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    ★    ★    ★

『さあ、レースも終盤戦だ。11ターンです。なんと、ここに来てミルディア・ディスティン選手、足踏みだ。まだゴールできません。あろうことか、ずっと選手たちの邪魔をして、いえ、見守ってきた数多くのジェイダス人形が、先に次々とゴールしていきます。そこを源鉄心選手&トレリン選手が着実に差を詰めてきました。おおっと、ノーン・クリスタリア選手の本気か!? 一気に二人抜きで12位に躍り出ました。旧人形を飛空艇の後部座席に颯爽と飾って、なんだか余裕です。前を行く源鉄心選手&トレリン選手とは僅差となりました。変わって、スープ・ストーン選手&ナウディ選手は確実に速度を落としています。そこを狙って、ダリル・ガイザック選手がスピードを再度上げてきました。さあ、ふかふかベッドを抜き去ることはできるのでしょうか。現在の各選手の順位です』

10.98 ミルディア・ディスティン
11.88 源鉄心&トレリン
12.87 ノーン・クリスタリア
13.85 スープ・ストーン&ナウディ
14.83 ダリル・ガイザック

    ★    ★    ★

『さあ、12ターンとなり、残る選手もわずかとなって参りました』
「まずいな、さすがにこんなに手こずっていたのでは、ルカにあわせる顔がない……」
 よほどマシンの機嫌が悪かったのか、今回はまったく実力を発揮できなかったダリル・ガイザックです。どうやら、ルカルカ・ルーのマシンの方の整備を優先したからでしょうか。あからさまに、自分のマシンの機嫌が悪いのが感じられます。整備としては完璧を期したはずですが、マシンの気分まではどうにもなりません。まあ、なまじ機械の心が分かるというのも考えものです。必死にマシンをなだめすかしている姿というのは、機械の声が聞こえない人たちにとってはちょっと奇異に映ったことでしょう。それでも、最後の最後で、なんとかマシンの機嫌もなおったようです。
「よし、もう一度、今度こそ、マックススピードでいけるぞ!」
 ダリル・ガイザックが、意気込みました。
「ミルディア様、もう後がありません。ここは、御自身のリミッター解除でお願いします」
「うん、頑張るよー」
 和泉真奈に言われて、ミルディア・ディスティンが気合いを込めました。
「もう、みんなゴールしちゃった。私だって、お姉ちゃんたちが待っているゴールに行くんだもん!」
 ノーン・クリスタリアが、キッとゴールを見据えます。
「なんで、俺がスープとびりっけつを争わなきゃならないんだ?」
「すーすー」
 気合いの入る三人とは違って、源鉄心とスープ・ストーンは、今一緊張感が足りません。一緒にいるパビモンたちも、まあ、楽しければいいという感じです。
『さあ、ここでミルディア・ディスティン選手、ダリル・ガイザック選手、ノーン・クリスタリア選手が勝負に出た! 全員がほぼ同じ速さでゴールにむかいます。わずかに、ミルディア・ディスティン選手が速いか!? いや、ダリル・ガイザック選手が賭に出た。ゴール線上の加速器に突っ込む!』
「ああ、ダリル、無茶よ!」
 ルカルカ・ルーが叫んだのも間にあわず、神戸紗千が作動させた加速器が、ダリル・ガイザックに最大級の加速を与えてしまいました。当然、コースアウトです。
「ミルディア・ディスティン選手、10位でゴール。ああっと、ダリル・ガイザック選手はコースアウトでリタイアだ。続いて、ノーン・クリスタリア選手が11位でゴールです。さあ、こうなると、後は最下位争いとなりました。現在、源鉄心選手&トレリン選手の方が、わずかにリードです」

10.116 ミルディア・ディスティン
11.104 ノーン・クリスタリア
12. 97 源鉄心&トレリン
13. 94 スープ・ストーン&ナウディ

    ★    ★    ★

『最終13ターン。はたして、最下位はどっちだ。源鉄心選手&トレリン選手ペアか。スープ・ストーン選手&ナウディ選手ペアか。両者、今、次々にゴールに入りました。スープ・ストーン選手&ナウディ選手! 最下位です! かろうじて、最後の戦いは、源鉄心選手&トレリン選手が制しました!!』
「あ、あぶなかったあ……」
 どっと疲れたように、源鉄心が言いました。
「ふぁーあ、よく寝たでござる。あれ、レースは?」
 目をこすりながら、ふかふかベッドの上に身を起こしたスープ・ストーンでした。

12.113 源鉄心&トレリン
13.106 スープ・ストーン&ナウディ