー。こりゃ、今の俺の力の試しがいがありそーだ」
 居ならぶ敵をぐるりと見回しながら紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が言いました。どうやら、生身でこれらイコンとやり合うつもりのようですが、はたして、まともに戦えるのでしょうか。

「なんだか、大風呂敷を広げてるけど、大丈夫なのか? だいたい、オリュンポスは借金まみれで、イコンの量産などできないだろうに」
 勝手に盛りあがっている様を見て、セリス・ファーランドがちょっと呆れました。
「なあに、オリュンポスが借金で潰れようが、我には関係などない! カイザー・ガン・ブツへのお布施が増えて、鮑の量産の暁には、勝利するのは我なのだ!」
 野望を隠すことなく口にしながらマネキ・ングが不敵に勝ち誇ります。
「さよう。この大いなるワタシが量産の暁には、あらゆる宗教を根絶やしにしてくれますよ!」
 願仏路三六九は、さらに危ないことを口走っています。
「もう、絶対に無理。なんで、そういうこと考えるかなあ」
 根拠のない自信に満ちあふれるマネキ・ングや願仏路三六九たちに呆れたメビウス・クグサクスクルスが、すでに修理費の請求書をオリュンポス宛に書き始めました。
 量産型饕餮をベースとしたカイザー・ガン・ブツは、願仏路三六九をモデルにした仏像型なわけですが、とにかく金色で目立ちます。真っ先に狙われなければいいのですが。

「ごにゃ〜ぽ☆ イコン相手に、テンペストがどれだけ戦えるか、今日は証明してやるんだもん」
 なぜかパワードスーツで参加してきた鳴神裁が、一歩も引かずに巨大なイコンたちを見回しました。事前用意されていたので、それを使用することにしたようです。
 それにしても、これでもかと鳴神裁は自己強化をしています。まずは、ユニオンリングでアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)と合体し、その上で魔鎧としてインナー型のドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を身に纏っています。パワードスーツの上からは、黒衣型に変化したギフトの黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)をコアとして翼状の撃針を背面ユニットとして装備しています。
 その上で、聖輪ジャガーナートを無理矢理貼りつけたペガサスポーンに乗っています。本来は、背部に融合装着するのですが、パワードスーツには装着できないためにペガサススポーンはそのままの姿になっています。装着位置的に黒子アヴァターラマーシャルアーツと競合しているせいもありますが。本来は、移動スピード強化の予定だったのですが、逆にパワードスーツの機動力がペガサススポーンによって削がれることになっているのが残念なところです。
 パワードスーツ用の武装と対人用の武装は仕様が異なっているため、基本的に共用することはできません。マニピュレータの大きさから違いますから、引き金を引いたり、握りをバランスよく掴むことができないわけです。スキルに関しても、パワードスーツを纏っている時点で外界と遮断されていますから、放出型のスキルは制限を受けます。中の人の能力が高くても、機体以上の性能を引き出すのは無理があるというわけです。

「実戦訓練を積むにはいい大会ね。そんなに緊張しなくてもいいわよ」
 ユノーナ・ザヴィエートのサブパイロットシートから、富永 佐那(とみなが・さな)が娘としてのソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)に自信を持つようにと語りかけました。
「でも、ワタシよりもずっと強い人たちばっかりなのです……」
「そうですね、胸を借りるつもりで経験値を貯めましょ。それに、こいつらを叩きのめしても、良心の呵責は微塵も感じないから」
 富永佐那が、安心させるように言います。ユノーナ・ザヴィエートはサクシード専用のセラフィムをベースにしていますが、各パーツはいくつかのイコンの予備パーツを流用して組み立てられています。特徴的な背部の鳳凰の羽根状のウイングはパヴリーンから、機体各部はファーリスから部品を流用しているといった具合です。
「大丈夫ですよ。相手も私も、最初は素人だったのですから。ソフィーチカも、きっとよいパイロットになれます」

 同様のサクシード専用のセラフィムをベースにしたダスティシンデレラver.2で戦いに挑むのは、メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)マイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)です。
「BMI訓練の成果を試すにはもってこいね」
「でも、ハデスさん主催というのが、ちょっと不安なんだけど……」
 意気込むメイ・ディ・コスプレに、マイ・ディ・コスプレがちょっと不安そうに言いました。
「大丈夫です。皆さん、いいお相手になりそうですし……。おや、あそこにいるのは裁さんですか。また新しいパワードスーツでしょうか。なんだか、いろいろつけているみたいですけれど……」
 鳴神裁の姿を見つけて、メイ・ディ・コスプレがちょっと興味深そうに言いました。
「えーっと、メイちゃんはあんなにいろいろとつけられないからね。そうでなくても、ダスティシンデレラはいろいろ寄せ集めでできているんだから」
 あまり悪影響は受けないでほしいなあと、メイ・ディ・コスプレが言いました。ただでさえ、キメラっぽいダスティシンデレラなのですから、これ以上原形がなくなっても困ります。

「今までのBMIの訓練の集大成としては格好の場だな」
「そうですね。二人の力を見せつけてあげましょう」
 ゴスホークに乗った柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が、互いの絆を確かめ合いました。こちらも、腕試しとして参加しているので、オリュンポスのイコンなどどうでもいいようです。

「さて、我がオリュンポスからも、イコンを出場させるとするか。さあ、行くのだ、機晶神ゴッドオリュンピアよ!」
「了解しました、ハデス先生っ! 機晶変身っ!」
 ドクター・ハデスに言われて、ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)もパワードスーツの機晶神ゴッドオリュンピアを装着しました。いろいろとお仲間を物扱いしてパーツを取りつけた形なので、意外と重装備です。

「ふふふふ、自分がこの大会に参加するのは、壮大な隠された意味があるのであります。リア充め、待っていろであります」
 思いっきり機動要塞こと戦艦伊勢で参加の葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)です。その目は、遠く離れた遊園地のジェットコースターに注がれています。
 なんでも、ジェイダス杯の商品はジェットコースターの貸し切り権だと言うではありませんか。いけません。もしカップルが優勝して、二人っきりの貸し切りなど許したら、どんな間違いが起こるか分からないではないですか。それ以前に、キャッキャウフフはこの世界では禁止されています。ええ、葛城吹雪が今決めました。そう決めました。だから、禁止なのです。
「隣の敷地に流れ弾が飛び込むくらい戦場ではよくあることであります。被害は全てオリュンポスに擦りつければいいであります」
 もう、思いっきり悪い顔で葛城吹雪が笑いました。
「まあ、そうなったらそうなったで、もうそれしかないわね」
 勝手にこんな場所まで連れてこられたコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)も、半ば投げ槍で認めるしかありません。早く帰りたいです。